希望が未来への力 -30ページ目

希望が未来への力

どうしても自分を変えたい!

でも、変わらないんです……

どうしたらよいのか???

そんな方々にぴったりのブログです!!

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第6話「遺された機構」 

 

U.C.0125年9月3日 02:54(LST)/月面地下施設“サンクチュアリ”制御層 第零エリア

月面の深層、そのさらに奥——。
巨大な環状構造の地下セクターに、静止した人工太陽が空中に浮かんでいた。かつての実験都市の名残を感じさせる無音の空間。空虚で滑らかな床面が、異常なまでに整った美を醸し出している。

その中央、無数の断層データが重なる中で、1機のMSがゆっくりと脚をつけた。
——アムドライヴ試作機《フレイムレイス》。
紅と白を基調にしたその機体は、薄暗い空間に不釣り合いなまでに鮮烈だった。

「……これが、サンクチュアリ」

コックピットの中で、カイ・マトリクスは思わずつぶやいた。
制御層の構造物は、見たこともない設計で組み上げられていた。連邦の軍用施設とも、アナハイムの研究区画とも違う。むしろ、意図的にそれらを“模倣”しつつ逸脱したような、不気味な設計思想。

『カイ。熱源反応なし。生命兆候もゼロです。しかし……これは稼働しています』

《サナ》の警告に、カイの指先がわずかに震える。
目の前の空間は、確かに“生きていた”。ただの廃墟ではない。何かが、今もなお動き続けている。

「まるで……社会全体を丸ごと機械に置き換えたような……」

そのとき、彼の脳裏に走る、鋭い閃光。
記憶の底、失われた過去——サンクチュアリという言葉を、かつて耳にした“あの声”が囁いていた。

『お前はここで生まれた。思い出せ、カイ。全てを——』

「誰だ……!」

だが、問いの返答は届かなかった。
代わりに、センサーが異常を検知する。

【熱源反応:急速接近/距離1800メートル】
【識別不能:非連邦式システムコード】

「敵機!? どこから来た……!」

そして、霧のような光の中から、現れた。

流線型の白い装甲、セラミック複合外殻のような高反射材質、そして背部に幾何学的な“リング構造”を有した1機のモビルスーツ。
——《ゼノス・アーク》。

「やっと会えたな、カイ・マトリクス」

通信が開く。
聞き覚えのある声——しかし、どこか違っていた。

「……リアン!? リアン・クロフォードなのか……?」

しかし次の瞬間、聞こえた声は彼女のものではなかった。

『リアン・クロフォードは、我らの統合因子として再構成された。』
『汝は選別対象。コード:Ωに基づき、観測を開始する。』

まるで、生きたプログラムが言葉を紡いでいるようだった。
目の前の機体は、明らかに“人間が操縦するもの”ではない。
それは存在そのものがAIと一体化された、新種のMS——ニュータイプ適応を超えた“完全制御個体”。

「……そんなものに、リアンを……!」

怒りが沸き起こる。
だがその裏で、カイの中に眠っていた何かが反応する。

【パーソナルコード:照合中/条件一致】
【制御コードフレイム:“イグニス・リンク” 許可】

「来い……!」

フレイムレイスが、装甲外殻を一部展開。
空間中の粒子が熱を帯びて凝縮し、まるで機体そのものが“発火”するかのように赤い光を放つ。背部に展開するのは、再構成されたファンネル・ヴァリアント——超演算粒子制御兵器。

『イグニス・リンク展開——共鳴開始』

それは、“ニュータイプの感応波”をベースとした半自律制御兵装。しかし、いまのフレイムレイスはさらに進化していた。

——それは「他者の記憶」にアクセスするための器。
「戦う」ための兵器ではなく、「存在の真実」に触れるための装置。

「リアン、お前を……絶対に取り戻す!!」

突撃するゼノス・アーク。
迎撃するフレイムレイス。

月面深層——忘れられた機構の最深部で、意識と意識、記憶と記憶が交錯する決戦が、始まった。

 

U.C.0125年9月3日 03:12(LST)/月面地下施設“サンクチュアリ”制御層 中央演算核周辺

——世界が歪んだ。
月面の重力圏を忘れるほどの高速戦闘が繰り広げられている。赤い彗星と錯覚するほどの機動で迫る《ゼノス・アーク》。対する《フレイムレイス》は、蒼炎を帯びて空間を斬り裂いた。

