優輝の街婚

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

カラン、カラン、カラン
「 マスター、お客さんの入りは どうですか~ 」
「 おう、実行委員、上々の入りで 猫の手も借りたい程 忙しいぜ 」
俺の名は 佐々木 優輝 現在、親の脛をかじってる 薬学部の四回生である
一人っ子の俺は 家業の薬局を継ぐ為
薬剤師を目指して ひたすら勉強に励んで来たが
此処最近 煮詰まってきたと言うか 息抜きを兼ねて
商店街で行なわれる 街婚イベントの 実行委員をかってでた次第である
「 優輝、実行委員として 一仕事 頼みたい事があるんだがなぁ 」
「 なんですか? マスター 頼みたい事って 」
「 あそこの 隅のテーブル席に居る 小柄な子の事なんだけど
           此処一時間ばかり 何か頼む訳でもなく
                  ずっとあそこに一人で座ったままなんだよ 」
「 せっかくの街婚なんだから
       誰か 話し相手を 捜してやっちゃ くれねーか 」
「 此処の男共は 誰も 声を掛けて無いんですか? 」
「 可愛い子なのに なんか 近づき難いオーラを 放ってるじゃねーか 」
「 そうですか~? 俺は別に感じないですが 」
「 とりあえず 声を掛けてみます 」
 ・ ・ ・
「 こんばんわ、実行委員の佐々木と申します 愉しんで貰えてますか? 」
「 ごめんなさい、来るんじゃなかったって 後悔してる所なの 」
「 え~ そんなに つまんないですか 」
「 いえ 私自身がつまらない人なの
         第一、今時の話題にまったく付いて行けなくて 」
「 一緒に来た友達は 積極的にパートナーを見つけて
       別行動で街婚を楽しんでるみたいだけど
              私はと言えば 此処で こうして 何やってんだか 」
「 ごめんなさい、帰ります 」
「 ち、ちょっと 待って貰えませんか? 」
「 このまま 貴女に帰られては
      実行委員としては 落ち込んでしまいます 」
「 今しばらく 僕に 貴女の時間を頂けるなら
             是非とも 此の商店街の見所を案内させて下さい 」
「 いえ、いいです 」
「 そんなこと 仰らず どうか お願いします 」
「 ふ~・・・ じゃあ 少しだけなら 」
「 有難うございます
     それでは 僕がお勧めする スペシャルを二つ程 ご案内します 」
「 宜しければ 御手を 」
彼女は素直に 優輝の差し出した手に 手を添え 立ち上がった
「 マスター、お勘定をおねがいしま~す 」
「 はい、街婚の割引チケットを使って頂いて 400円に成ります 」
「 ありがとうございます 又、何時でも御越しくださいね 」
「 マスター、後で又 顔を出します 」 「 おぅ 」
カラン、カラン、カラン、
優輝は彼女と手を繋いだまま 店を出ると アーケードの真ん中を歩きながら
「 あっ、未だ君の名前、聞いてなかったねっ 」
「 俺は 佐々木優輝 ○○大学の四回生 」
「 私の名前は 立浪恵 職業はボート・レーサー 」
「 ボート・レーサー? 」
「 あっ、ちょっと言い方がカッコよさげっ いわゆる競艇選手してま~す 」
「 へ~、競艇選手って収入が良いんじゃないの? 」
「 稼いでるのは 一部の一流選手だけよ 私の様なペイペイは
       一流目指して 寮で モータ整備やペラ打ちに明け暮れる毎日 」
「 結構、大変なんですねっ 」
優輝は商店の一画を指差し
「 此処は俺んち、
    あっ、もちろん余談で ご案内するスペシャルじゃないですよ 」
「 先ず ご案内したいのは あそこに見える 黄色い看板のお店です 」
優輝は彼女を連れて 店先に立つと
「 おいちゃ~ん、いもっこ 二つね~ 」
「 おお、優輝、どうした 息抜きにでも来たのか? 」
「 違うよ~
    この子に いもっこを薦めたくて 此処まで連れて来たんだぜ 」
「 そっか、いもっこ、二つだったな 」
「 はい、お待ちどうさん 」
「 立浪さん、先ずは 食べてみてよ 」
「 あっ、美味しい う~んとねっ 中に入ってるつぶつぶも良いし
           ソフトクリームなのに 本当に 焼き芋を食べてる感覚 」
