3分読書、読んで頂き、ありがとうございます。

これまで書いた作品も、読んで頂ければと思います。

地球の選択 - 二つの未来 

では、「もうひとりの私・影の訪問者」を読んでみてください。この作品は3話は構成となります。今回は第1話となります。

爆 笑爆笑爆笑


陽介は、いつも通りの朝を迎えていた。忙しい一日が始まる前の、ほんの少しの静けさ。しかし、その日、彼の日常は一変した。


会社に出社後、同僚に声をかけられた。

「陽介、昨日はどうしたの? あそこで何してたの?」友人の直也が、いきなり尋ねてきた。陽介には、どういう意味かさっぱりわからなかった。


「昨日は仕事終わりに家に直帰したよ。どこで何をしてたって?」


直也は不思議そうな顔をした。「おかしいな、昨日、街外れのカフェで君を見たんだけど。挨拶したのに、全く無視されて…。」


陽介は冗談だと思った。でも、その後も似たような話が増えていく。別の友人、同僚、さらには彼の知らない人からも。彼らの話に共通するのは、陽介がいるはずのない場所で見かけ、声をかけても無視されたということだった。


恐怖が彼の心を侵食し始めた。これは一体何なのか? 自分には分身がいるのか? それとも、誰かが彼に成りすましているのか?


陽介の心は、これらの問いに答えを見つけるために奔走した。インターネットで「自分の分身」や「ドッペルゲンガー」について調べ始めると、彼の疑問はさらに深まるばかりだった。ドッペルゲンガーとは、自分とそっくりの別人を指す言葉であり、多くの文化や伝承で様々な解釈がなされていることを知った。特に心を掴んだのは、自分のドッペルゲンガーに遭遇すると不幸や死に直面するという都市伝説だった。



深夜、目を閉じようとしても、心は静まらず、彼の頭の中はドッペルゲンガーの話でいっぱいだった。「もし、これが真実なら、自分が目撃されたという場所で、本当にもう一人の自分が歩いているのか? そして、その存在に遭遇したら、本当に不幸が訪れるのか?」


怖れに駆られながらも、陽介はさらに調べを進めた。世界中の伝説や物語には、自分の分身に遭遇することの重大さが語られていた。中には、分身を見た人間がその後、奇怪な事故に遭遇したり、病に倒れたりする話もあった。しかし、そういった話の多くは、具体的な証拠や詳細が不足しており、真実かどうかは定かではなかった。


だが、陽介の心の奥底では、一つの恐ろしい考えが渦巻いていた。もし、このドッペルゲンガーが自分自身の暗い面を現しているのだとしたら、その存在と対峙することは、自分自身の内面と向き合うことを意味するのではないか。そして、もし自分がその対峙に耐えられなかったら、都市伝説の言う「不幸」が自分を待っているのではないか。


このような恐怖に苛まれながらも、陽介はもう一人の自分を探す決意を固めた。自分のドッペルゲンガーに遭遇することで、都市伝説の真偽を確かめ、何よりも自分自身の恐怖に立ち向かいたいと思ったのだ。しかし、その決意が彼をどんな運命に導くのか、その時点ではまだ誰にもわからなかった。


ある夜、勇気を出して、友人たちが「もう一人の陽介」を目撃したというカフェへ行ってみることにした。街灯の光がぼんやりと照らす中、カフェの窓から中を覗くと、確かに自分がいた。でも、それは彼ではない。そこにいるのは、彼と瓜二つの別人だった。



陽介は凍りついた。その「もう一人の自分」は、彼を見て微笑んだ。それは、知っているはずのない陽介の秘密や思い出を共有するかのような、深い理解を含んだ微笑みだった。


この瞬間、陽介は真実に気づいた。彼の世界には、もう一人の「陽介」が存在する。そして、その存在は彼の日常だけでなく、彼の理解をも超えた何かを意味していた。


混乱と好奇心が陽介を突き動かし、彼はカフェの扉を押し開けた。中に入ると、空気が一瞬、静まり返ったように感じられた。カフェの客たちは、二人の陽介が対面するこの珍しい光景に、息を呑んでいた。


「もう一人の陽介」は立ち上がり、陽介に向かって歩き出した。彼の動きには、どこか、何か分からないが、普通ではないという風に思えた。陽介は、この瞬間が来ることを、どこかで予感していたような気がした。


「あなたは…私?」陽介が尋ねた。


その疑問に対して、「もう一人の陽介」は頷いた。「私は、あなたと同じ陽介だ。だけど、違う世界から来た。」彼の声には、陽介自身のものとは微妙に異なる響きがあった。


「違う世界?」陽介は目を見張った。「どういうこと?」


「私たちの世界は、無数に存在する。私はある理由で、私の世界からここへと越境してしまったんだ。そして、君を見つけた。」


「もう一人の陽介」は、彼らが出会ったことの意味を語り始めた。二つの世界が交差する点で、彼らは互いに出会う運命にあったのだと。彼はこの異世界での経験を通して、自分自身とこの世界について多くを学んだと語った。そして、彼らの出会いが、ただの偶然ではなく、何か特別な目的を持っていることを示唆した。


陽介はこの全く新しい概念に圧倒されながらも、徐々に興奮を覚え始めた。この不思議な遭遇が彼に新しい視野を開くことになるとは、まさに予想外の展開だった。彼らはその夜、カフェで長い時間を過ごし、互いの世界について話し合った。それぞれの世界での生活、感じていること、夢について。


この出会いは、陽介にとって新たな始まりを意味していた。異なる世界の自分との遭遇は、彼の人生に深い影響を与え、これからの人生において、何が可能であるかの枠組みを根底から変えることになるだろう。