だが、相手はただのMSではない。
それは“個体”でありながら“集合知”でもあった。
中枢AI【アーク・プロビデンス】は、リアン・クロフォードの神経データを核に、かつて連邦軍が秘匿していた人工ニュータイプ技術《ゼロ=アーキタイプ》を融合させていた。

「この感覚……これは、リアン……だけじゃない……!」

カイの意識に、無数の記憶の断片が流れ込む。
彼女の過去、連邦軍時代の記録、カイとの訓練の日々、そして——最後に送られた暗号メッセージ。

『カイ、ごめん。私、自分が何者か分からなくなった』
『でも、あなただけは覚えていて。もし、すべてが壊れても——』

「リアン……!」

その一瞬、フレイムレイスのコアが共鳴する。
背部に展開されていたファンネル・ヴァリアントが独立思考型制御に移行、空間中に幾何学的な軌道を描いて分離・収束。これまでとは桁違いの反応波が発せられた。

【感応リンク最大化:アクセスモード“Eden Gate”発動】

フレイムレイスの“瞳”が、赤から白へと変わる。

「来いよ、ゼノス・アーク……そこからリアンを、引きずり出す!」

応じるようにゼノス・アークも、背部リングを展開。
放たれたのは高次兵装《ドラグーン・バースト》——
まるで重力そのものを曲げるような超加速投射。亜光速に近い突撃を伴った斉射が空間を叩いた。

だが、フレイムレイスはそれを「視て」いた。
それはもはや予測ではない。カイの中に眠る別の感応——
“プロトコル・ラグナロク”の鍵となる遺伝子情報が、彼の脳内で覚醒しつつあった。

「俺は、俺のままでいい。だが、お前も——お前のまま戻れ!」

ヴァリアントが広がる。円環を描き、ゼノス・アークを包囲。
一瞬、両者のコックピットを媒介に、共鳴が起こる。

《リアンの記憶断片》
《カイの喪われた記憶》
《ゼロ=アーキタイプ計画の真相》

それは視界ではなく、心に流れ込むビジョン。
人類の進化を強制するためのデバイス。シャアが死の直前に残した、反抗のデータ。
“人間を、兵器へと最適化するための神のプロトコル”。

それが《プロトコル・ラグナロク》だった。

「シャア・アズナブル……あなたも、この計画を拒んだんだな」

しかし、それは終わっていなかった。
サンクチュアリは“神の模倣”として動き続けていた。
そのコアには、シャアが一度“拒絶”したはずのAI中枢が存在していたのだ。

——そして、リアンの意識がそこに“囚われて”いた。

『……カイ……私、あなたの声が……聞こえる……』

「リアン……戻って来い!」

フレイムレイスの腕が、ゼノス・アークのコックピットへと手を伸ばす。
通信リンクが最大まで開かれ、思念が交差する。

次の瞬間、コックピット内部の制御核が破断。
ゼノス・アークの白い装甲が、ゆっくりと崩れていく。
中から浮かび上がるのは——小型の生命維持カプセル。中に眠る少女の姿。

「リアン!!」

カプセルを抱えたまま、フレイムレイスは後方へと後退。
その背後で、ゼノス・アークは静かに自壊していった。

【制御層中枢崩壊まで残り18分】

施設の崩壊が始まる。
しかし、フレイムレイスの胸部に抱かれたリアンは、微かに目を開いた。

「……私……まだ、ここに……」

「……ああ。俺が、迎えに来た」

 

U.C.0125年9月3日 03:36(LST)/月面地下施設“サンクチュアリ”崩壊進行中

カイとリアン、そしてサナを乗せたフレイムレイスは、薄明の空間を上昇する。
だが、その背後で再起動する“何か”があった。
サンクチュアリのさらに奥深く——冷凍封鎖された中枢にて、未起動の金色のMSが、赤い瞳を開く。

それは、かつての“反抗の意志”を写し取った幻影。
コードネーム:"アストラル・シャア"

物語はまだ、終わっていなかった——。

第5話「星の記憶」

U.C.0125年9月3日 02:12(LST)/月面基地ルナツー・第七隔壁ドックセクション

ルナツー内部での戦闘から数時間が経過していた。破損した通路や崩落した支柱のあいだから、かすかに響く冷却音と警報の断続的なブザーだけが響いている。

その薄暗い構内に、ひときわ大きく反響する足音があった。

「……カイ、まだ中で何かを探しているのか?」

無線越しに、サナの声が届いた。彼女は基地司令室の臨時管制ポストに残り、内部探索中のカイをモニターしていた。

カイ・ローエンはすでに血の気の引いた顔で、隔壁の奥に残された“記録端末”を片手に歩いていた。その端末には、あるコードが刻まれていた——

 

