「ところでそれはなんですか」
ひとしきり笑って気が済んだのか、サフィールがスレイに尋ねてきた。
「え、どれのこと」
「さっきから私にはバスケットが宙に浮いているように見えているのですが……」
スレイはサフィールの目線の先を辿った。そこにはお弁当が入ったバスケットがあり、その持ち手はミクリオが握っている。
「ああこれ。ミクリオに持ってもらっているんだ」
ひとしきり笑って気が済んだのか、サフィールがスレイに尋ねてきた。
「え、どれのこと」
「さっきから私にはバスケットが宙に浮いているように見えているのですが……」
スレイはサフィールの目線の先を辿った。そこにはお弁当が入ったバスケットがあり、その持ち手はミクリオが握っている。
「ああこれ。ミクリオに持ってもらっているんだ」
「ミクリオ……ですか」
「うん。オレの幼なじみで水の天族の……」「な、なんですってっ。天族の方に荷物を持たせるなどっ……」
「待てって言ったのが、地の天族のエドナなんだけどな」
サフィールのあまりの驚きように、戸惑った顔でスレイは頭を掻いた。
「左様でございますか。しかし……」
「……そうだ。さっきもみんなで話したんだけど、サフィールさんも一緒にお弁当食べようよ」
「お弁当……」
「そう。この中にはお弁当が入ってるんだ」
スレイがにっと白い歯を見せると、アリーシャが続けた。
「うん。オレの幼なじみで水の天族の……」「な、なんですってっ。天族の方に荷物を持たせるなどっ……」
「待てって言ったのが、地の天族のエドナなんだけどな」
サフィールのあまりの驚きように、戸惑った顔でスレイは頭を掻いた。
「左様でございますか。しかし……」
「……そうだ。さっきもみんなで話したんだけど、サフィールさんも一緒にお弁当食べようよ」
「お弁当……」
「そう。この中にはお弁当が入ってるんだ」
スレイがにっと白い歯を見せると、アリーシャが続けた。
「実は私の家のシェフが張り切ってたくさん作ってしまって。四人ではとても食べきれそうにないのだ。これはもしかすると、サフィール殿の分も含まれているのではないかという次第なのだが、どうだろうか」
「そ、それは仕方ありませんね。なに、ご心配にはおよびません。私がきれいに片付けてみせますとも」
サフィールは両手を胸の前で握りしめて目を輝かせた。心なしか彼の荒い息づかいが聞こえてくる。
「な、なんかすごく喜んでくれているみたいだね」
「はは……」
「決まりだな。ではお弁当はどこで広げるといいだろうか」
アリーシャが尋ねると、サフィールとスレイは周囲を見回した。
「うーーん、そうですねえ。私が生活に使っている部屋は小さいですし……」
「だよな。そうすると……。あ、あそこの木の下なんてどうかな」
スレイが指差した先をその場にいる全員が辿った。
「スレイにしてはなかなかいい選択じゃないかな」
木の下には簡素ではあるが、テーブルと椅子が並んでいる。
「そうかしら。この辺り一帯じめじめよ。これ以上ワタシの服がじめじめになるのはガマンできないんだけど」
心底嫌そうに言うエドナに、その場にいる全員が視線を向けた。
「な、なによっ、その目はっ。アナタたちは濡れても構わないって言うの」
「え、それは……」
「まあ……」
スレイは右手で頭を掻いて困った顔をしたが、何か思いついたらしく、ぽんっと右の拳で左の掌を打った。
「そうだ。ミクリオならなんとかできるんじゃないかな」
「本当ですか、ミクリオ様」
スレイのその一言で、彼の仲間は期待に目を輝かせた。
「ちょっと、スレイ……」
「いいじゃないか。ミクリオ、ちょっと頼むよ」
いとも簡単に言うスレイに、ミクリオは溜め息をついてみせた。
「いいけど。勝手に期待して、結果にがっかりするんじゃないぞ」
