無人の家で発見されなかった手記 -5ページ目

無人の家で発見されなかった手記

──ある素人小説家の陳述

 どうでもいい話ですが、『リトル・リトル・クトゥルー』で思い出したことをふたつばかり。

 当時、ビーケーワン(現honto)でこの本を購入すると、特典があったのです。それは、受賞者4名による描き下ろし掌篇4作というもの。紙の冊子ではなく、メールにてテキストデータで送られてくるものでした(該当のページにアクセスする方式だったかな? 記憶が曖昧)。
 この特典用に僕が寄稿した作品は、「やれやれ、また蛸か!」(笑)。懲りないねえ。いや、だって、ねえ、書かないわけにいかないじゃないですか(謎理論)。
 この作品は、もちろん他の場で発表する予定はありません。当時、ビーケーワンで購入された方のみお楽しみください。たいした作品じゃないんですが。

 もうひとつ。小説とか全然関係ない部分での思い出。
 僕は奇術が趣味なのですが、数多ある奇術のジャンルのひとつに「ブックテスト」というものがあります。様々なバリエーションが存在しますが、基本的な現象としてはこんな感じ。
 ──観客が本を持ち、適当に選んだページを開く。演者はそれを見ることなく、そこに書いてある内容を当ててしまう。
 僕はこのブックテストが大好きで、これまで何度も演じてるのですが、その中で一度、『リトル・リトル・クトゥルー』を使ったことがありました。
 観客にこの本を渡して、僕は離れて立ち、紙とペンを持ちます。もちろんカンニングペーパーのたぐいは所持していないことを確認してもらってます。観客は好きなページ数を宣言し、そこを僕からは見えないように開きます。僕は観客の思考を読み取って、浮かんできた作品のタイトルを紙に書きます。観客が読み上げた作品名は、僕の書いたタイトルと一致していました。
 ……全ページ暗記してんじゃないの? などと言われましたが、さすがにそこまで暇ではありません(笑)。
(マジシャンの長谷和幸さんの手順です、と一応クレジット表記)
 ちなみに、このとき開かれたページに掲載されていた作品は、中沢敦さんの「ウレドの遺産」でした。

 

闇匣より出ずるもの 闇匣より出ずるもの
1,080円
Amazon

 

 

 

〈史上最少のクトゥルー神話賞〉の応募作から111篇を収録した、800字クトゥルー神話掌篇の競作集『リトル・リトル・クトゥルー』
 僕の作品はといえば、賞をいただいた2作だけでなく、なんと全部で8作も載せていただくことと相成りました。「アイホートの迷路」は含まれてなかったけどね。残念。
 しかも、「手乗りクトゥルー」を筆頭に、僕の8作が続けて冒頭に載せられるという栄誉。前座といえば前座なんですがね。ただ、本を手に取った方のほとんどが僕のやつを最初に連続して読むことになるわけなので、ここで面白そうか否かを判断されてしまう(かもしれない)、責任重大な役割とも言えるわけです。
 そして何より末尾を飾る真打ち、黒史郎さんの8作品。ラストの「ラゴゼ・ヒイヨ」はもちろん、他もすべて傑作揃いという凄まじさ。何を食べて育ったらこんなものが書けるんだ。同年代で凄い人を見ると、少し落ちこみますね(笑)。
 他にも800字怪談などで注目している作家さんが多数参加されていたりして、表紙も素敵だし内容も面白く、自分でもこの本はかなり気に入ってまして、学研さんから送られた見本の他に、自分でも1冊購入してあります。

『リトル・リトル・クトゥルー』については、そのうちまた何か書くことになるかもしれませんが(何せ非常に濃い本ですので)、とりあえずいったんここまでにしておきましょう。

 そうそう、自分のホームページに「手乗りクトゥルー」という表題で掌篇を公開するという計画は、結局のところお蔵入りとなりました。出版されたのだから当然ですね。
 そして採用されなかった作品については、のちに個人誌『闇匣より出ずるもの』に収録することで、ささやかながら世に送り出すこととなったわけですが、それはまた別の話。

 

闇匣より出ずるもの 闇匣より出ずるもの
1,080円
Amazon

 

 

 

 届きましたよ!
 何が? って、あれしかないじゃないですか。そう、学習研究社さんの『クトゥルー神話の本』です。
 僕の〈史上最少のクトゥルー神話賞〉受賞作が掲載されているやつです。
 優秀賞の「手乗りクトゥルー」と、編集長特別賞の「やれやれ、また魚か!」の両方が! なんと! 素敵な挿絵つきで!

 ギャフン!

 ギャフンですよギャフン。いや、どちらも本当に素敵な挿絵なんですよ。とても気に入ったのですよ。しかしながら、「やれやれ、また魚か!」の挿絵がヤバいんですよ。何がヤバいかは、実際にお手に取ってお確かめください。
 とはいえ決して僕は不快になど思っておらず、カーティス・C・センフに挿絵を描かれたHPLの気分をわずかながらも追体験できたということで、むしろ喜んでいたりするわけです。意味がよく判らない方は、『クトゥルー9』(青心社)の巻末を読むといい感じ。

 まあ、それ以上に大きな衝撃を受けたのは、最優秀賞である黒史郎さんの「ラゴゼ・ヒイヨ」なんですけどね。こーれはもの凄い傑作でしょ。いや、僕がわざわざ言うことでもないんですが。日本のクトゥルー神話作品におけるマスターピースとして、長く語り継がれることになるだろうと思いました。

 ちなみに、このラゴゼ・ヒイヨという神格を自分なりにアレンジした掌篇を『クトゥルフ神話掌編集 2015』に寄稿しておりますので、未読の方はぜひどうぞ。結構凄い方々が参加されている、贅沢な競作集です。

 そして『クトゥルー神話の本』が発売されたのも束の間、続けて今度は応募作から111篇を収録した『リトル・リトル・クトゥルー』が刊行される運びとなったわけです。

 

闇匣より出ずるもの 闇匣より出ずるもの
1,080円
Amazon

 

 

 

 

 

 

 結果発表です!
 何の? って、あれしかないじゃないですか。そう、〈史上最少のクトゥルー神話賞〉の結果発表です。
 募集と同様に、東雅夫さんのブログで発表されました。
 そのときの記事がこちら。
 当時の僕は、まったく、まぁーっっったく期待せずに、開いてみたわけですが……。
(ホームページに全作品を載せるため、HTML版も作成済みでした)

http://blog.livedoor.jp/genyoblog-higashi/archives/6220440.html

 マージデースカー!
 なんと、必要に迫られて(自分で自分に迫ったんですが)書いた「手乗りクトゥルー」が、優秀賞ですよ、あなた。
 それと、悪ふざけ悪目立ちはするかもね、ぐらいに思って書いた「やれやれ、また魚か!」が、特別賞ですよ、奥さん。

 ちぇっ、最優秀賞じゃねーのかよ!
 などとは、これっぽちも思いませんでした。本当です。本当だよ。
(いやだなあ、黒史郎さんに敵うわけないじゃないですかー)

 そりゃあ、とても喜びましたよ。
『クトゥルー神話の本』に掲載されるということは、本を買わなくても送られてくるぞ! ってね。なーんちゃって(流行語)。
 素直に、自分が今まで培ってきた小説のスキルと、クトゥルー神話に対する愛とが、結果になったのだろうと受け止めました。

 そして、買わなくてもよくなった『クトゥルー神話の本』の到着を、今か今かと待ち続ける日々と相成りました。

 

闇匣より出ずるもの 闇匣より出ずるもの
1,080円
Amazon