無人の家で発見されなかった手記 -10ページ目

無人の家で発見されなかった手記

──ある素人小説家の陳述

 異形コレクションで面白さを知った作家さんといえば、平山夢明さんも外せません。
 大抵は怪談本で平山さんを知るという方が多いのかもしれませんが、僕は当時あまり怪談に興味がなかったので(笑)、異形に掲載されている短篇がファーストコンタクトでした。

 とんでもない作家がいる。

 これが第一印象ですね。その思いは、今も変わらないわけですが。
 異形14巻の「Ωの聖餐」を皮切りに、17巻の「卵男(エッグマン)」、19巻の「怪物のような顔(フェース)の女と溶けた時計のような頭(おつむ)の男」、25巻の「けだもの」、27巻の「実験と被験と」、30巻の「枷(コード)」と、数々の容赦ない(という形容が相応しい)傑作を発表。
 そして32巻の「独白するユニバーサル横メルカトル」で、なんと日本推理作家協会賞を受賞。これを表題作とした傑作短篇集も刊行。
 その後も異形上に精力的に作品を寄稿され、さらに短篇だけではなく長篇でも、『DINER(ダイナー)』で日本冒険小説協会大賞と大藪春彦賞を受賞。もちろん内容も傑作……。

 平山さんの小説の特徴としては、容赦のなさと、かっこよさが真っ先に挙げられます。文章が超かっけーのですよ。何度も朗読しちゃったぐらい。また、魅力的な殺人鬼や愉快な人体破壊描写がたくさん出てくるのも、僕の好みに合致していたりもするわけです。
 総合的に見て、今、一番好きな作家さんと言ってもいいかもしれません。


(予算と収納の都合上、滅多にハードカバーは買わない僕ですが……)


 こんなふうに、知らなかった作家さんとの出会いとか、知ってはいたけど新たな一面を見ることができたりする、異形コレクション。
 また、なんらかの形で復活してほしいものです。

 

 

 

 

 異形コレクションついでに、この話も。

 もともと菊地秀行さんのファンではありましたが、読んでいた小説といえば、長篇の伝奇アクションが主でした。短篇でも『魔界都市ブルース』とかね。
 そんな僕が、菊地秀行さんの真骨頂とも言うべき短篇の世界を知ることができたのは、異形コレクションのおかげでした。
 ほぼ毎回、作品を寄稿されていて、しかもそれが傑作揃いという奇跡の作家。お疑いの方は、試しに『死愁記』を読んでみるとよろしい。異形の最初期に掲載された10作品が収録されています。できれば、テーマを知って読むと、より味わい深いと思います。「欠損」なんて痺れるよ、ほんと。絶対に敵わないよ、こんなの。
 また、これには収録されていませんが、異形11巻の「黒丸」も凄かった。就寝の直前に読んだことを後悔するほど恐ろしかった。

 そして恐ろしいといえば、時代小説短篇集の『幽剣抄』。これヤバイです。本っ当に、どうかしているレベルの傑作揃い。こんなの読まされたら、もう降参するしかありません。中でも、掌篇「茂助に関わる談合」は、これまでに読んだあらゆる怪談の中でも最高レベルの完成度と恐怖度だと思います。

 吸血鬼ハンター"D"や魔界都市ブルースもよいですが、菊地先生の短篇にあまり触れられたことのない方は、ぜひどうぞ。
 

 

 

 

 異形コレクション36巻『進化論』の一般公募に応募した続き。

 結果はもちろん不採用。まあ、当然です。
 ところが、今回は前回と異なりハイテンションな伯爵、全作品にコメントをつけてくださってました。
 当然、拙作にも。

 

 ……悪くないんじゃないでしょうか。
 憧れの井上雅彦さんに作品を読んでいただけたというだけで嬉しいのですが、収穫とまで言われたら、たとえ不採用でもありがたいものです。

 この作品は、のちに、クトゥルー神話用語をもとに戻して、ガチ神話作品として、僕の個人誌『闇匣より出ずるもの』に収録しました。
 気になる方は、ぜひお買い求めください! 買って! 僕を在庫地獄から救って!

 ……さて、この巻を最後に、一般公募は終了となってしまいました。続けてくれていたら、書き続けたのに。たぶん。かえすがえす、30巻から参加しなかったことが悔やまれます。

 

 

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 異形コレクション36巻『進化論』の一般公募作品を書いたのは、2006年3月のことでした。まだまだ寒い日々が続いてました。嘘です覚えてませんすみません。

 進化をテーマに何か書けと言われましても、この言葉から連想されるジャンルは、ホラーというよりSFでした。SFなんてろくに書いたことないしなーどうしようかなーと考えた末、着いたところはクトゥルー神話でした。クトゥルー神話って、SFと相性いいと思うの。
 とはいえ、ガチガチの神話作品を送っても顰蹙を買いそうだなーという気がしてきたので(「ティンダロスの密室」で学んだ?)、固有名詞を少し改変することにしました。

 ストーリーは、地球へ向けて巨大な天体が接近しつつあり間違いなく衝突するコースなので、人類がいっせいに脱出しようという話。ところが、同時に南極の地中から謎の粘液が噴き出して地表を覆いつくそうとして、まあ大変。そこに主人公の恋愛話まで絡めちゃったりして。ほんとにこれ40枚に収まるの? ギリ収めました。タイトルは「おかえり」。寺島進さん主演の同名映画から拝借しました(嘘(半分本当))。

 はっきり言って僕はSF知識も科学知識もろくに持ち合わせていないので、たった40枚とはいえ結構な難産でした。判らないことはネットで調べまくりました。ええ、それはもう。
 そして一番の懸念は、そんなSF(?)が井上伯爵にどう評価されるのか、という点。友人に読んでもらったところ、評価はイマイチでしたし。上っ面だけはSFっぽいけど駄目駄目だねー、と思われることを覚悟で応募しました。

 

 

おかえり おかえり
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 異形コレクション35巻『闇電話』の一般公募作品を書いたのは、2005年9月のことでした。書き上がった原稿をスコッチバーで友人に読んでもらった気がする。

「電話」だけがテーマだと書きづらいというか、とっかかりがないので、もうひとつ自分に枷をつけるというか、別テーマも与えてみることにしました。どうも僕の場合、こういった縛りがあったほうが話を創りやすいです。自由になんでもやっていいですよー、と言われると、じーっと座ってるような子供でした。

(締切が迫っていて何か書かないといけないのに何も出てこないときは、こんなふうに自分にお題を出してみるといいかもしれませんよ)
 そして自分に課したテーマは、虫でした。またかい。いや、最後の昆虫ミステリを書いてから1年以上経っていたので、そろそろ虫が恋しくなったんですね。みんなもなるでしょう?

 というわけで、電話+虫+ホラーな小説を書くことになりました。制限枚数は40枚以内。
 詳細は覚えていませんが、かなり短期間で書き上げた気がします。ハイテンションだったんでしょう。
 ある少年が、廃墟の地下に閉じこめられている少女と糸電話で通信し、助けに行こうとするみたいな話でした。たぶん。タイトルは「たすけて」
 自分ではそこそこ気に入ったアイデアで、友人の評価も上々。
 とはいえ応募先はあの異形コレクションですから、採用は無理だろうなとは思ってました。
 もちろん無理でした。
 しかも公募作品が全体的に残念な出来だったらしく、井上伯爵も少々ご機嫌斜めな様子。なんだかすみません。

 気を取り直して、次のテーマである「進化」の作品にとりかかりましたとさ。