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希望が未来への力

どうしても自分を変えたい!

でも、変わらないんです……

どうしたらよいのか???

そんな方々にぴったりのブログです!!

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第5話 「制御権を持つ者」 

 

「君たち、UA777の件に首を突っ込むと……帰れなくなるぞ」
赤い非常灯の下、黒いレザーコートの男は一歩、ゆっくりと近づいてくる。
その目は笑っていない。

ジェシカが低く返す。
「あなたが"FlightControl:Ghost"の操作者か」

男は薄く笑った。
「操作者……面白い呼び方だ。だが正確ではない。私は制御権を持つ者だ」

村田が前に出る。
「制御権? あんた、飛行機を墜落させる権限でも持ってるってのか」

男は首を横に振る。
「墜落など、古臭い発想だ。いまの空は、もっと静かに、もっと効率的に……書き換えられる」

 

ジェシカが机のUSBに目をやる。

「この装置、UA777の航法データに直接アクセスできるのね」

「それは……一部だ」男は机に手を置き、わざとらしくゆっくりとUSBを回転させる。
「君たちが気付いていないだけで、この瞬間も、複数の航路が再計算され、複数の便が『別の場所』に向かっている」

ハリスが一歩踏み出す。
「何のために?」

「目的は単純だ。空を管理するのは国家ではなく、我々だ。UA777は、その実証実験にすぎない」

 

その言葉を聞いた瞬間、ジェシカは悟る。

この男をここで取り押さえるか、さもなくば全てを闇に葬られる。

チャンが小声で囁く。
「ジェシカ……正面は危険だ。後方の非常扉から出れば──」

男の声が遮る。
「無駄だ。その扉の外には二人、君らを待っている」

赤い非常灯の光が、管制室の窓越しに動く人影を映し出す。
逃げ道はない。
ジェシカはホルスターの安全ロックを外した。

 
遠くから鋭い眼光で監視していた男の口が動いた。
「君たちはもう、航空の“地図”から消えたんだ」

その瞬間、外でプロペラ音──小型ドローンの群れが施設を包囲していく音が響く。

第4話 旧管制センター「EASTGATE」潜入 

 

深夜0時15分。
サンフランシスコ湾を渡るベイブリッジを、黒のSUVが無灯火で滑るように走る。
運転席はジェシカ、助手席に副操縦士チャン、後部に機長ハリスと整備士の村田。
車内は無線機のかすかなノイズだけが響く。

「……まだあそこ、電気通ってるのか?」村田が低く呟く。
チャンがタブレットを見ながら答える。
「公式記録では2009年に閉鎖。だけど今夜、ここからUA777のデータにアクセスがあった」

ジェシカはハンドルを握り直す。
「仮に電源が入ってるとしても、中に誰がいるかは不明。民間施設じゃない……元FAA(連邦航空局)の管轄だ」

 

午前0時42分。

彼らはEASTGATEの外周フェンスに到着した。
潮の匂いと錆びた鉄の匂いが入り混じる。
フェンスの向こう、管制塔の窓からぼんやりとモニター光が漏れていた。

「……誰かいるな」ハリスが囁く。
ジェシカは腰のホルスターに手をやり、村田に工具バッグを渡す。
「非常用の電源盤は南側の壁。そこを切れば中の監視カメラは止まるはず」

村田は頷き、闇の中をしゃがみながら移動。
数秒後、ブレーカーが落ちたように光が一瞬消える──が、すぐに非常灯が赤く点灯した。

「……非常回路が生きてる」チャンが息を呑む。
「誰かが維持してるってことだ」ハリスが短く返す。

 

内部は、使われなくなった機材とケーブルの山。

だが、管制室だけは別世界のように整然と整備され、最新型の通信端末とサーバーラックが稼働していた。
中央の机には、見慣れたロゴ入りのUSBケース──UA777機内で発見されたものと同型だ。

ジェシカが小声で言う。
「これが……"FlightControl:Ghost"の発信源か」

突然、背後から声が響く。
「──ここは立入禁止のはずだが?」

全員が振り返る。
そこに立っていたのは、黒いレザーコートの男。
港でデニスを消した男と同じ顔──だが、今度は右耳に航空用のヘッドセットを装着し、無線の英数字コードを呟いている。

「君たち、UA777の件に首を突っ込むと……帰れなくなるぞ」

 

男の手元で別のUSB が 非常灯の赤い光に照らされていた。

第3話 消えた座席番号と貨物リストの空白 

 

翌朝、ユナイテッド航空サンフランシスコ支社の保安会議室。
壁一面に航路図と機内座席表が投影されていた。
整備士の村田と機長ハリス、副操縦士チャン、そしてセキュリティ担当のジェシカが集められている。

「問題のUSBが見つかった座席は、47K──」
ジェシカが説明を始めるが、そこで画面が一瞬ちらついた。
座席表から、47Kだけがグレーアウトし、情報が消えている。

「……何だこれ?」村田が眉をひそめる。
ジェシカはキーボードを叩きながら答える。
「予約記録も搭乗記録も、すべて白紙になってる。つまり……そこに座っていた乗客は“存在しなかった”ことになってる」

機長が腕を組む。
「冗談じゃない。俺の目で見てる。あそこに背の高い男が座ってた」

 

一方その頃、サンフランシスコ港の貨物エリアでは…

海から吹き込む湿った風の中、港湾作業員のデニスがコンテナの番号を確認していた。
しかし、リストの最下段に記載されていたはずの「UA777-0459」の欄が、手元の端末から消えている。

「おかしいな……さっきまであったはずだ」
背後から、低い声がした。
「何を見た?」

振り向いた瞬間、黒いレザーコートの男が無言で端末を奪い取り、スリットナイフの光がかすかにきらめく。
デニスの声は、冷たい潮風にかき消された。

 

午後、ジェシカは貨物リストと座席データの両方に、同じ不自然なアクセスログが残っていることを突き止めた。

そこには、ただ一行──

Access: FLTCTRL-GHOST/UC-EASTGATE

「……イーストゲート?」
副操縦士チャンが身を乗り出す。
「聞いたことがある。あれは……旧型航空管制の中継サーバーだ。今は使われてないはずだが」

ジェシカはすぐに返した。
「使われてない“はず”の施設から、UA777のシステムにアクセスしてる。これは偶然じゃない」

機長ハリスは短く息を吐き、椅子を引いた。
「──なら行こう。俺たちの機体を乗っ取ったやつを、直接見に行く」

 

サンフランシスコ湾の対岸、廃墟化した旧管制センター「EASTGATE」。

夜の闇の中、その窓の奥で、無数のモニターが幽霊のように光っていた。