ミクリオが杖を振りあげると、宙を細かい氷の粒が舞いあがった。それらは陽光を受けて、ひとつひとつがきらきらと宝石のように輝いている。
その氷に引き寄せられるように、さらに細かい霧になった空気中の水分が集まっていく。
やがていくつもの氷の結晶がスレイたちの周囲を舞い始めた。す
「うわあ……」
「すごい……」
「キレイね……」
スレイたち三人は無数の結晶を感嘆の声をあげて見つめている。
「素晴らしい。実に素晴らしい」
サフィールも熱に浮かされたように、繰り返し呟いている。
ミクリオは照れているのか、少し困惑した顔で告げた。
「さあ、お弁当の準備をしようか」
「サフィール殿、ひとつ頼みごとをしてもいいだろうか」
ミクリオの言葉を受けて、アリーシャがサフィールに尋ねた。
「なんなりと、アリーシャ姫」
「紅茶を入れようと思うのだが、お湯を沸かしてもらってもいいだろうか」
「お安いご用です。しばらくお待ちいただけますか」
「ああ。それはもちろん」
「では一旦失礼いたします」
サフィールは右手を胸に添えると、一礼してスレイたちの前を辞した。
氷の結晶の向こうへ歩いていくサフィールの後ろ姿を眺めながら、スレイが口を開いた。
「やっぱりどこかに食事を作ったりする場所があるんだろうな」
「そりゃあなにか簡単なものを作る場所ぐらいはいるだろう。スレイの家にもあったんだし」
「あら、スレイは料理ができるの」
「それが美味しいんですよ、エドナ様」
「まあ、生意気ね、美味しいなんて。それでアリーシャはどうなの」
「わ、私は……」
「できないのね。……罰としてリスリスダンスを踊ってもらおうかしら」
「リ、リスリスダンスですか」
「よもや忘れたなんて言わせないわよ」
「その……まだ教わっていないのですが……」
「そんなはずはないわ。忘れたなら素直にそう言いなさい」
「いえ、ですが……」
「仕方ないわね。もう一度だけ教えてあげるから、今度はちゃんと覚えなさいよ」
「あ、ありがとうございます、エドナ様」
今初めて教わりますが、という言葉を飲み込んで礼をいうアリーシャを、スレイとミクリオは感心した様子で眺めていた。
「よく付き合っているよね、アリーシャは」
「ホントだよな」
彼らの視線の先では、エドナの指示でアリーシャがポーズをとっている。
「オレたちも一緒に踊ろうか」
「まさか。君一人でどうぞ。そのほうがアリーシャもわかりやすいだろう」
「ミクリオはどうするんだ」
「僕は一人寂しくお弁当を広げて待っているよ」
「えーーっ。オレもそっちがいい」
「いや、一人で充分だ。スレイはアリーシャを助けてあげるといい」
そう言い残してミクリオは木の下に向かって歩いていった。
スレイが口を尖らせて親友の後ろ姿を見送っていると、エドナに声をかけられた。
「ちょっと、早く来てアリーシャに教えるの手伝いなさいよ。この子ちっとも言った通りに動かないんだから」
「えっ、やっぱりオレそっちなの」
「そうよ、早く来なさい」
スレイは渋々エドナとアリーシャの傍に行った。
「いい、まずはこうよ」
しばらく後、サフィールは不思議な踊りをするスレイとアリーシャの姿を目の当たりにすることになるのであった。
「あ、あの……スレイ殿、アリーシャ姫。いったいなにをされているのですか」
目を丸くして尋ねるサフィールの声を聞き、我に返ったアリーシャは、首まで真っ赤になってその場に固まってしまった。
「あ、お湯ありがとうサフィールさん。さ、みんなでお弁当食べよっか」
なにごともなかったかのように、スレイはサフィールからお湯の入ったポットを受け取った。
「さ、あっちに用意できてるよ。早く」
