「では時計の砂が全て落ちましたので、お茶をカップに注ぎます」
「やった。やっとお弁当を食べれる」
両手を天につきだして喜ぶスレイを横目に、エドナがうなづいた。
「そう。待ちかねたわ、アリーシャ」
「はい、エドナ様。お待たせしました」
微笑みながらアリーシャは、紅茶を入れたカップをエドナの前に置いた。
「やった。やっとお弁当を食べれる」
両手を天につきだして喜ぶスレイを横目に、エドナがうなづいた。
「そう。待ちかねたわ、アリーシャ」
「はい、エドナ様。お待たせしました」
微笑みながらアリーシャは、紅茶を入れたカップをエドナの前に置いた。
エドナはそのカップを手に取ると、ゆっくりと一口すすった。
「うん、そこそこの味ね」
「光栄です」
アリーシャが嬉しそうな顔をすると、エドナが頭をあげた。
「そこそこなのよ。あのメイドの入れたお茶に比べたら、まだまだなんだから」
「すみません、エドナ様」
「慢心してはダメよ。邁進なさい」
「はい、肝に命じます」
厳しい言葉を投げかけるエドナを前に、うなだれるアリーシャを見かねたスレイが割って入った。
「エドナ、アリーシャは今日初めて紅茶を入れたんだから、そこまで言わなくてもいいじゃないか。充分美味しいんだし」
「……はあ、スレイも全然ダメね」
「え」
「ちょっとはツッコミなさいよ、もう」
「あ……」
わざとらしくため息をつくエドナを見て、スレイは初めて気づいたらしく、ぱっと目を見開いた。
「慢心(マンシン)と邁進(マイシン)か。やれやれ」
ミクリオが呆れたように肩をすくめる。
そのやりとりの全てを知ることができないサフィールが、心配そうに尋ねてきた。
「どうかされたのですか、アリーシャ姫」
「いや、今天族に"慢心するな、邁進しなさい"と言われてしまって……」
「ほう、上手いことおっしゃいますね。さすが天族」
「ははははは」
スレイが苦笑し、ミクリオが空を仰ぐなか、エドナが満足そうに一人うなづいた。
「よくわかっているじゃない。霊応力がないのが残念だわ」
「はは……。サフィールさん、エドナ……地の天族が褒めてくれてるよ」
「おお、身に余るお言葉をいただき幸福至極に存じます」
「これからも精進しなさい。期待してるわよ」
エドナの言葉をそのままスレイが伝えると、サフィールはかしこまってひれ伏しそうな勢いでテーブルに額を押しつけた。
「なんという勿体ないお言葉。この胸に刻みつけておきます」
そのあまりの大仰さにさすがのエドナも若干の気持ち悪さを感じたらしく、サフィールから視線を外して呟いた。
「ところでワタシは、いつになったらお弁当を食べられるのかしら」
「なんだ、エドナも食べたいの我慢してたんだ」
「お黙りなさい。食べ物を前に、待たされるのが嫌いなだけよ」
スレイに言われたのは図星だったのか、エドナは頬を赤らめてそっぽを向いた。
「エドナ様、よかったらおひとついかがですか」
アリーシャがサンドウィッチの入ったかごをエドナの前に差しだすと、エドナは一つ手にとって頬張った。
「うん、美味しいわね。これはなんのお肉なの」
「それは鴨のローストです」
「そう、気に入ったわ」
「シェフにもそのようにお伝えしておきますね」
アリーシャがうやうやしく答えると、スレイが目を輝かせて声を張りあげた。
「ホント、旨いよ。ミクリオもサフィールさんも一緒に食べよう」
ミクリオは苦笑して、サフィールは少しためらったが、思い切ったように手を伸ばした。
「うん、旨い」
「これは美味ですね。調理もさることながら、素材が素晴らしい」
「お口にあったようでよかった」
三人の感想を聞いて、アリーシャは嬉しそうに微笑んだ。
「ご謙遜を、さすがはアリーシャ姫です。おもてなしの心をわかっていらっしゃる」
