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登山教室Serow(セロー)のガイド日記

日々のガイドの記録です。

例年は6月半ば以降の山行企画は雨天中止もしくは他のエリアへの転戦が多くなりますが、今年は関東甲信の梅雨入りはまだ先の雰囲気だったので、大菩薩の名渓である大黒茂谷をご案内してきました。

 

大木の橋。せり出した岩をうまく回避して渡ります。

 

緑の美しい苔に覆われた滝。ある程度の厚みに成長した苔は、フェルトソールがよく食いついてくれるので安心感があります。

 

久しぶりに大菩薩の山頂を踏みました。たぶん最後に来たのは高校生の頃。

 

下山したら大菩薩の湯で山行の疲れを癒します。

 

大黒茂谷の魅力は適度な水量、綺麗な緑色の苔を纏った渓相、藪漕ぎ無しで稜線に上がれる快適さでしょうか。一方で林道歩きが長いので体力はある程度必要です。車が2台ある場合は1台を大菩薩の登山口にデポして、もう1台で入渓口に繋がる林道ゲート前に停めると楽ですね。

瑞牆山の登山道を歩くこと2時間。山頂近くのマルチピッチクライミング「夢のカリフォルニア」と「トムソーヤの冒険」をご案内してきました。

 

夢のカリフォルニア1ピッチ目。美しいクラックとフレークが続く、素晴らしいルートです。アプローチが遠くても行く価値があります。

 

1ピッチ目を登ってくるお客様。

 

 

夢のカリフォルニア2ピッチ目。出だしから4〜5番サイズが続きます。午前中に登り終わったので、午後から「トムソーヤの冒険」へ。

 

トムソーヤの冒険。瑞牆山の山頂へダイレクトに抜ける気持ちの良いルートです。この写真は先行パーティーの方に撮影して頂きました。

 

私とお客様。こちらの写真も先行パーティーの方が撮影。ありがとうございます。

5月末になって雨模様のお天気が続きますが、雨の合間に三ツ峠山のマルチピッチクライミングをご案内してきました。

 

今日の三ツ峠山屏風岩は貸切でした。

 

まずは中央カンテに挑戦。岳ルート(10a)や中央カンテダイレクト(10b)などを登ったことがあるお客様でも、意外と中央カンテは登ったことが無かったりします。グレードは簡単ですが、登っておくべきクラシックルートの1本ですね。

 

V字ロックを懸垂下降して、中央カンテの3ピッチ目のビレイポイントに降り立ち、そこから「岳2(11a)」を登りました。途中の1手が少々悪いです。

 

右フェースの簡単なラインを登って、三ツ峠山山頂を経由して下山。残念ながら富士山は見れませんでしたが、雨に降られることもなく、乾いた岩が登れたのでヨシとしましょう。

 

遠方からお越し頂いたお客様を小川山のマルチピッチクライミング「烏帽子岩左稜線」をご案内してきました。

 

気持ちの良い岩稜クライミングが楽しめます。

 

振り返ると後ろに屋根岩。

 

最後のチムニー。これまで何度も烏帽子岩左稜線をガイドしてきましたが、ここのチムニーで苦戦する方は多いです。ワイド系の動きは基本的にジムで練習出来ないことが多いので、その場で何とかするしかないですね。

週末は残雪の剱岳、源次郎尾根をご案内してきました。

 

1日目は劔御前小舎まで。ここから眺める夕日はいつ見ても綺麗なのですが、今の時期は水を張った水田に反射する夕日が一段と美しいのです。今回の劔御前小舎は私を含めてガイドが8人も泊まっていました。

 

劔周辺の積雪は概ね例年通りですが、場所によって多かったり、少なかったりします。

 

劔御前小舎を出発して6時間で剱岳に登頂。剱岳が初めてのお客様もいらっしゃり、初登頂の感動を噛み締めていました。

 

先日頂いた行動食。パワーバーではなく、パウバー。MADE IN NISEKO。40gで160kcalと重さに対して効率の良いエネルギー補給が出来ます。しっとりした食感で疲れていても食べやすいと感じました。試したことはないのですが、寒冷地でも凍りにくい仕様だそうです。

 

天気予報によると翌日の月曜日は荒天とのことなので、日曜日はみくりが池温泉まで下山。劔御前小舎〜源次郎尾根〜剱岳〜平蔵谷〜劔御前小舎〜雷鳥沢〜みくりが池温泉間の行動時間は概ね12時間、累積標高差2200m。この行動に耐えられるお客様はさすがだと思います。

 

みくりが池温泉は朝8〜9時の清掃時間以外はいつでも入り放題。食事は下界の旅館と変わらないメニューが出ます。何度泊まっても良いところですね。

ブラックダイヤモンドの軽量ピッケル「ベノムLT」と軽量シャベルの「トランスファーLT」のブレード部分は組み合わせて使うことが出来ます。軽量×軽量を組み合わせた、究極の軽量化を実現出来る組み合わせです。

 

左はトランスファーLTのブレード(約200g)。右はベノムLT(240g)。スコップとしても使えて、ピッケルとしても使えて合計の重量は440gというのは画期的な軽さです。

 

こんな感じで組み合わせて使います。トランスファーLTのシャフト部分をベノムLTで代用する仕様です。これでトランスファーLTに本来付いているシャフト部分を省略して約200gの軽量化が出来ます。

 