スレイは右手にポットを持ち、左手でサフィールの腕を掴むと、ぐいぐいと引っ張っていった。
木の下へお歩いていくスレイとサフィールの後ろ姿を眺めつつ、エドナは呟いた。
「見られたわね」
「ど、どうしましょう、エドナ様」
「ワタシは困らないけどね」
「エ……エドナ様っ」
すっかり狼狽えているアリーシャの姿を見て、エドナはふっと笑った。
「助けてあげないこともないけどね」
すがるような目でみつめるアリーシャにうなづいてみせると、エドナは傘の先をサフィールに向けた。
「赤土目覚めよ……」
「エ、エドナ様っ。それはやめてください」
波が引くように顔を青ざめさせたアリーシャが必死にエドナを止めようとする。
「そう、いいのかしら。抹殺してしまえばなんの心配もいらなくなるわよ」
「物騒なことを言うんじゃない。アリーシャが困っているじゃないか」
「目ざといわね、ミボ。ワタシはアリーシャを憂いから解放してあげようとしただけよ」
「そんなことしたら別のもっと深い悩みを生んでしまうじゃないか」
ミクリオが呆れた顔でエドナをたしなめる。
「いいかげんにお弁当食べようよ」
しびれを切らしたスレイがそう漏らすと、三人はくすっと笑って応じた。
「わかった。いま行く」
お弁当の前で待つスレイとサフィールの元に、三人は歩いていった。
木の下にしつらえてある椅子にそれぞれ腰掛けると、アリーシャはティーセットを広げた。
「サフィール殿、ありがたく使わせてもらうよ」
「どうぞ。アリーシャ姫のお心のままに」
サフィールが快く応じると、アリーシャはティーポットの蓋を取り、サフィールの沸かしたお湯を注いだ。
それからしばらく待つと、今度はティーポットのお湯をティーカップに順に注いでいく。
「このお湯は捨てて、次に茶葉を入れて新しいお湯を注ぐそうだ」
「へえ〜〜。そんなことをするんだ」
「手が込んでいるな」
感心したように声をあげた少年二人に、アリーシャは照れ笑いを浮かべてみせた。
「ふふ。家のメイドの受け売りだがな」
アリーシャは缶を手に取り蓋を開けて、ティースプーンで中の茶葉をすくって、お湯を捨てたティーポットに六さじ入れてお湯を注いだ。
「あら、アナタの家のメイドはそんなもの使っていなかったわよ」
アリーシャが砂時計をひっくり返したのを目ざとく見つけたエドナがそれを指摘した。
「さすがはエドナ様です。実はこの砂時計は、素人の私でも紅茶を美味しく入れられるようにと、メイドが持たせてくれたものなのです」
「ふうん、難しいんだな」
スレイが神妙な顔をして言うと、ミクリオが知ったような口ぶりで告げた。
「スレイ、簡単に見えることが、実はとても難しかったりするものなんだよ」
「わかってるよ、エラそうに言うな」
風船のように頬を膨らましたスレイの顔を見て、エドナがくすりと笑った。
「ホントにまだまだ坊やね」
「エドナまで……。悪かったな、坊やで」
「悪くはないわよ、面白いもの」
「そ、それは仕方ありませんね。なに、ご心配にはおよびません。私がきれいに片付けてみせますとも」
サフィールは両手を胸の前で握りしめて目を輝かせた。心なしか彼の荒い息づかいが聞こえてくる。
「な、なんかすごく喜んでくれているみたいだね」
「はは……」
「決まりだな。ではお弁当はどこで広げるといいだろうか」
アリーシャが尋ねると、サフィールとスレイは周囲を見回した。
「うーーん、そうですねえ。私が生活に使っている部屋は小さいですし……」
「だよな。そうすると……。あ、あそこの木の下なんてどうかな」
スレイが指差した先をその場にいる全員が辿った。
「スレイにしてはなかなかいい選択じゃないかな」
木の下には簡素ではあるが、テーブルと椅子が並んでいる。