「 中のつぶつぶは 乾燥焼き芋を細かくした物が入ってんだよっ 」
「 あっ、お支払いの方は? 」
「 街婚チケットを一枚頂けますか 」
「 優輝の分は 後で実費だからな 」
「 え~っ おいちゃん ケチな事言わないで 奢ってくれよー 」
「 だったら、がんばって もっと お客さんを連れてきな 」
「 俺だって 忙しいんだから
    おいちゃんの所だけ 贔屓する訳に行かないよー 」
「 小さい頃、お前のオムツを替えてやった恩を 忘れてやしねーだろう 」
「 そんなの 覚えてるわけ無いじゃん 」
「 ほ~ そんじゃ
    お前が隠し持ってる Hな本の隠し場所をばらされたくなけりゃ
                         がんばって 後5人は案内しろ 」
「 またまた そんな事 おいちゃんが知る訳無いだろ 」
「 お嬢さん、こいつ、見かけはシュッとしてカッコイイですが
         自室の野球グローブの下に H本を隠し持ってるんですぜ 」
「 わー、わーっ 」「 このおやじは突然 何言い出すんだっ 」
「 フフフッ 」
「 信用しないで下さいね ふかしなんですから 」
「 なに言ってやがる 本当の事だろ 」
「 わかった、分かりました、参りました、もう 黙ってて下さい 」
「 優輝君、で、真相はどうなの? 」
「 も~っ いじめないで下さいよ 」
「 さっ、次行きましょうか 次に 」
「 あっ、はい 」
手を繋いで商店街の外れの暗がりに近づくと
繋いでいる彼女の手に汗が滲む
「 あっ、大丈夫 決して怪しい所へは案内したりしませんから 」
「 ええ、さっきの会話のやりとりをからも 優輝君の事 信用してます 」
「 今からご案内したいのは 僕たちが作った 手作りの噴水なんです 」
「 へ~、大掛かりな物を作ったんですねっ 」
「 もちろん 仲間の中に専門家がいた 御蔭ですけどねっ 」
商店街を抜けて 少し歩いた所に有る公園に 噴水は有った
「 夜に成ると 仄かに輝くLED照明が自慢なんです 」
「 電源は昼間にソーラーパネルで蓄電して賄っています 」
「 派手過ぎない 色使いが素敵です 」
「 でしょ、」
「 将来 多くの恋人達のデートコースに成ればと思ってるんですがねっ 」
「 これならきっと 口コミで広がる事 間違い無しだと思います 」
「 そう言って頂けると なんとも 心強いですね 」
 ・ ・ ・
「 今日は どうも ありがとうございました 」
「 私、明日はレースに出なくては為らないので そろそろ宿舎に帰ります 」
「 そうなんですか 僕の方こそ 強引に連れ回したりして 」
「 此方の我が儘に お付き合い頂き 本当にありがとうございました 」
「 明日は どちらの方で レースが有るんですか? 」
「 ××競艇場で 午後二時からのレースに出る予定です 」
「 あの~ もし良ければ 応援に行ってもいいですか 」
「 それは 構いませんが
    レース前後に一般の方と会う事は 禁じられてますから 」
「 お相手出来なくても 構わなければ ぜひ 観戦にいらっしゃって下さい 」
「 ところで 地下鉄の駅は 何処か教えて頂けますか 」
「 は、はい 是非、駅の方まで見送らしてください 」
彼女を地下鉄の改札口まで案内した優輝は 思い切って、切り出した
「 あのー、えっと、もし よろしければ メアド交換してもらえますか 」
「 う~ん どうしょっかな 」
「 あっ、べつに もったいぶってる訳じゃないのよ 」
「 寮に帰れば 携帯は寮長に預けなきゃなんないから
                      寮にいる間は連絡取れないと思って 」
「 もし、寮内で携帯を使ってる所を 発見されでもすれば
                           退寮処分もありえるんです 」
「 きびしいんスね 」
「 ですから 
  外出時に此方から一方的に連絡する事ぐらいしかできないけど
                                  それでも いい 」
「 それでも構いませんから お願いします 」 ピッ!ピピッ!
「 それじゃ おやすみなさ~い 」
「 うん、気を付けてね また明日 」
・・・
翌日 優輝は街婚の横断幕をたづさえ
昨日と同じ実行委員とプリントされたTシャツを着ると 競艇場へと向った
