朝飯→インスタントビビンパ、ブタメン
昼飯→明太子スパゲティ(梅の木)
夜飯→ハンバーグ、タコブツ、ゆで卵
ドリンク→午後の紅茶 おいしい無糖、金麦糖質オフ500ml、金麦500ml
仕事→某書籍の編集、某アイドル雑誌&アダルト雑誌の入稿、某アイドル雑誌の編集
漫画→修羅の門
嗚呼、腹が減った。
朝からなんやかんやと仕事に忙殺され、ふと夕方16時をまわっていることに気付いた俺は、とにかく無性に腹が減っていた。
しかも、何やら予期せぬハプニングが続き、一向に自分の本来やるべき仕事に手をつけられず、なんだか色々と面倒臭くなっていたこともあり、現実逃避もしたかったのだろう。
飯を食べながらまったりできるトコ。
そういう場所を求めていた。
しかし、実は浅草橋周辺にはランチスポットは数あれど、まったりできるところはあまり多くない。
唯一、時の流れがゆったりとしている空間は、昔からここいらにあるであろういくつかの喫茶店だ。
ちなみに、俺にはほぼイキツケのようになっている喫茶店が二つあり、漫画を読みながらダラダラと飯を食いたい場合はどちらか片方に行くことにしている。
迷った。
正直、俺はこの時、ものすごく迷っていた。
どっちの店で明太子スパゲッティを食べるべきなのか!?
どーでもイイ、と思われるかもしれないが、なかなかどうして歯痒い問題なのだ。
片方は、麺が固めで、明太子もツブツブしていて、そして全体的にパサパサ感がハンパない。
どちらかというと、家で作って翌日まで放置し、パサパサになった冷えたスパゲッティのようなイメージか。
想像すると美味しくなさそうだが、実はコレ、すごくイイ。
かたや、もう一方は、同じく麺は固めなのだが、明太子が汁ベチャベチャ系で、全体的にチュルチュルしているわけだ。
どちらかというと、スープパスタに近いイメージかもしれないが、まぁさすがにそこまで汁だくではない。
なんとなくこちらが正解のような気もする上に、確かに麺のアルデンテ具合も良いのだが、いかんせん明太子がいかにもな感じの市販のソースっぽいところが引っかかる。
つまり、どちらにも選択されるだけの理由があり、どちらにも避けられるだけの理由もあるのだ。
ということで、俺は絶賛迷っていた。
それらの喫茶店は、一本の小さい道路を挟んで対角線上にある。
つまり、道のど真ん中で迷っていた。
そして、なんだろう、とにかくその時は直感的にチュルチュルを選択した……。
渇きよりも潤いを……。
どんっ。
こんな感じ。
イイ。
凄くイイ。
道を間違えてはいなかった。
直感は間違っていなかったんだ。
フル回転で迷走中の漫画「修羅の門」を読みながら、それでもジャンクな明太子スパゲッティの味に、どこか心が絆され、なんだか何でもウエルカムな気持ちになっていた。
しかし……。
食事中にまさかの事態が起こる。
よくわからないのだが、その時間帯にやって来ていた、よくわからない工事の人たちが、よくわからない機材のメンテナンスか何かを、突然俺の目の前で始め、そしてそのよくわからない機材が突然爆発っぽい感じになり、勢いよく機材の中の水がビシャビシャと噴き出してきたのだ!
現場のオッサンたちもパニック状態だが、客の俺はさらに意味がわからない。
彼らの会話を聞いていてもまったくさっぱり意味不明なのだが、とにかく床は水浸しだ。
まだ明太子の途中にもかかわらずの大惨事。
何をどうすべきかもわからないまま、彼らのパニック具合を眺めながら、ひとまず、スパゲッティを口にしていた。
しかし、状況はもはや、食事をゆっくり堪能するどころではない。
むしろ、工事する人たちの体臭やら、よくわからない噴き出した水の臭いやらで、店内の不快指数度はMAX状態に……。
どんっ。
爆発後、水浸しになった床を清掃する作業員を盗撮した一枚。
いや、コレ、色々無理でしょ。
何も食えんでしょ、実際。
しばらく嫌悪の目で彼らを見つめながらタバコをくゆらせていると、最も年長者らしきオッサンが突然こんなことを言い出した……。
「てか、俺、まだ次の現場が残ってるからもう行かなきゃなんだけど、任せていいかな?」
おまえが爆発の張本人だろーが!
と、孤独のグルメモードから、いつものノリツッコミモードに戻ってしまったので、ちょいちょいブレーキをかけておこう。
もとい。
やはり、そのオッサンはこの現場ではトップ的な存在らしく、若者作業員らは困惑するものの何の反論もできなかった。
カオスだ。
なぜ、俺は昼飯に出て、こんなカオスの渦中にいるのだろう。
もちろん俺にも次の現場はある……。
失敗だ。
これはもう大失敗以外の何ものでもない。
チュルチュルではなくパサパサにしておけば……。
そんな切なすぎる後悔を胸に秘めながら、付け合わせのサラダを胃袋にかっこみ、トボトボと事故現場を後にした。
もはや、若者もオッサンもどーでもイイ。
むしろ、あんなに悩んで選んだ明太子スパゲッティをほとんど味わうことなく店を後にしたことに後悔の念がつきまとっていた。
そういえば、どうしてスパゲティには、"スパゲティ"と"スパゲッティ"という、呼び名の違いがあるんだろう?
俺は、明らかにわけのわからない疑問を抱きながら、対角線上にあるパサパサパスタの喫茶店を羨ましそうに恨めしそうにいつまでもいつまでも眺めていた。
嗚呼、なんだか空腹だ。
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