「そうかしら。この辺り一帯じめじめよ。これ以上ワタシの服がじめじめになるのはガマンできないんだけど」
心底嫌そうに言うエドナに、その場にいる全員が視線を向けた。
「な、なによっ、その目はっ。アナタたちは濡れても構わないって言うの」
「え、それは……」
「まあ……」
スレイは右手で頭を掻いて困った顔をしたが、何か思いついたらしく、ぽんっと右の拳で左の掌を打った。
「そうだ。ミクリオならなんとかできるんじゃないかな」
「本当ですか、ミクリオ様」
スレイのその一言で、彼の仲間は期待に目を輝かせた。
「ちょっと、スレイ……」
「いいじゃないか。ミクリオ、ちょっと頼むよ」
いとも簡単に言うスレイに、ミクリオは溜め息をついてみせた。
「いいけど。勝手に期待して、結果にがっかりするんじゃないぞ」
ミクリオが杖を振りあげると、宙を細かい氷の粒が舞いあがった。それらは陽光を受けて、ひとつひとつがきらきらと宝石のように輝いている。
その氷に引き寄せられるように、さらに細かい霧になった空気中の水分が集まっていく。
やがていくつもの氷の結晶がスレイたちの周囲を舞い始めた。す
「うわあ……」
「すごい……」
「キレイね……」
スレイたち三人は無数の結晶を感嘆の声をあげて見つめている。
「素晴らしい。実に素晴らしい」
サフィールも熱に浮かされたように、繰り返し呟いている。
ミクリオは照れているのか、少し困惑した顔で告げた。
「さあ、お弁当の準備をしようか」
「サフィール殿、ひとつ頼みごとをしてもいいだろうか」
ミクリオの言葉を受けて、アリーシャがサフィールに尋ねた。
「なんなりと、アリーシャ姫」
「紅茶を入れようと思うのだが、お湯を沸かしてもらってもいいだろうか」
「お安いご用です。しばらくお待ちいただけますか」
「ああ。それはもちろん」
「では一旦失礼いたします」
サフィールは右手を胸に添えると、一礼してスレイたちの前を辞した。
氷の結晶の向こうへ歩いていくサフィールの後ろ姿を眺めながら、スレイが口を開いた。
「やっぱりどこかに食事を作ったりする場所があるんだろうな」
「そりゃあなにか簡単なものを作る場所ぐらいはいるだろう。スレイの家にもあったんだし」
「あら、スレイは料理ができるの」
「それが美味しいんですよ、エドナ様」
「まあ、生意気ね、美味しいなんて。それでアリーシャはどうなの」
「わ、私は……」
「できないのね。……罰としてリスリスダンスを踊ってもらおうかしら」
「リ、リスリスダンスですか」
「よもや忘れたなんて言わせないわよ」
「その……まだ教わっていないのですが……」
「そんなはずはないわ。忘れたなら素直にそう言いなさい」
「いえ、ですが……」
「仕方ないわね。もう一度だけ教えてあげるから、今度はちゃんと覚えなさいよ」
「あ、ありがとうございます、エドナ様」
今初めて教わりますが、という言葉を飲み込んで礼をいうアリーシャを、スレイとミクリオは感心した様子で眺めていた。
「よく付き合っているよね、アリーシャは」
「ホントだよな」
彼らの視線の先では、エドナの指示でアリーシャがポーズをとっている。
「オレたちも一緒に踊ろうか」
「まさか。君一人でどうぞ。そのほうがアリーシャもわかりやすいだろう」
「ミクリオはどうするんだ」
「僕は一人寂しくお弁当を広げて待っているよ」
「えーーっ。オレもそっちがいい」
「いや、一人で充分だ。スレイはアリーシャを助けてあげるといい」
そう言い残してミクリオは木の下に向かって歩いていった。
スレイが口を尖らせて親友の後ろ姿を見送っていると、エドナに声をかけられた。
「ちょっと、早く来てアリーシャに教えるの手伝いなさいよ。この子ちっとも言った通りに動かないんだから」
「えっ、やっぱりオレそっちなの」
