今日は、外来で出会った40代女性のお話をさせてください。

 

 

彼女は糖尿病・高脂血症・気管支喘息を抱え、体重は120kg、HbA1cは10%。

インスリン導入を検討せざるを得ない数値でした。

 

 

前任の先生も薬・運動・食事療法で奮闘されたものの改善せず、

しかも心療内科にも通い、生活は自立できていない

 

 

「この方をどう導けばいいのだろう?」

 

 

処方をひととおり説明し終えたあと、

 私は彼女にこう尋ねました。
「好きなことや、夢中になれる趣味はありますか?」

 

 

 

少しうつむきながら彼女は「料理……」と言葉を濁しました。

「誰かのために作るのは楽しいけど、今はひとり……」

 

 

 

 

そこで私は提案しました。

 

「それなら、まずは“自分のため”に作ってみませんか?」

 

 

その瞬間、彼女の表情がふっと柔らかくなり、「そうしたいです」と返ってきたのです。

 

 

 

さらに私は“小さな宿題”をもうひとつ。


鏡のワークです。

  • 朝、鏡に向かって「おはよう」「調子どう?」
  • 台所で「ごはん出来たよ」
  • ひと口食べて「おいしいね」

 

そんなふうに、鏡に映る自分と会話しながら、自分のために用意した食事を一緒に味わう——たったそれだけ。

 

 

けれど、“自分を大切にする”という感覚は、血糖値より先に、心のバランスを整えてくれます。

治療に必要なのは、薬やカロリー計算だけではありません。

 

 

人は時に、「誰かのために」よりも「自分のために」動いたとき、思いがけない力を発揮するものです。

 

 

 

この鏡のワークは、アメリカの大統領になる人は必ずやると言われているワークでもあります。
「自分が、自分と一緒にいて嫌な人は、多くの人に受け入れられない」

 

 


これは、自己受容のための大切なステップ。
まずは、自分が自分のいちばんの味方になることから始めてみませんか。

 

 

 

 



野上徳子(のがみとくこ)
内科医・心理カウンセラー
1967年生まれ、岡山県育ち。現在、愛媛県松山市在住。

30年診療に携わる中で、昔から‟病は氣から”というように病気の原因は氣(潜在意識)が大きく関わっていることに気付き、現在は、病気や生きづらさの中に生きる価値を見出し、本当の自分として命を輝かせて生きるサポートをしています。