ある日、猫が小学校に迷い込んだ
「ねえゆりさん、先生は猫が嫌いでさわれないからゆりさん外へだしてくれる?」
3年生のゆりちゃんが猫を抱いて学校の外へ連れ出した
次の日
同じ猫がまた学校の中へはいってきた
また先生から
「ゆりさん猫大丈夫だよね?学校の外へ出してくれるかな?」
ゆりさんはまた猫を抱いて外へだした
また次の日に、猫は学校へ入ってきた
おそらく、そうとうお腹がすいていたのだろう
ミャーミャーと泣いていた
飼いネコだったらしいこの猫は
素敵な首輪をつけ、去勢もされた雄のアメリカンショートヘアのミックス
夕方、部活を終えて帰宅しようとしたゆりさんに
あの猫が近づいてきた
足に絡まりはなれない
学校から出すために何度か抱っこした猫だ
多少の猫への感情がある
猫もゆりちゃんを覚えていたらしく
彼女から離れない
空腹だったのだろう
捨てられて不安だったのだろう
猫はゆりさんから離れようとしない
でも
ゆりさんは家で飼えるわけがないと思った
ゆりさんの家には犬がいるのです
だから
お母さんはきっと猫まで飼ってはくれないと思いました
きっと無理だ
ゆりさんは何度もふりきって帰ろうとしましたが
走っても隠れても
猫はずっと追いかけてきます
とうとう自宅
「ママ!ママ!来て!」
ゆりさんの声に家の中からママが出てきました
「あら!どうしたのこの子」
そういってゆりさんのおかあさんは猫を抱きあげました
「きっと迷い猫ね、首輪もしてるし綺麗だし、野良チャンではないわ
近所の動物病院にちょっと聞いてみるね」
そういっておかあさんは動物病院へ連れて行き
猫の顔に覚えがないか先生に聞いてくれた
最初の動物病院では見覚えがないと言われた
次に行ったもう一軒の動物病院でも見覚えがないと言われた
では
あなたはどこからやってきたの?
おかあさんはこの猫を飼い主が見つかるまで保護することにした
ゆりさんと一緒に急いでトイレと餌を買いに行った
冬だったので猫は寒くないように
廊下に毛布をしいてもらってそこに座っている
あの毛布はさっきまで使っていた人間用だ・・・
でも他に毛布がないので仕方なく猫に使わせた
猫はじっと動かない
餌も食べない、水も飲まない
警戒しておびえているようだ
知らない家につれてこられて当然だ
猫は座ったまま動かない
次の日も動かない
その次の日も毛布から動かない
3日目
ようやく二階から階段を降りて一階にやってきた
でもまだおびえている様子だ
ゆりさんがお母さんに聞いた
「ママ、この猫どうするの?」
「保健所にいくことになるかな」
「保健所に行くとどうなるの?」
「飼い主さんが現れないと3日で処分されるかな」
「処分って何?」
「薬で安楽死するんだよ」
「殺されちゃうの?」
「そうだね・・・」
ゆりちゃんが泣きだした
「やだよ殺さないで!」
「でも飼い主や引き取り手がなかったらしょうがないのよ」
ママも泣いた
「悲しいけれど、家には犬もいるから無理だよ」
ゆりちゃんは
「誰か飼い主をさがしてよ!殺されるなんてやだよ!明日学校行かない!」
「でも家は犬もいるんだし、猫までは飼えないでしょ」
「やだ!どうして殺されちゃうの!どうして飼い主さんはこの猫を捨てたの!」
ママは困りました
どうして捨てるの?どうして動物だと捨てられちゃうの?
飼ってあげたいけど・・・
動物の処分も切ない、切ないからと言ってすべてを飼うことはできない
実際
保護された犬と猫は犬は引き取り手が多少あるが
猫はほとんどが処分されるという
仕方がないが後日
ママは猫を警察へ猫を連れて行き、猫はそこから保健所へ行ったらしい
9Kもある大きな猫
別れ際はママも涙がこぼれた
ママは自宅で猫が心配だった
本当に飼い主が見つからなかったらどうしよう・・・
ママの心がざわついた
二日後、突然保健所から連絡が入った
「猫の飼い主が見つからないのでこのままだと・・・」
「駄目です!殺さないでください!」
ママは決めた
「わかりました!家が引き取ります!いま迎えに行きますから」
ゆりちゃんのママは車に乗って猫を引き取りに行った
保健所の方も引き取ってくれる方を必死に探してくれていたらしい
簡単に処分などしたくない
どうか飼い主が見つかってほしい
そんな思いで引き取ってくださる人を探して電話をかけているのでした
大変なお仕事だと思いました
ママが保健所に迎えにいくと
猫はひとりボイラー室で古い椅子に座っていた
ボロボロの椅子に一人でだまって座っていた
なんとも不憫だった
「ごめんね!ごめんね!」
ママは泣きながら古い椅子に座っていた猫を抱き抱えた
猫はなんの抵抗もぜず、ママに抱っこしていた
事務室で引き取るための書類にサインをして
自分の家の猫にしてくれた
猫は車に乗ると
後ろの窓のところにチョンと座りだまっていた
何かを考えている様子だった
動物は保護されても
ほとんどが処分されているらしい。。。