この言葉はジャレド・ダイアモンドの著書のタイトルの邦題である。この本のタイトルの原題は“Why Is Sex Fun?: The Evolution Of Human Sexuality”『セックスはなぜ楽しいか? ヒトのセクシュアリティの進化』で,単行本のタイトルは原題の直訳であった。このタイトルについて訳者の長谷川寿一は単行本の「訳者あとがき」で次のように書いている。
Living well is the best revenge.(村上春樹/柴田元幸『翻訳夜話』より)
この本は村上春樹と東大の先生である柴田元幸が翻訳についてあれこれと話をする対談集なのだが,その中に上の言葉が出てきた。日本語訳は「優雅な生活が最高の復讐である」という意味で,(私はよく知らない作家だが)カルヴィン・トムキンズの著書のタイトルらしい。具体的には村上春樹が言うように「他人からいろいろいやな目にあって,意地悪されて,踏みにじられて,頭にきて復讐しようと思って,復讐というと相手を殴ったり,相手をいじめ返したりすることだけど,そうじゃないんだと。そんなことは意にも介さず,あるいは意に介しても知らんぷりをして,優雅にチャラチャラと暮らせば,それが相手に対するいちばんの復讐になる」ということだろう。それで思い出したのだが,イーロン・マスクは小さい頃いじめの対象になっていたらしいのだが,その後の人生で成功して世界一の大富豪になったのだから,当時のルサンチマンを晴らしているようにしか見えない行動ではなくて,Living well is the best revenge.を実践してもらいたいものなのだが…。
少し違うがこんな言葉も思い出した。
The greatest pleasure in life is doing what people say you cannot do.
大学入試の英文和訳の問題にでも出てきそうなちょっと複雑な構文の英文だが,これは19世紀イギリスの保守派の思想家で経済学者・評論家であったウォルター・バッジョットの言葉で,日本語訳は「人生最大の喜びは皆がキミには無理だと言うことをやってのけることだ」という意味である。大谷翔平が日本ハムに入団して二刀流をやると言ったときに,「そんなことムリムリ」と言った野球評論家もたくさんいたが,今そんなことを言う人は皆無だろう。ただ,大谷はこの文のロールモデルにはならないだろう。なぜなら能力が違いすぎる。例えば,大学入試などは当てはまるのではないだろうか。周りの誰もが「ムリムリ」などと言うならば,この言葉を机の前にでも貼って頑張れば実現できなくもないような気がするので。まあ,大学受験生で私のブログを見ている人などはいないだろうが,もし万が一見ている人がいれば,その人のために言っておくと,上の文のdoingは動名詞,whatは関係代名詞,what people say you cannot doはdoingの目的語になっている「連鎖関係代名詞節」だよ。(笑)