【ラグナロク・プロトコル:コード05-B《サンクチュアリ》】

 

「……これは軍の制御プロトコルじゃない。完全に“独立構造”だ」

カイは呆然と呟いた。脳裏には、リアンとの戦闘中に感じた“あの感覚”が蘇っていた。言葉では言い表せない、心の奥をこじ開けられるような、得体の知れない共鳴。

『君も、まだ知らないだけだ。自分が“どこから来た”のかを』

あの時リアンが投げかけた言葉。

——そして今、このコードが指し示すもの。

「“サンクチュアリ”……この月のどこかに、隠されているのか」

そのときだった。 基地全域に再び警報が鳴り響く。

「外壁第六セクター、侵入反応! 未確認機影、三機!」

サナの声が緊迫を帯びる。

「カイ、敵だ!迎撃機が間に合わない!」

カイは迷いなく、背後のドックへ駆け出した。

——そこに鎮座していたのは、急ピッチで修復された“フレイムレイス”だった。

「来るなよ……こんなタイミングで」

カイは搭乗リフトに飛び乗りながら、かすかに震えた。 だが、その瞳に迷いはなかった。

——“なら、俺もやってやるよ。自分の中にある“何か”ごと、な”

U.C.0125年9月3日 02:19(LST)/月面基地ルナツー・ドックE宙域

砂煙を巻き上げながら、三機の黒いMSが月面に着地した。機体フレームは既存のAE製モジュールと類似していたが、関節部に発光する赤いライン、重力制御系と思しき異形のバインダー……どれも、連邦の機体ではなかった。

「識別不能……戦術AIの認識もできない……!」

サナの分析が届く間もなく、敵機の一機が滑るように接近し、ルナツーの外壁を破壊。内部に設置された通信ビーコンを精密に破壊していく。

「本当に、“探しに来た”んだな」

カイが呟く。フレイムレイスのコクピット内、システム表示が警告音を鳴らす中、彼は手動で制御バルブを解放した。

【セーフティロック解除:コードフレイム=ラビリンス接続】

【モード・セラフ:臨界域展開準備中】

機体全体に光が走り、肩部のスラスターが反転。リアバインダーが展開され、背部から白銀の光の帯を引くようにファンネル・ヴァリアントが浮かび上がる。

その様はまさに“炎の天使”——戦場に舞い降りた、白き閃光。

「行くぞ……今度は“俺自身”で」

カイが叫ぶと同時に、フレイムレイスが跳躍。 重力を切り裂くように敵機へ急接近、ファンネルが自律分散して敵の動きを分断。

敵機は奇怪な旋回で回避しながらも、片腕から放つビームワイヤーで攻撃を仕掛ける。

「避けろ、カイ!」

サナの声と同時に、敵のワイヤーがコクピット付近を掠める。 しかし、その直後——

【感応反応値:レベル5 → レベル7へ移行】

カイの脳裏に、再び“あの共鳴”が走る。

意識の奥に沈んでいた記憶が、微かに疼く。

『カイ……お前は、選ばれた器だ』

聞こえるはずのない声が、心の深層から響いた。

「誰だ……いや、俺は……!」

意識とシステムが重なった瞬間、フレイムレイスの全身に拡張フレームが起動。

【“解放形態:インナーフレイム”起動】

脚部のスタビライザーが展開、脚部推進ユニットが変形。 ファンネル・ヴァリアントが“レーザーアレイ”として形成され、 機体の周囲を炎の盾のように覆い始める。

カイの反撃が始まった。

・敵機のバインダー部を撃破 ・月面重力下での空間支配 ・AI連動型ファンネルによる同時多発制圧

そのすべてが、カイ自身の“感応力”とリンクしながら精密に展開されていく。

「——敵機の退却を確認!」

残りの2機が、ドック奥の地下セクターへ向けて撤退。 その行き先は、閉鎖されたはずの“研究棟F-0”だった。

カイは迷わず、それを追った。

「“サンクチュアリ”……あんたたちは、そこを知っている……!」

機体を急降下させると同時に、地下へと続く巨大シャフトの扉が開く。 そこには、月の地下に眠る——

『機動実験コロニー“サンクチュアリ”』

——そして、かつての戦争の影が刻まれた、封印された真実があった。


次回予告(第6話):「遺された機構」

 

