今日は、母と妹の3人で
矢田のお地蔵さん
で有名な
矢田寺(金剛寺)
へ行って来ました。
矢田寺のお地蔵様は、手の印相が特徴的で
左手に宝珠を載せて
右手は胸の前で第一・二指を丸めて合わせ
ています。
普通、お地蔵様が持っている錫杖を持たないこの印相から
矢田型地蔵
と呼ばれています。
さて、このお地蔵様にはとても素敵なお話が
矢田地蔵縁起
という絵によって伝わってます。
今回は、この矢田地蔵縁起を観光ガイドさんのお話から紹介したいと思います。
先ず、登場人物は
閻魔王
小野篁(おののたかむら)
矢田寺の満慶(まんけい)こと満米(まんまい)上人
地蔵菩薩
春日大社の神様
です。
閻魔王といえば、恐ろしい形相で人々の悪事を裁いていくというイメージですが、実は、閻魔王は人々の裁きにたいそう心を痛めておられました。
「あまりにも地獄行きの人が多すぎるが、果たして私の裁きは間違っていないだろうか?」
と少しノイローゼになっていたそうです。
そこで、小野篁に、なんとかこの心労を取り除くことができないものかと相談しました。
小野篁は、昼は嵯峨天皇に、夜は閻魔王に仕えるという不思議なお方です。
篁は、矢田寺の満慶上人(満米上人)こそがふさわしいと思い、一緒に閻魔様のお屋敷を訪れました。
篁は、閻魔王に菩薩戒を受けるように勧めました。
そして、閻魔王はその勧めを受けて、満慶上人の厳しい修行に耐えて、菩薩戒を授かることができ、ノイローゼも収まりました。
見事に閻魔王の悩みを取り除いた満慶上人は、閻魔王から
「お礼に何かをしたい」
と言われました。
満慶上人は
「私は一度も地獄を見たことがない。一度地獄を見てみたい」
と願い出ました。
閻魔王はその願いを聞き入れ、満慶上人は閻魔王に連れられ
阿鼻地獄(一番苦しい地獄)
に向かいました。
そして、満慶上人は
猛火の中で必死に衆生を救っておられる
地蔵菩薩
に出会いました。
阿鼻地獄に落ちたものは、現世での行いがあまりにもひどかったため、絶対に地獄から出ることができず、その苦しみがエンドレスに続くと言われています。
しかし地蔵菩薩は、そんな悪い行いをした人であっても、救おうとされていたのです。
その姿に心を打たれた満慶上人は
「是非、娑婆(現世)に来て、多くの人を救ってください」
と地蔵菩薩に頼みました。
しかし、地蔵菩薩は
「私は、地獄で苦しんでいる人を救わなければなりません。だからここを離れるわけには行きません。現世に戻ったら、人々に私と縁を結ぶように勧めなさい。そうすれば救ってあげることができます。その方法として私の姿をした仏像を彫りなさい。」
とおっしゃいました。
地獄から帰った満慶上人は、その地蔵菩薩を思い出すままに彫りますが、なにせ僧侶であり、仏師ではないためうまくいきません。
そのとき、雲に乗って4人の翁が現れました。
その翁は、春日大社の神様方でした。
春日四社明神は三日三晩のうちに地獄で出会ったお姿そのままに地蔵菩薩を彫り上げました。
その像を矢田寺のご本尊としておまつりしたのです。
また、満慶上人がためしに彫った地蔵菩薩は
「こころみの地蔵」
として同じく矢田寺にお祀りされています。
矢田地蔵縁起ではこの様子が、すべて素晴らしい絵で描かれています。