「このお弁当を用意したのは私ではなくて、うちのシェフなのだ。だから……」
「そのシェフがこれだけのものをご用意されたのは、アリーシャ姫の人柄あってのことだと思いますがね」
「そ、そうか。ありがとうサフィール殿」
心なしかうわずった声で、アリーシャが礼を言ったのをエドナは聞き逃さなかった。
「アリーシャ、アナタいま声が裏返ったわね」
「ま、まさか。エドナ様……」
「ワタシが聞いていないとでも思ったの。甘いわね。罰としてアナタの分のサンドウィッチを一つよこしなさい」
そう言ってアリーシャの手からサンドウィッチをひったくって頬張ったエドナを、ミクリオがため息混じりで眺めていた。
「しかしなんとも不思議な光景ですね」
次々に消えていくサンドウィッチを眺めていたサフィールが感嘆の声をあげた。
「え、なにが」
スレイは慌ててテーブルについている仲間を見渡した。彼の目には美味しそうにサンドウィッチを食べ続けている仲間たちが映っている。
「天族が見えないと、このサンドウィッチはどうなってるの」
「そうですね。何もない空間にまるで吸い込まれているようにサンドウィッチが消えていくように見えてますね」
「そうだな。私もお声が聞こえるだけなので、サフィール殿の話には共感する部分があるよ」
「え、じゃあアリーシャにもサンドウィッチが消えてるように見えるの」
「ああ。なかなか見られるものではないから、かなり興味深いものがあるな」
「ちょっと、アナタたちさっきからなにじろじろ見ているのよ。イヤラシイわね」
サフィールとアリーシャの言葉を聞いたエドナが、憤慨したように声を荒げて人間たちの会話に割って入ってきた。
「も、申し訳ありません、エドナ様」
「女性の方でいらっしゃいましたか、失礼しました」
「気をつけなさいよね。……っとにもう」
ぶつぶつと文句を言いながらサンドウィッチをかじるエドナを見ながら、スレイはしみじみと呟いた。
「へえ……。なんかうらやましいな。そんなものが見れるなんて」
「スレイも見ていただろう」
不思議そうにアリーシャが尋ねると、ミクリオが肩をすくめてスレイの代わりに答えた。
「無理だったろうな。あの頃のスレイには周りを見る余裕がなかったからね」
「余裕があっても見ていたかどうかわからないわよ」
身もふたもないことを言って、エドナは一つだけ残っていたベーコンとザワークラウト(キャベツの酢漬け)のサンドウィッチを手に取った。
「あ、エドナ。それ最後のベーコン……」
「あら食べたかったの。ならちゃんと手元に置いておかなきゃダメじゃない」
エドナに冷たくあしらわれ、スレイはがっかりと肩を落とした。
「あの……スレイ殿。もしよろしければ、これを……」
スレイのあまりの落胆ぶりに、見かねたサフィールが自分の持っているサンドウィッチを差し出すと、スレイは笑って応じた。
「ううん、いいよ。ありがとうサフィールさん」
少し残念そうに首を横に振るスレイを見て、アリーシャがなにかを思い出したように両手を胸の前でぱんっと叩いた。
「そういえばうちのシェフがデザートも入れたと言っていた。スレイ、少々待ってくれないか」
「ホントに。ありがとうアリーシャ」
目を輝かせるスレイに微笑んでみせると、アリーシャはバスケットからデザートの入った包みを取り出した。
「あら、デザートもあるのね。気が利いてるわね」
デザートの存在に気づいたエドナの目に妖しい光が宿った。
「まだ食べる気なのか」
「うるさいわね、ミボ。ワタシは見かけによらず大食いなのよ」
そんな天族二人のやりとりを笑って聞きながら、包みを開いたアリーシャの表情が一瞬で変わった。
「どうしたの、アリーシャ」