初めて見る 競艇場は優輝にとって異世界であった
レースの開始時間に成ると
人々は大移動を開始し券買ホールは瞬く間に閑散とする
優輝は 恵のレース時間を見計らい
観客が券買ホールに帰って来るタイミングに
観戦デッキの最前列の鉄柵に街婚の横断幕を貼り付け
開始時間を待つ事にした
やがて 観戦デッキは人々で溢れ帰り
今や遅しとレースの開始を待ちわびる
場内アナウンスが流れ
大時計の針に合わせるように 小さなボートが
轟音を響かせ 水しぶきを上げながら
水面を跳ねるように幾つもの白波を立ててゆく
優輝は 黄色いジャケットのボートの動きに合わせるように
大きく手を振りながら 観客席前の通路を走り回った
観客の中にはそんな優輝の行動に向けて
怒鳴り散らしたり 怪訝な視線を送る者も居たが
優輝の耳には届かない
いよいよ 最終のストレートで恵のボートは二位に着いていた
ゴール直前、一位に着けていた青いジャケットが見る見る失速し
なんと 恵が一着でフィニッシュ!「 ヤッター 」優輝は大きくガッツポーズ
レースが終わり 引き上げる人々の中から
面識も無いおじさんに「 よかったなっ 」などと 声を掛けられもした
興奮冷めやらぬ体で 券買ホールに赴くと
中央に組まれたステージに集まった 人だかりが目に飛び込んできた
何事なのか分からないが
優輝は人垣を掻き分け中の様子を覗き込んでみると
司会者:「 今日の第五レースで 初めての勝利を飾った 立浪選手です 」
「 立浪選手、どうぞ こちらに 」
「 あら、あら、水も滴るいい女に? 」
「 あっ、すいません
    仲間内で水神祭と称して 水の中に放り込まれてしまって 」
「 立浪です、
  今日は皆さんに 沢山の応援を頂いて 初めて一着を取れました
   これからも がんばりますので 今後共どうぞよろしくお願いします 」
「 はい、それでは 立浪選手に何か質問が有れば受け付けます 」
「 はい、」「 はいっ、」
「 では そちらに いらっしゃる え~と、実行委員さん どうぞ 」
「 立浪選手、彼氏はいらっしゃるんですか 」
「 いえ、今の所 ボート一筋でがんばっております 」
「 よろしければ 是非 握手してください 」
「 はい いいですよ 」
握手をしようとステージに上がり 彼女に近づくと
彼女は小声で「 舟券、買った? 」
優輝は思わず「 残念、ハハハハッ 」と頭を掻いた
「 立浪選手、次のレースは何時なんですか 」
「 未だ新人ですから、オファーが有るまで分かりません 」
「 もし、要請が有れば
        事務局に問い合わせて頂ければ 分かると思います 」
其の日以来 優輝は何度と無く 事務局に電話を掛け
要約 彼女の出場レースを確認する事が出来た
今回、彼女に与えられた舞台は
優輝の街からは結構離れた 地方都市であったが
優輝は 前回同様に 横断幕を抱え 実行委員のTシャツを着込み
いくつかの電車を乗り継ぎ レース場へと向った
今日、恵はスタートダッシュで二位に付けていたのだが
向う正面の第一ターンの時、先行する艇の引き波を浴び 転覆してしまう
優輝の視界からは 様子が良く分からなかった為
レースが終わり
彼女が係員のボートに拾われるまでの間 身動き1つせず
ただ、彼女のケガだけを心配する 優輝の姿が有った
・・・
翌日、大学のキャンパスに居た、 ブーン、ブーン、ブーン
「 はい、優輝です 」
「 もしもし、薬屋さん、シップは有りますか? 」
「 あっ、ございますが どちらにお届けしましょうか? 」
「 いえいえ 取りに伺いますわ 」
「 恵さん、怪我は無かったんですか? 」
「 大丈夫、水に叩きつけられて 少々 打ち身っぽい感じだけです 」
「 それより 転覆して危険行為を犯したという事で
     暫くは出場停止に成っちゃって そっちの方が 痛いわ 」
「 じゃあ 暫くは時間が有るんだぁ 」
「 えっ、何の? 」
「 デート! デートする時間ですよ 」
「 ええ、まあ 」
「 じぁ、決まりっ ××駅の前で四時に 」
「 ずいぶんと強引なのね 」
「 だめですか? 」「 判りました ××駅前に四時ですね 」
 ・ ・ ・
 ・ ・ ・
えっ、これで終わりなのかって?
「 あなた~っ 」
 ・ ・ ・
と、言う訳
「 うん、今行く 」
 ・ ・ ・
 ・ ・ ・




