無人の家で発見されなかった手記 -23ページ目

無人の家で発見されなかった手記

──ある素人小説家の陳述

 手書き時代で最も分量が多かったのは、300枚強の作品でした。

 とはいえ正確に原稿用紙換算枚数を数えたわけではなく、レポート用紙1枚に入るおおよその文字数から算出したものですが。もしかしたら400枚ぐらい行っていたのかもしれません。


 内容は、当時夢中になっていた菊地秀行さん風味の伝奇アクションもの。劣化菊地秀行とか劣化夢枕獏な作品は、同人作家によって無数に生み出されては消えていって黒歴史と化しているのでしょうけれども、これもそのひとつと呼べそうです。
 テンプレートどおりの超絶美形&超強い&やや性格捻くれてるヒーローがいて、何人かの超個性的なヴィランが出てきて、それはもう超かっちょええバトルを繰り広げて、みたいな超恥ずかしいやつですね。僕の場合、そこに大好きなクトゥルー神話を絡めた感じ。さらに、奥瀬サキさんの『支配者の黄昏』からも、モロに影響受けてました。

 タイトルはなんだったかな……『自存の源(仮)』だったような気がする。クトゥルー者にはピンと来たかもしれませんが、邪神ウボ=サスラが登場するお話でした。ウボ=サスラと邂逅しつつも生還した過去のある悪役が、本格的にこの邪神を召喚して智慧と力を手に入れようという野望を抱いているので、阻止せねば的なストーリー。みんな大好き陰陽師(式神使い)も唐突に出てくるよ! やったね!
 他には星の精も出てきたりするけど、この登場シーンやギミックは割と気に入っているので、そのうちまたどこかで再利用したい所存。ウボ=サスラ召喚方法も悪くないアイデアだったと思うのだけど、もう少々捻りを加えるべきでした。

 同人誌やWEB小説という形式だとしても世に出せるような作品ではありませんでしたが(そもそも手書きだし)、それなりの長さの小説を最後まで書き上げることができた(しかも手書きで)、という経験ができてよかったんじゃないかと今では思います。
 見切り発車ダメの話も先日しましたが、やっぱり最後まで書き上げないと無意味ですよ。たとえ見栄えが悪くても。

 

 

 

 

 

 

 当初、小説は手書きでした。
 パソコンもワープロも持っていなかったので(MSXはあったけど(笑))、律儀に原稿用紙のマス目を埋めていってました。
 そのうち原稿用紙の仕様が面倒臭くなって、レポート用紙に書くようになってきました。しかも横書き。このあたり、現在の執筆スタイル(ワープロソフトで横書き)と通ずるものがありますね。
(今どきは、ワープロじゃなくテキストエディタというのかな)

 昨今は手書きの人はかなり少ないというか、ほぼ絶滅しているのではないかと思います。一部のプロは別として、アマチュアの場合は特に。WEBなり同人誌なりで発表するには、どうしても手書きだと駄目ですからね。いったん手で書いて、ワープロ打ちするという二度手間する意味もないでしょうし。

 パソコンは、大学入学のお祝いに買ってもらいました。バンドルソフトをある程度選べたので、迷わず一太郎にしてもらって。
 一太郎、嬉しかったですねー。打ちこんだ内容が綺麗な明朝体で表示されるんですもの。まるで自分が上手くなったかのような錯覚を抱きます。

 いや、ほんと素晴らしいですよ一太郎。一太郎。一太郎。一太郎。これを最初に使ったものだから、Wordは不便で無理っすー無理っすー。あぴゃーあぴゃー。

 ……で、一太郎でまず最初に何を書いたかというと、これがなぜか、ラヴクラフトの小説の模写(笑)。「アウトサイダー」とか「ナイアルラトホテップ」とかいった短めの小説を、ただそのまま打ちこむという謎の儀式を繰り返してました。何やってたんでしょうね。気が狂っていたんでしょうね。
 その写経(笑)から得られたことは……特にないですね。模写が訓練になるということもあるのかもしれませんが、僕の場合は特に実感はありません。むしろ、ラヴクラフトのややこしい文体(翻訳)に慣れてしまって、判りにくかったり大仰な言い回しを多用するようになってしまったような気も。
 逆効果かよ。

 