そのまま凍りついたように固まってしまったアリーシャを心配したスレイが声をかけると、騎士姫は振り向いて助けを求めるような目でスレイを見た。
「……どうしよう、スレイ……」
アリーシャの困ったような顔を見て不思議に思ったスレイは、包みの中を覗き込むと小さな叫び声をあげた。
「どうした、スレイ」
「これ……」
スレイはそう言うと包みの中身を取りだして皆に見せた。
「あ……」
「それ……」
「まるごと入ってる……」
スレイの左手に乗っているのは皮のむかれていないまるごとそのままの果物だった。
「どうしよう……」
もう一度呟くと、アリーシャはすがるような目でスレイを見た。
「大丈夫、任せて」
スレイはうなづき、右手に同じ包みの中に入っていたナイフを握ると、真っ赤な果物の皮をするするとむき始めた。
彼が皮をむいた中からは、みずみずしくも真っ白い果実が内なる姿を覗かせている。
「へえ……上手なんですね」
「だろ。これでも村にいた頃は、一人でなんでもやってたんだから」
「それは君だけじゃないだろう……」
ミクリオの呟きをあえて聞き流して、スレイは皮をむき終えた実を四つに割って皿に乗せた。
「さ、食べて」
皿に乗せられたみずみずしい果実を前にスレイが促すと、同席している者たちは各々で手を伸ばして、しっとりと濡れた実を掴んだ。
その実は一口かじると歯切れのよい音を立てて口の中に転がりこみ、噛みしめると甘酸っぱい果汁が舌の上に広がった。
「美味ですね」
サフィールがさくさくといい音を立てながらうなづいた。
「これ、確かスレイが森の中で食べてた実じゃないの」
「えっ、あの森のことを見てたの。恥ずかしいな」
エドナに指摘されて、スレイは照れたように頬を赤らめて右手で頭を掻いた。
「森……ですか」
「うん。王都に戻るときに通ったんだ。オレに見えなかっただけで、エドナとミクリオは一緒だったんだよな」
「見えなかった、とは」
サフィールに尋ねられて、スレイは少し深刻な顔で話し始めた。
「実はオレ、戦場で災禍の顕主に挑んで負けたときに、霊応力をなくしたんだ」
「本当ですか」
サフィールが驚いたように目を丸くした。
「本当だ。私の家に着いたとき、スレイは同行している天族に気づかなかった」
「うん、そこそこの味ね」
「光栄です」
アリーシャが嬉しそうな顔をすると、エドナが頭をあげた。
「そこそこなのよ。あのメイドの入れたお茶に比べたら、まだまだなんだから」
「すみません、エドナ様」
「慢心してはダメよ。邁進なさい」
「はい、肝に命じます」
厳しい言葉を投げかけるエドナを前に、うなだれるアリーシャを見かねたスレイが割って入った。
「エドナ、アリーシャは今日初めて紅茶を入れたんだから、そこまで言わなくてもいいじゃないか。充分美味しいんだし」
「……はあ、スレイも全然ダメね」
「え」
「ちょっとはツッコミなさいよ、もう」
「あ……」
わざとらしくため息をつくエドナを見て、スレイは初めて気づいたらしく、ぱっと目を見開いた。
「慢心(マンシン)と邁進(マイシン)か。やれやれ」
ミクリオが呆れたように肩をすくめる。
そのやりとりの全てを知ることができないサフィールが、心配そうに尋ねてきた。
「どうかされたのですか、アリーシャ姫」
「いや、今天族に"慢心するな、邁進しなさい"と言われてしまって……」
「ほう、上手いことおっしゃいますね。さすが天族」
「ははははは」
スレイが苦笑し、ミクリオが空を仰ぐなか、エドナが満足そうに一人うなづいた。
「よくわかっているじゃない。霊応力がないのが残念だわ」
「はは……。サフィールさん、エドナ……地の天族が褒めてくれてるよ」
「おお、身に余るお言葉をいただき幸福至極に存じます」
「これからも精進しなさい。期待してるわよ」