( あとがき )
計画的恋愛事情の3と4は、とっ、としては
劇的な展開を模索した結果なんだけど
リア彼女に暗いとクレームを付けられてのファイブです








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                    ( どうしよう )


ザー ザー
勝則は理科室の窓から外を眺めながら
( 雨止まねぇな~ )
( かおっち、部活終わったかなぁ )
「 あ~、さっさと部室の掃除をやっつけよう 」
ガラッ
突然 薫が引き戸を開け
「 かっちゃん、どうしょう 」
薫は理科室の引き戸を握り締めるように
その場から少し身を乗り出し
「 かっちゃん ごめんね 」
「 あぅっ、ぅっ、ぅっ 」
「 かっちゃんに貰ったブローチを ヒック 」
「 ぅっ、ぅっ ブローチを失くして ヒック、ヒック 」
今にも壊れそうなガラス細工の様な薫
「 朝、家を出る時は確かに付けてたんだよっ 」
「 ヒック、ヒック 」
勝則は「 どこで? 」と漏れそうな言葉を飲み込み
( どうしよう どうしよう なんて言ったら )
頭の中では葛藤を繰り返すが
薫に掛ける言葉が ・ ・
なにか言葉にすれば詰問に成りそうで怖い
「 また作れば良い事じゃん 」
それ以上に思い浮かぶ言葉が出て来なかった
「 でもねっ かっちゃんから
     初めて貰ったブローチだもの 」
「 かっちゃんの想いが
     いっぱい詰まったブローチだもの 」
「 それを、それを失くしちゃったんだよ 」
・ ・ ・
「 そんなに 大切にしてくれてありがとう 」
「 でも、物は無くなっても気持ちは残ってるだろ 」
勝則は薫に近づき
引き戸を握り締めたままの右手を戸口からそっと解くと
其の手を両手で握り
「 ブローチが無くなった事より
      かおっちに泣かれる方が辛れぇよぅ 」
いつの間にか雨は上がり
夕日が泣き腫らした薫の頬を染めていた
勝則は通学鞄が置かれた机まで薫をいざない
鞄からタオルを取り出すと
「 じゃ~ん、拭き拭きタオル 」 と おどけて見せる
「 フッ、どこかで見たシーン 」
「 かっちゃん、ありがとう 」
「 少し落ち着いたら、帰ろ
          家まで送るからさ 」
「 うん 」

 

 

 






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               石オタとミス朝霧高校

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
                 ( 捻挫 )