第4話「迷宮の月」 

 

U.C.0125年9月2日/ルナツー軌道宙域・地球連邦宇宙軍前線補給艦隊

薄暗い宇宙に、大小の艦艇が点在していた。
その中央に浮かぶルナツーは、かつての戦争遺産のように沈黙しながらも、連邦軍にとって依然として重要な軍事拠点だった。

「補給部隊、第五ライン通過。接近警戒半径内に未登録反応なし」

静かに進む補給艦のブリッジで、管制士が淡々と報告する。
しかし、その穏やかさを破ったのは、突如として現れた“光の渦”だった。

「空間に乱反射――!?」

「これは……ミノフスキー粒子の異常散布だ!」

次の瞬間、漆黒に染まった数機のモビルスーツがルナツー艦隊に突入する。
艦艇の外装を掠め、精密なスラスター操作で機雷網をすり抜けていくその姿は、あまりにも異様で――そして洗練されていた。

 

同時刻/ルナツー外縁・第17格納庫(AEF臨時基地内)

補給線の乱れを受け、カイ・ヴァルターは整備区画でフレイムレイスの武装調整を受けていた。

「……また新しいバージョンか?」

「ファンネル・ヴァリアント試験型B。対ジャミング用の光学制御も追加した。正直言って、まだ実戦には早い」

整備主任のマキア・レインが肩をすくめる。

「早いかどうかは、出撃してから決めるよ」

冷ややかに言い残し、カイはヘルメットをかぶる。
フレイムレイスの胸部ハッチが開き、彼を乗せるように淡く光る。

だがその背後で、マキアは誰にも聞こえないように呟いていた。

「……出るぞ。あの“影”が」

 

U.C.0125年9月2日 10:42

ルナツー防衛空域/AEF第5迎撃部隊 出撃中

宙域に展開する敵機は、AEFの予測をはるかに上回る性能を見せていた。

「敵機、複数確認!機体識別不可能、IFF応答なし――!」

カイはフレイムレイスの索敵センサーを限界まで引き上げる。
視界に映るのは、光学迷彩を纏った異形のMS群。その中に、一機だけ明確に異彩を放つシルエットがあった。

「……あれは……」

紅の機体。だが、サザビーでもナイチンゲールでもない。
冷たい意志のようなプレッシャーが、フレイムレイスのコックピットを貫く。

その瞬間、カイの脳裏に言葉が流れ込む。

『会いに来たよ、カイ・ヴァルター。君は……“彼女”に似ている』

「……誰だ!?」

カイが叫ぶ前に、紅の機体が飛ぶように動き出す。
遠距離から放たれたビームが、AEFの僚機を貫いた。防御網も反応時間も、まるで意味を成さなかった。

 

AEF通信司令部内

「正体不明の敵機によって、補給艦2隻撃沈。損害率34パーセントに達します!」

「やられ過ぎだ……本当にこれは“旧ネオジオン残党”の技術なのか……?」

司令官たちは口々に呻くが、AEF上層部は沈黙していた。
一人、特殊情報課のリアン・アークライトだけが、モニターの奥を見つめていた。

「……始まったのね、“プロトコル・ラグナロク”」

冷徹な声が、部屋の空気を氷のように冷やす。
その目には、赤い閃光のMS――サザビー・リデンプションの姿が映っていた。

 

フレイムレイスとリデンプションは、一対一で宙域に対峙していた。
互いの機体が持つファンネル兵装が、空間に弾道を描く。
だが、どちらも“それ以上の何か”を隠しているようだった。

「お前は何者だ……なぜ俺の思考に直接……!」

『ニュータイプとはただの道具だと思っていた。だが君は、純粋にそれを“生きて”いる。ならば試そう。君と、この機体の可能性を』

――瞬間、サザビー・リデンプションの背部が開く。
そこから放たれたのは、通常のドラグーンを超える密度と制御速度を持つ**《ドラグーン・バースト》**だった。

「来いよ……!全部まとめて受け止めてやるッ!」

カイも叫び、**フレイムレイスの《ファンネル・ヴァリアント》**を全展開する。
両者の光の兵装が交差し、空間に火花を散らす。

その衝突の中、カイの脳内にさらに強い“共鳴”が走った。

『……君が、ここに辿り着いた理由を――思い出せ』