とらドラ!その1-虎と竜- | ラーメン食べたい透明人間

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とらドラを愛してやまない物語中毒者。気が向いた時に更新します。

  出会い
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高校2年の春、高須竜児は親友の北村と、片思い中の実乃梨と同じクラスになった。しかし廊下で”手乗りタイガー”と呼ばれていた大河とぶつかり一発KO。そのおかげで、目付きの悪さからくる誤解はすぐに解けそうだった。


ある日の放課後、担任に呼び出され下校時刻も過ぎた教室に戻ると、椅子と机が宙に舞っていた。犯人の大河は慌ててロッカーに飛び込むが、勢い余って竜児の前に転がり出てしまう。気まずい空気をごまかすため、竜児は置いてた鞄を取ろうとする。すると大河が急に取り乱し、鞄を奪おうとするが、くしゃみをで手を離してしまう。空っぽの手を見つめ、荒々しく教室を出て行く。

 


帰宅後、竜児は鞄の中から大河が北村に宛てた手紙を見つけ、大河が必死に鞄を奪おうとする理由を察する。午前2時、手紙を取り返しに襲撃する大河だったが、貧血と空腹で倒れてしまう。北村を好きなことを知られて恥じる大河だったが、行動に移せず妄想することしか出来ない竜児はそれを称える。しかし実乃梨に宛てた詩が見つかり、竜児も恋に悩んでることを知り恋愛相談を持ちかけられる。泰子を見られたくない竜児は、明日から恋愛相談に乗る約束をしてあしらおうとするが、ずっと一人だった大河は、その一言が嬉しかった。

夜襲の場面は原作者がインパクトのある出会いとして、フィクションの構造上必要だったと語るように、とらドラを印象づけるシーンです。



 共闘
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大河の言う「なんでも」は本当になんでもだった。朝竜児を電話で起こし朝ご飯を要求した。仕方なく大河のマンション向かったが、玄関に入った瞬間の異臭で、思わず鼻を塞ぐ。原因はシンクに溜まった生ごみ。部屋も散らかっており、汚い部屋が許せない竜児は大河寝室へ。眠る大河は人形のようで、広すぎる部屋は子供の頃に忘れられたままごとのセットに感じた。大河が目覚めると、一人分の家具しかない部屋に初めての朝ご飯が用意されていた。


学校に登校してからは大河と北村の仲を取り持つ手伝いをする竜児だったが、大河のドジも合わさってなかなかうまくいかず、夕暮れの放課後へこむ大河を慰める。しかしその様子を見ていたクラスメイトが、竜児と大河が付き合っているのでは、と噂し始める。そして実乃梨と北村にも噂が広がり、二人のことを誤解されてしまう。


互いの思い人に応援され、脈なしと言われたようなものだ。夜にファミレスで向い合って座る二人。やがて大河は胸中を明かす。

「居心地、よかったんだあんたんち」

「私さ、親と折り合いが悪くて、こんな家出て行きたいって言ったらあのマンション宛てがわれちゃった。そんな親だってわかってたのに」



あの広い部屋に一人で住んでた理由。大河の人生を象徴したかのようなあの部屋に、帰りたくなかったのだ。


二人夜の道を歩きながら、人知れず恋に悩んでることを打ち明ける。竜児も大河も一人で戦っているのを、誰も知らない。周りの評価と、本当の自分とのズレがもどかしい。その思いが爆発して傍にあった電柱に本気で蹴りを入れる。

「むかつくんじゃ!むかつくんじゃ!むかつくんじゃ!何が手乗りタイガーじゃ!全然平気なんかじゃ無いんじゃ!みのりんのバカ!北村君のバカ!なんで話を聞いてくれないのよ!パパだってママだって……誰も私の事、わかってくれない」


手乗りタイガーと呼ばれ、みんなから恐れられてても強がっていた大河だったが、本当は傷ついていた。目付きの悪さだけで、ヤンキーと言われてた竜児もその気持ちは痛いほどわかった。