( 週末の下校時間 )
かぁー、クラブですっかり遅くなっちまった 腹へった~
「 峰っ、今、帰り~っ 」
「 お、おぅ! 」
同じクラスの吉岡、それにミス朝高の麻宮じゃん
                    そっか、二人とも新体操部だっけ
「 麻宮! 」
キキキ キーッ
勝則は咄嗟に 道路側を歩く 薫の腕を強引に引くと
車がかすめる様に停車した 
「 馬鹿野朗ー、気をつけろ 」 ブロローッ
「 カオりん!、大丈夫? 」
「 うっ、うん 」「 あつっ、足首ひねったみたい 」
「 麻宮、歩けるか? 」「 うん だいじょうぶ 」「 あっ、あっ 」
「 大丈夫じゃ ねーじゃねーか、 」
「 ほれ、おぶされ 」
「 えっ、でも~ 」
「 恥ずかしがってる場合か、
     俺ん家、近くだから 家でシップして貰えって 」
「 吉岡、麻宮のカバンを持って 付いて来てくれ 」
「 わかった 」 ・・・
ピンポーン 「 は~い 」
「 母さ~ん、ドア開けてくれる 」
カチャッ、ガチャ
「 勝則 いったいどうしたの? 」
「 うん 此の子が脚をひねったみたいで、シップ、有るかな~ 」
「 こんにちは、ご迷惑を お掛けします 」
「 いぇっ、そんな事 」
「 勝則、さっさと家に入って 下ろしてあげなさい 」
「 ああ 」「 吉岡、お前も入れよ 」
「 お邪魔しま~す 」
「 え~っと こっちが麻宮さんで こっちがクラスメートの吉岡さん 」
「 麻宮と申します 」 ペコッ
「 吉岡です 」 ペコッ
「 ご丁寧にどうも
  今、丁度、シフォンケーキが焼けたから よかったら食べていってね 」
薫は朋子に肩を借りて
      ダイニングの椅子まで脚を引きながら たどり着いた
「 今、シップを持って来るから 二人ともしばらく腰掛けててねっ 」
朋子が小声でささやく
「 へ~ 峰ん家の お母さん ものすごっく美人じゃん 」
「 うん、そうそう あたしも驚いちゃった 」と 薫が相槌を打つ
「 驚く事じゃねーだろ、俺を見れば想像できる事じゃねーの 」
「 いや、君は きっと橋の下で拾われた子だと思うわよ 」
「 吉岡っ、随分な暴言を吐くじゃねーか 」
タッ タッ タッ  「 お待たせっ 」
「 じゃあ ストッキングを・・・ 勝則、後で呼ぶから 部屋に入ってなさい 」
「 女の子の脚をジロジロ見てると 嫌われちゃうわよ 」
「 べつに ジロジロなんか視てねーし 」
「 そんじゃ 二人とも、後でなー 」
・・・
「 はい、出来た 」
「 余り痛い様なら
     お医者さんに診て貰ったほうが良いかも知れないわね 」
「 ありがとうございます 」
「 いえいえ、それより 今 紅茶を出しますから
           先程言ってた シフォンケーキを食べていってね 」
「 はい、ご馳走になりまーす 」「 朋子ったら 」
カチャ カチャ
「 口に合うかどうかは保障できないけど どうぞ召し上がれ 」
「 はい、いただきます 」「 いただきまーす 」
「 あっ 美味しい! 」「 ほんと、美味しいです 」
「 峰君のお母さん、是非今度 作り方を教えて頂けませんか? 」
「 お世辞でも 嬉しくなっちゃうわっ 」
「 いえ、お世辞じゃなく 本当に作り方教わりたいと思います 」
「 ありがとう、又 何時でも来てくれれば 家の娘と一緒に作ってみましょ 」
「 ところで 話は変わるけど うちの勝則って 学校じゃ如何なの? 」
「 如何って 聞かれても・・・ 」
「 あっ 御免なさい 如何って聞かれても 答え様がないわね 」
「 最近、勝則の部屋の中は
        石ころがゴロゴロしてて 足の踏み場も無いほど 」
「 母親としては なんとも 行く末が 心配で、心配で、 」
朋子が
「 お母さん 私の印象では 峰君はごく普通の高校生だと思いますよ 」
「 そうかしらね~ 今も部屋で石に向って しゃべり掛けてないかしら 」
「 ハハハハッ そうなんですかー 」「 ウフフフッ 」
・・・
「 ごちそうさまでした 」
「 こちそうさまでした、本当に美味しかったです 」
「 そう言って頂けると 作り甲斐が有るって物よね 」
「 峰君のお母さん
    作り方を教わる件、忘れないで下さいね ほんとですよ 」
「 ええ 私の方はいつでも ウエルカムですわよ 」「 フフフッ 」
「 でも、其の足でお家まで帰るのは たいへんよねっ 」
「 そうだ、タクシーを呼びましょう 」
「 い、いえ そこまでは・・・ 大丈夫ゆっくり帰ります 」
「 う~ん、じゃあ 勝則に送らせましょう 」「 えっ、」
「 勝則~っ 」
トン トン トン 「 母さん、呼んだー 」
「 勝則、麻宮さんを乗せてお家まで 送ってちょーだい 」
「 麻宮、バイクだけど良いか? 」「 う、うん 」
「 麻宮、住所を教えてくれ 」「 えっ、え~と ××町 ・・ - ・・ 」
勝則はポケットからスマホを取り出すと 手早く住所を打ち込んでゆく
朋子が覗き込むように「 へー 峰って スマホ持ってるんだ 」
「 あっ、これ、これは化石堀りの為の必需品、 」
・・・
カチャ ガチャガチャ ドリューン ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、
「 麻宮、これ、ヘルメット、」
「 うん 」
朋子が「 それにしても 今日の峰は 見直したわ
         スマホやらバイク扱うなんて想像もしてなかったもの 」
「 べつに、只、化石堀りに行くのに 必要だからな 」
「 じゃあ、俺は麻宮を送って行くから 吉岡も気を付けて帰れよな 」
「 うん、じゃあね 」
「 麻宮、妹しかタンディムで乗せた事ねーから
               しっかり腕を回して掴っていろよな 」
ドリューン! アクセル一発 バイクは勢い良く走り去る
「 麻宮、バイクに乗るのは初めてかー 」
「 えー なにっ 」「 いゃ、いい 」
薫は
バイクの後部座席で 振り落とされまいと 只必死に しがみ付いていた
勝則は背中に 妹とは違う胸の膨らみを感じ
               邪念を振り払うかのように スピードを上げる
・・・
ドリューン ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、
「 麻宮、着いたぜ 」「 えっ もう 」
「 ありがとう お母様にも よろしく言っといてね 」
「 ああ わかった じぁな 」
勝則は薫にカバンを渡し ぶっきら棒な返事を返すと すぐさま走り去る
あーっ ミス朝高と 話込めるチャンスを・・・ なにやってんだ俺っ

