先日、看護師として働いている娘が、初めてインシデントレポート(ミスやヒヤリ・ハットを報告する書類)を書いたそうです。

 

仕事の中でミスをしてしまい、そのことを先輩に報告しているとき、自然と涙がぽろっとこぼれたと話してくれました。

 

きっと娘の中には、

患者さんへの申し訳なさ。


ミスをしてしまった自分への悔しさ。
先輩に報告する緊張。
看護師として、ちゃんとしなければという責任感。

いろいろな思いがあったのだと思います。

 

涙が出たのは、弱いからではありません。

それだけ真剣に仕事に向き合い、責任を感じていたからこそ、張りつめていたものがふっと緩み、涙になってあふれたのでしょう。

 

医療の現場では、どれだけ注意していても、ミスを完全になくすことはできません。

だからこそ大切なのは、隠さずに報告すること。
何が起きたのかを振り返ること。
そして、同じことが起こらないように、次につなげることです。

 

インシデントレポートは、誰かを責めるためのものではありません。

個人の注意力だけに原因を求めるのではなく、業務の流れや確認方法、職場の環境を見直し、医療をより安全にしていくためのものです。

 

それでも、初めて書く本人にとっては、

「自分は看護師に向いていないのではないか」
「先輩にどう思われるだろう」
「信用を失ってしまったのではないか」

そんなふうに感じてしまうこともあるでしょう。

 

でも、一度のミスで、その人の価値が決まるわけではありません。

大切なのは、ミスをした後にどう向き合うかです。

 

娘は、きちんと先輩に報告し、インシデントレポートを書きました。

それは、とても勇気のいることだったと思います。

 

私は娘に、こう伝えました。

「大丈夫。そんなこともあるよ。心配ない。のんびりいこうよ」

 

医療の仕事は、人の命や健康に関わる仕事です。

だからこそ、ミスをしたときには、誰よりも本人が自分を責めていることがあります。

 

そんなとき、さらに「もっとしっかりしなさい」と追い込むよりも、まずは安心できる言葉が必要なのだと思います。

 

大丈夫。
今回のことで、あなたの価値が下がるわけではない。
これから気をつけていけばいい。
一つずつ経験していけばいい。

 

「のんびりいこうよ」という言葉には、急いで完璧な看護師にならなくてもいい、という思いを込めました。

 

失敗しない人になることよりも、失敗を隠さず、誠実に向き合える人になること。

今回の経験はきっと、これから患者さんに寄り添うときにも、後輩を支えるときにも、生きてくるはずです。

 

 

涙を流した娘を見て、看護師として、また一つ大切な階段を上ったのかもしれない。

そんなふうに感じました。

 

 

 

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野上徳子(のがみとくこ)
内科医・心理カウンセラー
1967年生まれ、岡山育ち。現在、愛媛県松山市在住。

医師として30年診療に携わる中で、昔から‟病は氣から”というように病気の原因は氣(潜在意識)が大きく関わっていることに気付き、現在は、病気や生きづらさの中に生きる価値を見出し、本当の自分として命を輝かせて生きるサポートをしています。