エドナの言葉をそのままスレイが伝えると、サフィールはかしこまってひれ伏しそうな勢いでテーブルに額を押しつけた。
「なんという勿体ないお言葉。この胸に刻みつけておきます」
そのあまりの大仰さにさすがのエドナも若干の気持ち悪さを感じたらしく、サフィールから視線を外して呟いた。
「ところでワタシは、いつになったらお弁当を食べられるのかしら」
「なんだ、エドナも食べたいの我慢してたんだ」
「お黙りなさい。食べ物を前に、待たされるのが嫌いなだけよ」
スレイに言われたのは図星だったのか、エドナは頬を赤らめてそっぽを向いた。
「エドナ様、よかったらおひとついかがですか」
アリーシャがサンドウィッチの入ったかごをエドナの前に差しだすと、エドナは一つ手にとって頬張った。
「うん、美味しいわね。これはなんのお肉なの」
「それは鴨のローストです」
「そう、気に入ったわ」
「シェフにもそのようにお伝えしておきますね」
アリーシャがうやうやしく答えると、スレイが目を輝かせて声を張りあげた。
「ホント、旨いよ。ミクリオもサフィールさんも一緒に食べよう」
ミクリオは苦笑して、サフィールは少しためらったが、思い切ったように手を伸ばした。
「うん、旨い」
「これは美味ですね。調理もさることながら、素材が素晴らしい」
「お口にあったようでよかった」
三人の感想を聞いて、アリーシャは嬉しそうに微笑んだ。
「ご謙遜を、さすがはアリーシャ姫です。おもてなしの心をわかっていらっしゃる」
「このお弁当を用意したのは私ではなくて、うちのシェフなのだ。だから……」
「そのシェフがこれだけのものをご用意されたのは、アリーシャ姫の人柄あってのことだと思いますがね」
「そ、そうか。ありがとうサフィール殿」
心なしかうわずった声で、アリーシャが礼を言ったのをエドナは聞き逃さなかった。
「アリーシャ、アナタいま声が裏返ったわね」
「ま、まさか。エドナ様……」
「ワタシが聞いていないとでも思ったの。甘いわね。罰としてアナタの分のサンドウィッチを一つよこしなさい」
そう言ってアリーシャの手からサンドウィッチをひったくって頬張ったエドナを、ミクリオがため息混じりで眺めていた。
「しかしなんとも不思議な光景ですね」
次々に消えていくサンドウィッチを眺めていたサフィールが感嘆の声をあげた。
「え、なにが」
スレイは慌ててテーブルについている仲間を見渡した。彼の目には美味しそうにサンドウィッチを食べ続けている仲間たちが映っている。
「天族が見えないと、このサンドウィッチはどうなってるの」
「そうですね。何もない空間にまるで吸い込まれているようにサンドウィッチが消えていくように見えてますね」
「そうだな。私もお声が聞こえるだけなので、サフィール殿の話には共感する部分があるよ」
「え、じゃあアリーシャにもサンドウィッチが消えてるように見えるの」
「ああ。なかなか見られるものではないから、かなり興味深いものがあるな」
「ちょっと、アナタたちさっきからなにじろじろ見ているのよ。イヤラシイわね」
サフィールとアリーシャの言葉を聞いたエドナが、憤慨したように声を荒げて人間たちの会話に割って入ってきた。
「も、申し訳ありません、エドナ様」
「女性の方でいらっしゃいましたか、失礼しました」
「気をつけなさいよね。……っとにもう」
ぶつぶつと文句を言いながらサンドウィッチをかじるエドナを見ながら、スレイはしみじみと呟いた。
「へえ……。なんかうらやましいな。そんなものが見れるなんて」
「スレイも見ていただろう」
不思議そうにアリーシャが尋ねると、ミクリオが肩をすくめてスレイの代わりに答えた。
「無理だったろうな。あの頃のスレイには周りを見る余裕がなかったからね」
