このクラスの担任の涙目先生は~子どもたちと同じく…緊張した面持ちで、急に登場した男の先生を見つめている。
どうやら、この男の先生は…次の教科の授業をするために入ってきたのではないようだ。
一体~何をしにきたのか?
…と、いきなり彼は信じられないものを取り出して~子どもたちに配り始めた。
それは~な・な・何と…『コルゲート(歯磨き粉)』だったのである!
~ここで、説明しよう。
マレーシアでは…なぜか“コルゲート”が、歯磨き粉の代名詞になっている。
確か~コルゲートは、歯磨き粉を作っている一企業に過ぎないはずなのだが…私はマレーシアに来て以来、コルゲート以外の歯磨き粉を見たことがない。
コルゲート?~もしかして、今から“歯磨き指導”でも始まるのか…と思ったが、そうでもなさそうだ。
「マレーシア政府は~歯をよく磨いて虫歯予防をするように…というキャンペーンを進めています~その一環として、3ヶ月に一度…公立学校の児童にコルゲートを配付しているんですよ~」
“コルゲートなんか、その辺の店で安く買えるのになぁ~ほんじゃあ、なんで歯ブラシは配らへんのや”…等と次々と疑問が頭の中を駆け巡ったが、とにかく私の目の前で~子どもたちは、大切そうにそのコルゲートをカバンの中にしまいこんだ。
コルゲート先生が去った後~涙目先生はいきなり“モラル”の授業を始めた。
…「“マレー語”の授業が中途半端なままやないかぁ~」と、一応心の中で突っ込んでおこう…
モラルの教科書を~最初は先生が読み、続けて指名された子どもが…順に音読をしていく。
子どもが読み終わる度に~先生は「Terima Kasih(ありがとう)」と言っているのが、印象的であった。
子どもが5人ほど読み進んだところで~先生は読んだ箇所の内容についての発問をいくつか行った後、黒板に大切な文を板書し始めた。
『RESPECT』を表すにはどうやって人に呼びかけるか~ということが、この授業のポイントらしい…
改めて、黒板に書かれた文をノートに写し始めた子どもたちの様子を観察してみる。
まず感じたのは~全体的に姿勢が悪い。
背筋をまっすぐに伸ばして…書いたり聞いたりしている子どもは~ほとんどいなかった。
子どもの机の上も、片付いてない。
前の授業の教科書やリハットで食べるお菓子の箱、水筒等が~出しっぱなしである。
でも~これが“マレーシアンスタイル”なんだろうか…
リハットの時間がやってきて、今日の参観はこれまでにする旨を告げに行くと~涙目先生は…ホッとした表情でこう語ってくれた。
「恥ずかしい場面ばかりを見せてしまって~すみません…実は、うちのクラスは校長先生に目を付けらていて~“このクラスは書き方がとても悪いので、どうやって書くかということをしっかり教えなさい!”と言われているんです…だから、授業の最後には~見てもらったように、必ず子どもに“視写”をさせています…教室が校長室に近いから、子どもが騒がしい時には~とても気をつかうんですよ」
…私は、もちろん~「そんなのネバーマインドですよ…今日は、先生の一生懸命さがよく伝わってきて~とても勉強になりました…Terima Kasih(ありがとう)」と、答えておいた。
第4日目~この日は、小学4年生を参観させてもらう。
4年生は1クラスしかないようで…学級の人数も、22人と少なかった。
そのうち~何と女子の数が、たった3人だったのは驚いたが…
ちなみに、ちゃんと“プリフェクト”は存在していて~やはり男子であった。
この日の1時間目は~国語(マレー語)の授業である。
マレー語の先生は、言葉当てクイズのようなことから始めた。
クラスを2チームに分け~順番に同義語を当てていく…『対抗戦』である。
この作戦は見事に子どもたちの心を捉えていて、こんなに子どもたちの表情が“生き生き”とした場面を~初めて見た。
しかし、この楽しい導入が終わり~この学校のパターンである『先生の説明(一斉指導)→ノート整理(個別指導)』に入っていくと…やはり子どもたちの集中力は散漫になり、ややがさつき始めたのである…