金利と資産価格 | scientiespotenti

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資産の価格に影響する第一の要因は、その資産の保有から毎日どのような大きさの収益が、現在から将来にかけて得られるかという予想です。例えば、土地の場合、その保有から得られる利益の一つは地代です。現在から将来にかけて、大きな地代収入が得られると予想されるときには、土地を保有することが有利になります。そのため、土地に対する需要が供給に対して増大するので、地価は上昇するでしょう。たとえば、土地を買って、その上に住宅やビルを建設し、それを他人に貸したときに、現在から将来にかけて大きな賃貸料が得られると予想される場合には、 地価は上昇するでしょう。

土地を保有することから得られるもう一つの利益は、土地の値上がり益です。地価の上昇率が高いと予想されれば、現在土地を買って、将来それを売ることによって、大きな値上がり益(キャピタル・ゲイン)が得られるから、土地に対する需要が増大し、その結果、地価は上昇するでしょう。あるいは、土地を将来売る予定がない場合でも、地価が将来上昇すると予想される場合には、早めに土地を買うことが有利になるから、土地需要が増大して、その結果、地価は上昇するでしょう。

株価についても同じことが言えます。株式を保有することから得られる利益は配当と株式の値上がり益です。ほかの事情を一定として、企業の現在から将来にかけての配当支払いが多いと予想される場合には、それだけ株式保有の利益は増大するから、その企業の株式に対する需要が増大し、株価は上昇するでしょう。また、配当は少なくても、企業が実物投資によって将来大きな利益を上げる期待されるときには、それを反映して、株価の上昇が期待されるので、現在その株式を購入することが有利なります。そのため、その株式に対する需要が増大し、その株価は上昇するでしょう。すなわち、株価が将来の企業収益の増加を反映して上昇すると期待されるときには、現在の株価も上昇します。

次に、株価と地価と金利について説明します。まず、定期預金や債券の金利が低い場合を考えてみましょう。この場合には、金利の低い定期預金や債券を購入するよりも、多少のリスクを冒しても、株式を購入することが有利であると判断される可能性が高まります。したがって、株式需要が増大して、株価は上昇するでしょう。また、金利の低いときには、低い金利で資金を借り入れて、株式を購入しようとする人や企業が増えます。このような低金利の資金調達による株式投資の増大という経路を通じても、株式需要が増大し、株価は上昇するでしょう。

逆に、金利が高くなれば、株式に投資するよりも、定期預金や債券を保有することが有利になるので、株式投資は減少して、株価は低下するでしょう。すでに、株式を持っている人の場合は、株式を売って、高金利の定期預金や債券に乗り換えようとする投資家が増えるでしょう。また、高金利で資金を借りて株式投資をする人も減少します。このようにして、株式需要が減少すれば、株価は低下するでしょう。

これは地価についても当てはまります。金利が低下すれば、定期預金や債券などを持つよりも土地を持つことがそれだけ有利になり、地価は上昇するでしょう。また、低金利で借り入れて、土地に投機する人も増えるでしょう。このようなルートを通じて地価は上昇します。金利が上昇する場合には、それが低下する場合と逆のことが当てはまるので、地価は低下するでしょう。

金利がおおむね低下傾向にあった1985年から89年前半にかけて、株価と地価が大きく上昇し、1989年の終わりから1990年代の初めにかけて、金利が上昇するにつれて、株価と地価が大幅に低下したことが読み取れます。

しかし、その後、金利が低下傾向を示しているにもかかわらず、株価と地価は傾向としては低下ないし停滞しています。これは次のように説明できます。

80年代後半の株価と地価の高騰はバブル現象であり、90年代に入ってからのそれらの暴落はバブル崩壊であったと考えられます。バブルとは、企業収益や地代や金利といった経済的な基礎的諸条件の変化だけでは説明できない株価や地価の上昇を言います。90年代に入って株価と地価が暴落したのは、金利の上昇をきっかけとして、人々の将来の株価と地価の上昇期待が急激に低下期待へと大きく変化したために生じたと考えられます。それに対して、92年頃からの株価と地価の低下ないし停滞はバブルが崩壊した後も、次のような2つの要因が作用し続けたためであると考えられます。

第一に、91年代頃から、景気が後退し、それに伴って、一方で、資金需要が減少し、他方で、金融緩和政策がとられたために、金利をは低下します。景気が後退が後退すれば、株式や土地などの資産を保有することによって得られる将来収益に関する人々の期待は弱気になります。この弱気の期待による資産価格の低下が、金利の低下による株価と地価の上昇を相殺する以上に大きかったために、株価と地価はともに低下したと考えられます。

第二に、資産価格の低下は、人々や企業の資産保有額を減少させました。銀行などの金融機関は担保に取った土地の価格が暴落したため、多額の不良債権を抱えることになります。資産保有額が減少し、不良債権が増加すると、人々や企業は弱気になり、株式や土地のように価格変動のリスクが大きい資産に対する需要は減少します。なぜならば、各経済主体は将来の支払いに備えて一定の流動性を確保したいと考えるためです。このように資産保有額が減少したために、資産需要が減少する効果を、資産需要に対する逆資産効果と言います。1990年代の初めには、このような逆資産効果のために、資産価格の低下そのものが資産需要を減少させ、それがさらに、資産価格を低下させるというメカニズムが働き、地価と株価は低下ないし停滞し続けたと考えられます。