実際に使ってみましたが、残雪期のテント場の整地作業程度なら十分こなせます。シャベルでブロックを切り出して防風壁まで作ろうとするなら大変ですが、雪面を平らにして2〜3人用テントを設営する程度の作業なら問題ありません。1つ気をつけなければいけないのは、ベノムLTのピック部分(黄色の丸印)。体の方にピックが向いているとウェアを横一文字に切り裂くことになります。私はテント場の整地作業中に実際に切り裂きました。

 

ベノムLTのピックは非常に鋭く作られています。アルミピッケルは軽量ゆえに、ピックを鋭くしておかないと硬い雪面に刺さりにくくなります。シャベルのシャフトとして実際に使う際には、ピックカバーを装着して保護したほうが良いです。

 

登山用品全般に言えることですが、本来は1つの装備品に複数の機能を持たせないほうが良いことが多いです。

 

「あれも出来ます」「これも出来ます」「こんな使い方も出来ます」

 

こういう装備は1つ1つの機能性が落ちたりします。しかしながら、機能性が多少落ちることは承知の上で、例えば軽量化を優先するために1つの装備に複数の機能を持たせる使い方をする時があります。これに関しては何が正解、不正解ということはありません。その装備のメリットとデメリットをよく理解して、自分でよく考えて選ぶ、というのが大切ですね。

撮影のガイドで劔へ。オリンピックのフリースタイルスキーのメダリストであり、1児の母でもあるプロスキーヤー、小野塚彩那さんが剱岳から滑走に挑戦するプロジェクト「MomentalProject剱岳」に加えてもらいました。

 

剱岳の山頂を目指す小野塚さんとガイドの松本省二さん。そして一瞬の瞬間も見逃さない撮影チーム。小柄な体格ながら180cmを超える板を使いこなし、ギリギリまで板を下に向けた状態で突っ込んでいく小野塚さんの滑りは「すごい」としか言いようがない滑りでした。まさに魂が震えるような滑りを目の前で見ることが出来ました。

 

3日間の撮影を終えて室堂へ下山。雷鳥沢からの登り返しで見かけた足に管理タグがついた雷鳥のオス。「あかおくん」という名前が付いているらしい。「みかんちゃん」というメスとペアらしいのだが今日は見当たらず。ちょうど毛の生え替わり時期ですね。

 

みくりが池温泉の喫茶みくりへ立ち寄ってランチタイム。

 

えんま様のホットピザのハーフサイズとコーヒーセットを注文。

 

ピザソースの辛さはお好みで選べます。

 

白玉ぜんざいも注文。これは去年食べて美味しかったのでリピート。

 

劔の山頂で撮影した今回のメンバー集合写真。中身の濃い3日間でした!また声掛けてください!

GW中盤は前穂高岳北尾根へ。

 

涸沢小屋の生ビールと前穂高岳北尾根。小屋に早く到着した時の楽しみです。

 

翌日は朝4時に涸沢小屋を出発すると、既に5・6のコルに向かうパーティーのヘッドランプがチラホラ。途中で渋滞になるかと思われましたが、途中でラインを変えて先行パーティーを追い抜き、3峰の時点ではトップになりました。(厳密に言うと我々の前に若い単独の方が1名いましたが、安定感のあるクライミングと、素晴らしいスピードで登っていかれました。)

 

上高地に12時に下山出来たので、白樺荘で信州牛ビーフカレーを頂きました。よく煮込まれた、とろけるような信州牛が良い味を出しています。

 

白樺荘のテラス席から眺める穂高。つい数時間前まであそこに居たのだと思うと感慨深いですね。

GW前半の第二弾は穂高連峰のコブ尾根へ。

 

GWの名物、鯉のぼり。

 

翌日は朝4時に岳沢小屋を出発。1つ目のコブはスタンディングアックスビレイでお客様をロワーダウン。

毎年、この場所でボラードで懸垂した痕跡があるのですが、割り箸や木の枝で補強してあるのを見かけます。おそらくボラードが壊れると思って補強しているのだと思います。初めてボラードで懸垂する時に怖い気持ちがあるのは理解出来るのですが、補強で使っている割り箸や木の枝でロープが滑って上方向にスッポ抜けることがあるので、ある程度はロープがボラードに食い込んでくれた方が良いです。

 

2つ目のコブ。

 

そしてコブ尾根の頭へ。ジャンダルムがすぐ近くに見えるのですが、雪のコンディションによっては下降で時間が掛かる可能性があるのでジャンはパスして天狗のコルから岳沢に下山。

 

14時過ぎには上高地へ下山。少し時間があったので、五千尺ホテルのカフェでスイーツ。

 

信州ふじりんごのアップルパイとラムレーズン添え。ボリュームも味も素晴らしいです。

 

今シーズン最初の立山へ。当初は鹿島槍ヶ岳東尾根に行く予定でしたが、一ノ沢の頭に行く前に暴風になってしまったので引き返して立山へ入山。翌日は龍王岳東尾根に変更しました。

 

雷鳥沢キャンプ場の夕陽。ここに泊まるのは何年ぶりでしょうか?最後に泊まったのは10年以上前だと思います。

 

とりあえず乾杯。日が出ていれば雪上キャンプは暖かくて快適です。

 

翌日は龍王岳東尾根へ。まだまだ積雪豊富な龍王岳東尾根。

 

この時期は岩稜と雪稜が交互に出てくるので飽きません。

 

そして山頂。体力のあるお客様だったのでかなり早いペースで登頂出来ました。

 

時間も余ったことだし、せっかくなので雪の大谷を眺めてから帰りました。今年は14mだそうです。例年よりは少なめですね。