「そうよ、早く来なさい」
スレイは渋々エドナとアリーシャの傍に行った。
「いい、まずはこうよ」
しばらく後、サフィールは不思議な踊りをするスレイとアリーシャの姿を目の当たりにすることになるのであった。
「あ、あの……スレイ殿、アリーシャ姫。いったいなにをされているのですか」
目を丸くして尋ねるサフィールの声を聞き、我に返ったアリーシャは、首まで真っ赤になってその場に固まってしまった。
「あ、お湯ありがとうサフィールさん。さ、みんなでお弁当食べよっか」
なにごともなかったかのように、スレイはサフィールからお湯の入ったポットを受け取った。
「さ、あっちに用意できてるよ。早く」
スレイは右手にポットを持ち、左手でサフィールの腕を掴むと、ぐいぐいと引っ張っていった。
木の下へお歩いていくスレイとサフィールの後ろ姿を眺めつつ、エドナは呟いた。
「見られたわね」
「ど、どうしましょう、エドナ様」
「ワタシは困らないけどね」
「エ……エドナ様っ」
すっかり狼狽えているアリーシャの姿を見て、エドナはふっと笑った。
「助けてあげないこともないけどね」
すがるような目でみつめるアリーシャにうなづいてみせると、エドナは傘の先をサフィールに向けた。
「赤土目覚めよ……」
「エ、エドナ様っ。それはやめてください」
波が引くように顔を青ざめさせたアリーシャが必死にエドナを止めようとする。
「そう、いいのかしら。抹殺してしまえばなんの心配もいらなくなるわよ」
「物騒なことを言うんじゃない。アリーシャが困っているじゃないか」
「目ざといわね、ミボ。ワタシはアリーシャを憂いから解放してあげようとしただけよ」
「そんなことしたら別のもっと深い悩みを生んでしまうじゃないか」
ミクリオが呆れた顔でエドナをたしなめる。
「いいかげんにお弁当食べようよ」
しびれを切らしたスレイがそう漏らすと、三人はくすっと笑って応じた。
「わかった。いま行く」
お弁当の前で待つスレイとサフィールの元に、三人は歩いていった。
木の下にしつらえてある椅子にそれぞれ腰掛けると、アリーシャはティーセットを広げた。
「サフィール殿、ありがたく使わせてもらうよ」
「どうぞ。アリーシャ姫のお心のままに」
サフィールが快く応じると、アリーシャはティーポットの蓋を取り、サフィールの沸かしたお湯を注いだ。
それからしばらく待つと、今度はティーポットのお湯をティーカップに順に注いでいく。
「このお湯は捨てて、次に茶葉を入れて新しいお湯を注ぐそうだ」
「へえ〜〜。そんなことをするんだ」
「手が込んでいるな」
感心したように声をあげた少年二人に、アリーシャは照れ笑いを浮かべてみせた。
「ふふ。家のメイドの受け売りだがな」
アリーシャは缶を手に取り蓋を開けて、ティースプーンで中の茶葉をすくって、お湯を捨てたティーポットに六さじ入れてお湯を注いだ。
「あら、アナタの家のメイドはそんなもの使っていなかったわよ」
アリーシャが砂時計をひっくり返したのを目ざとく見つけたエドナがそれを指摘した。
「さすがはエドナ様です。実はこの砂時計は、素人の私でも紅茶を美味しく入れられるようにと、メイドが持たせてくれたものなのです」
「ふうん、難しいんだな」
スレイが神妙な顔をして言うと、ミクリオが知ったような口ぶりで告げた。
「スレイ、簡単に見えることが、実はとても難しかったりするものなんだよ」
「わかってるよ、エラそうに言うな」
風船のように頬を膨らましたスレイの顔を見て、エドナがくすりと笑った。
「ホントにまだまだ坊やね」
「エドナまで……。悪かったな、坊やで」
「悪くはないわよ、面白いもの」
澄ました顔で言うエドナを目の当たりにして、スレイはさらに頬を大きく膨らませるのだった。