 
  大河の叫びを聞いて、悲痛そうな表情を浮かべる竜児。その気持ちは痛いほどわかるのだろう。

竜児には敵がいた。人生の道のりに確かにそれは存在していた。それは普段、蹴ったり殴ったり出来なくて、これから先ずっと戦い続ける。コンプレックスや、生まれ育った環境、過剰な自意識、自尊心、色々名前を変えて現れる。


だから大河は虎になって、闘うための牙と爪を手に入れたのだ。そうしなければ、敵に押しつぶされて立ち上がれないから。


「ねえ竜児、こいつ傾いてない?」


いままで蹴りつけていた電柱は確かに傾いていた。もちろん最初から傾いていたかもしれないが、今日は大河が傾けたのだ。竜児はそう信じることにする。


「よし決めた。明日北村くんに告白する。それで終わりにする」

「犬の奉仕はもうおしまい。明日からの私たちは、家が隣同士の同級生。ただそれだけ」


ばいばい、高須君。大河はと竜児の部屋に襲撃する以前の呼び方で、別れを告げた。


 並び立つ
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朝、登校し教室に入ると、机と椅子が散乱し酷い有様だった。クラスメイト曰く、私と竜児はなんの関係もない、と大河が暴れまわったようだ。すると教室の外にいた実乃梨に呼ばれごめん、と謝られる。

       
「大河がね言うんだよ。高須くんとは絶対に付き合ったりしない。だから誤解なんだって。私だけにはわかって欲しいって。あの子、真剣な感じっていうか、なんか必死な感じの顔しててさ。でもそれってさ……それって……」


大河は、竜児との誤解を解くために暴れた。しかしその場に北村はいなかった。本当に誤解を解きたいのは、北村のはずなのに。自分のため、ではなく、竜児のために暴れたのだ。実乃梨もそのことを察したようだった。竜児も大河のために動きたかったが、昨晩、襲撃する前の関係に戻ろうと言われ、動けずにいた。


教室にいても何となく居心地の悪い竜児は、校舎裏で黄昏れていた。すると、大河が北村に告白する現場を、偶然見てしまう。大河は竜児との仲を否定するが、なら嫌いか?という問に否定する。


「竜児が居たから……竜児が居てくれたから……だから、今だってこうして勇気を出せる。私は、北村くんが、好き」


大河はまっすぐに北村に思いを届けた。それは竜児がずっと出来なかったことだ。しかし北村の答えは、恋人ではなく友達だった。それは望んだ関係ではなかった。呆然と立ち尽くす大河に、竜児は歩み寄る。一人で放って置けない理由を口にする。


「大河!虎と並び立つものは昔から竜と決まってる。俺は竜になる。そんでもって、竜として大河の傍らに居続ける


 
   ここから始まった

傍にいる、と。一度手放したものはもう二度と帰って来なかった大河にとって、初めてのもので、大河と呼んでくれて。こうして奇妙な関係はこれからも続いていくのだった。



◇なぜ犬なのか


大河は初めから竜児を犬と呼び、そして並び立つと宣言されても竜児を犬と呼び続ける。これは大河が過去に2度親に裏切られ、それが原因で実乃梨との距離も開いてしまった。自分が下の立場だったから、その流れに逆らっても結局波に飲まれてしまった。親友と呼べる仲でも引き裂く流れはあったように感じた。だから大河は自分が上に立ち、竜児の手綱を引こうとしたのではないか。自分がいくら求めても、力の強いものにはあっさり振り切られる。だったら自分が強い力でその手を離さなければ、ずっと傍に置いておける。そう感じたのかもしれない。



とらドラ1話「虎と竜」2話「竜児と大河」でした。とらドラの土台を作りつつ、しっかり関係性が明らかになってると思います。


今回はこの辺で。次回また会えることを祈りつつ。













大河が望むのを諦めないその理由は