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 小説を書くという行為自体が楽しくて、誰に読ませるわけでもなく、短い話をいくつか書いていました。黄衣の王が子供を攫う幻想小説だとか、自分が見た生々しい悪夢をほぼそのまま書いたやつだとか、火星探索ものでちょっとした叙述トリックのあるSFだとか。
 さすがにもう原稿は失われているので、お見せすることは叶いませんが。あまりにも酷い出来ですから、そのほうが誰にとっても幸いでしょう。

 そんな中、書きかけたはいいものの、最後まで描き終えることなく投げ出した作品がありました。2作ぐらい。

 ひとつは、食屍鬼の取り替え子(チェンジリング)をテーマにした怪奇小説。オチも考えて、ちょっとした仕掛けも施したつもりだったのですが、肝心のストーリーをろくに決めずに書き始めたことがいけなかった。いや、信じがたいことですが、プロットを組まずにスタートしていたんですよ、当時の僕は。そりゃあ、いつかはこうなります。
 この未完の食屍鬼小説のアイデア(の断片)が、後々「食屍鬼と殺人鬼」(個人誌『闇匣より出ずるもの』所収)に活かされた……のかもしれませんが。

 もうひとつは、タイトルも覚えてます。「M男爵の人間時計」。なんか面白そうでしょ。乱歩っぽいでしょ。当時、春陽堂の江戸川乱歩文庫を読みまくってたのが察せられるでしょ。
 で、酷いことにこれは、タイトルだけ決めてから書き始めるという暴挙に出ちゃったんですねー。ミステリにするつもりだったくせに、トリックも事件も決めてなかったんですねー。いやあ、何考えてたんでしょうねー。気が狂っていたんでしょうねー。

 さすがに2回もやると学びまして、「見切り発車、ダメ、ゼッタイ」を教訓とすることにしました。失敗は成功のマイマザー。

 ……しばらく経ってから、またやりましたよ。見切り発車。またミステリで。そして未完で投げましたよ。

「同じことを繰り返しながら違う結果を望むこと、それを狂気という」──アインシュタイン(の言葉と言われているけど違う説あり)

 

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 高校3年生のときだったか、卒業して浪人生をしていたころだったか、記憶が定かではないのですが、同人誌への寄稿を依頼された(と言うよりは誘われた)ことがありました。仲間内の伝手を辿って集めた人員で、各自イラストでも漫画でもエッセイでも評論でも小説でもなんでもいいので書いて(描いて)一冊にまとめようという、寄せ鍋みたいな企画でした。あるいは闇鍋か。せっかくお誘いを受けたからにはと、ここで人生2作目の小説を書きました。

 原稿用紙で10枚、題名は「穢れた鎖」という、なんとも外連味に欠けたやつ。タイトルはもうちょっと考えたほうがいいぞ。
 肝心の内容は、1920年代のアーカムが舞台で、語り手の友人がマッドサイエンティストっぽい怪しい研究をしていて、どうやら墓場から死体を掘り起こして組み合わせて蘇生させようとしてるらしくて、なんやかんやあって語り手が大事故に遭って気絶して目覚めてよかった俺生きてるーと思ったら、背中に友人が死体に施していたのと同じ縫合の痕があってギャフン! みたいな感じ。ラヴクラフトの「死体蘇生者ハーバート・ウェスト」(『ラヴクラフト全集5』所収)とか、TRPGシナリオ「生半可な知識は」(当時『アーカムのすべて』、現在『ミスカトニック大学』所収)の影響を明らかに受けています(歳がバレる)。

「主人公が実は○○だった!」パターンですが、こういうオチは一番書いちゃ駄目なやつなので、皆さんもお気をつけください。

 と、まあ、意気込んで書いた小説ですが、陽の目を見ることはありませんでした。同人誌の話が立ち消えてしまったっぽいです。世に出なくてよかったのかもしれません。

 

 

 

 

 このブログを始めたときには在庫なしだった、僕の個人誌『闇匣より出ずるもの』が、ようやく在庫復活しました!

 

 徐々に在庫がなくなりつつありますので、ビビッと来た方はお早めにお買い求めください。
 無名のド素人による文字だけの地味な本で割と強気な値段設定の割には、そこそこ売れています。そこそこ。原価が回収できる程度には。


 面白いと思ったら、Amazonに星5の評価を書くといいことがあるかも。
 つまらないと思ったら、何もしないでおくと世界平和に貢献できるかも。

 というわけで、今日は宣伝のみでした。
 そのうち、この個人誌についても色々と語りましょうかね。
 各作品の裏話とか。本にまとめようと決断した経緯とか。どう試行錯誤して初めての同人誌作成ができたか。などなど。

 

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