漁船の上に長い棒をわたし~みんなでその棒を押す。
これが20人ちかくの大男が集まっても~なかなか進めない。
「Pergi(Go)~、Perugi~、Perugi~」と声を合わせ、汗だくになって船を押していると...妙な連帯感が生まれてくる。
ふと後ろを見やると、タイ人と思われる若い漁師も渾身の力を込めて太い押し棒と格闘している。
何気なく彼が身に着けていた服を見て~愕然とした。
彼の着ているジャージ地で水色の上着の胸に~紺色の刺繍糸ではっきりと『門真七中~高井和』との文字が縫い付けられてあった。
門真七中は、大阪にある中学校である。
この中学校には、きっと高井和~(なんとか)という生徒がいたのであろう。
高井くんはこの中学校に入学したとき、この体操服を買ってもらったにちがいない。
自分の名前が刺繍してある新品の体操服を手にして、とてもうれしかったことだろう。
しかし~月日は流れ、高井くんは成長し...新品だった体操服も日ごとに古くなっていく。
高井くんはまた新しい体操服を望むようになり~手に入れる。
高井くんにとって不必要となってしまった体操服は古着に出され、東南アジアに送られてきた。
高井くんが当たり前のこととして新しく買ってもらった真っさらな体操服に腕を通している頃、マレーシアの片隅ではタイ人であるがために学校にも行けず日々の生活のためにこうやって汗水をたらして働いている若者が、君が要らなくなった体操服を着ているのですよ...
~そう、大声で叫びたい気持ちだった。
その時~確かに、目に見えない高井くんの姿が日本という国重なり合った。
そして、目に見えない高井くんの姿が~これまでの自分自身と重なり合った...
漁から戻ってきた男たちは、見事なほど何もしない。
アーヤは例の如く家の中でゴロゴロし、他の漁師たちもケダイ(食堂)に集まって世間話をしているか小屋の傍でボケーッと煙草を燻らせている。
とてもおもしろいことに気付いた。
日本人は男性であっても“セカンドバック”というものを持ち歩くのであるが、その習慣はここマレーシアでは結構奇異に映る。
今~サバク海岸を手持ちぶさたにウロウロしている漁師たちが、日本人男性みたく大事そうに抱えているものがある。
それは、ヴィトンやボニアのセカンドバックならぬ~『プラスティック製のタッパー』であった。
~中身を見せてもらった。
そこには1リンギ紙幣(約50円)やコインの現金~そしてその横のしきりには、煙草の葉らしきものとそれを巻く紙がきれいに整頓されて入れられていた。
彼らにとって、2リンギ(約100円)もする箱入り煙草はとても高価なものなのだ。
そこで、吸殻をから煙草の葉を集め~それを紙に巻いて吸っているのである。
そんな煙草のもとになるものと現金が入っているタッパーは、とてつもなく大切なものなのだ。
漁に出るときも~ちゃんと船に積み込んでいる漁師もいた。
タッパーゆえに水に強い...というのがミソなのである!
力を合わせて~浜に船をあげる!