「余裕があっても見ていたかどうかわからないわよ」
身もふたもないことを言って、エドナは一つだけ残っていたベーコンとザワークラウト(キャベツの酢漬け)のサンドウィッチを手に取った。
「あ、エドナ。それ最後のベーコン……」
「あら食べたかったの。ならちゃんと手元に置いておかなきゃダメじゃない」
エドナに冷たくあしらわれ、スレイはがっかりと肩を落とした。
「あの……スレイ殿。もしよろしければ、これを……」
スレイのあまりの落胆ぶりに、見かねたサフィールが自分の持っているサンドウィッチを差し出すと、スレイは笑って応じた。
「ううん、いいよ。ありがとうサフィールさん」
少し残念そうに首を横に振るスレイを見て、アリーシャがなにかを思い出したように両手を胸の前でぱんっと叩いた。
「そういえばうちのシェフがデザートも入れたと言っていた。スレイ、少々待ってくれないか」
「ホントに。ありがとうアリーシャ」
目を輝かせるスレイに微笑んでみせると、アリーシャはバスケットからデザートの入った包みを取り出した。
「あら、デザートもあるのね。気が利いてるわね」
デザートの存在に気づいたエドナの目に妖しい光が宿った。
「まだ食べる気なのか」
「うるさいわね、ミボ。ワタシは見かけによらず大食いなのよ」
そんな天族二人のやりとりを笑って聞きながら、包みを開いたアリーシャの表情が一瞬で変わった。
「どうしたの、アリーシャ」
そのまま凍りついたように固まってしまったアリーシャを心配したスレイが声をかけると、騎士姫は振り向いて助けを求めるような目でスレイを見た。
「……どうしよう、スレイ……」
アリーシャの困ったような顔を見て不思議に思ったスレイは、包みの中を覗き込むと小さな叫び声をあげた。
「どうした、スレイ」
「これ……」
スレイはそう言うと包みの中身を取りだして皆に見せた。
「あ……」
「それ……」
「まるごと入ってる……」
スレイの左手に乗っているのは皮のむかれていないまるごとそのままの果物だった。
「どうしよう……」
もう一度呟くと、アリーシャはすがるような目でスレイを見た。
「大丈夫、任せて」
スレイはうなづき、右手に同じ包みの中に入っていたナイフを握ると、真っ赤な果物の皮をするするとむき始めた。
彼が皮をむいた中からは、みずみずしくも真っ白い果実が内なる姿を覗かせている。
「へえ……上手なんですね」
「だろ。これでも村にいた頃は、一人でなんでもやってたんだから」
「それは君だけじゃないだろう……」
ミクリオの呟きをあえて聞き流して、スレイは皮をむき終えた実を四つに割って皿に乗せた。
「さ、食べて」
皿に乗せられたみずみずしい果実を前にスレイが促すと、同席している者たちは各々で手を伸ばして、しっとりと濡れた実を掴んだ。
その実は一口かじると歯切れのよい音を立てて口の中に転がりこみ、噛みしめると甘酸っぱい果汁が舌の上に広がった。
「美味ですね」
サフィールがさくさくといい音を立てながらうなづいた。
「これ、確かスレイが森の中で食べてた実じゃないの」
「えっ、あの森のことを見てたの。恥ずかしいな」
エドナに指摘されて、スレイは照れたように頬を赤らめて右手で頭を掻いた。
「森……ですか」
「うん。王都に戻るときに通ったんだ。オレに見えなかっただけで、エドナとミクリオは一緒だったんだよな」
「見えなかった、とは」
サフィールに尋ねられて、スレイは少し深刻な顔で話し始めた。
「実はオレ、戦場で災禍の顕主に挑んで負けたときに、霊応力をなくしたんだ」
「本当ですか」
サフィールが驚いたように目を丸くした。
「本当だ。私の家に着いたとき、スレイは同行している天族に気づかなかった」