( 日曜日の朝方 )
ピンポーン!
「 ハイ、ただいま 」
「 こんにちは 」
「 ちょ、ちょっと待っててもらえます 」
バタ バタ バタ ガチャ
「 お兄ちゃん、たいへん 玄関にミス朝高が来てるよっ 」
「 そっかっ お母さんに会いに来たんじゃねーの
                 ケーキ作りを教わるって言ってたから 」
トン、トン、トン
「 麻宮っ、もう足の方は良いのか? 」
「 まだ痛いけど 軽い捻挫だってお医者様が 」
「 今日は お借りした包帯を持ってきたの 」
「 なに 無理してんだよ そんなものは使い捨てだろ 」
「 お兄ちゃん、なに上から目線で話してるのっ 」
「 えっーと、麻宮さん ごめんなさい 兄は少し照れてるみたいで 」
「 横から口を挟んで 何言ってんだぁ 」
「 こんな兄ですが 末永く見守ってくださいね 」「 お前はーっ 」
「 麻宮さんは お母さんに会いに来たんでしょ
                お兄ちゃんさっき そう言ったじゃん 」
「 麻宮さん、どうぞ 上がって 上がって 」
「 いえ 今日は ここで お暇します 」
「 えー、そんなー、お兄ちゃんの応対が悪いからなの? 」
「 そんな事は 」「 じゃあ 上がって行ってよ 久美子のお願いっ 」
「 う~ん、少しだけなら 」「 うん、うん 」
「 お兄ちゃんは もう部屋に帰っていいよ 」
「 なんだよ それは 」
・・・
( 其の日の夕食の食卓 )
「 ねえ ねえ お父さん聞いて、
            今日ねっ、お兄ちゃんを訪ねて
                    ミス朝高の麻宮さんが来たんだよーっ 」
「 へ~ ミス朝高って言われる程の可愛い子なのか? 」
「 ええ、とっても 可愛いお嬢さんでしたよ 」
「 そう そう 正確にはお母さんに会いに来たんだけど
      切っ掛けは お兄ちゃんが捻挫した麻宮さんを
                     おんぶして家に連れて来たからなの 」
「 でかした勝則、さすが お父さんの息子だ 」
「 何を隠そう、お母さんも 昔、ミス朝高と呼ばれていたんだぞ 」
久美子が微笑みを湛えながら 父に問い質す
「 へ~ で、 お父さんは お母さんの事 どうやって口説いた訳 」
「 そりゃ~ お父さんみたいな いい男 廻りがほっとく訳が無かろう 」
「 あら そうだったかしら
         昔、貴方から頂いたラブレター 出して来ましょうか? 」
「 えっ、お前 そんな物 未だ持ってるのか? 」
「 ええ、大切な証拠物件ですもの 」
「 お父さんは 手紙で お母さんを落としたって訳 」
「 そうよ こう見えて
    それは それは まめにラブレターを貰ったんだから 」



                 ( 忘れ物 )

此処最近 麻宮は 日曜日ごとに我が家に来ている様に思える
妹の久美子は
麻宮 薫を姉のように慕い 一緒に買い物にまで出掛けている
タッ タッ タッ タッ
ガラガラガラッ
「 峰くん 居るっ、 」
科学室を借りる わが地球環境部の引き戸から
              手招きする麻宮に 部員全員の視線が注がれる
俺はその視線を遮る様に 麻宮の前に立ち
「 何だよっ、何か急ぎの用事でもあんのか 」
麻宮は 引き戸をゆっくりと閉めると 突然 目の前で手を合わせ
「 一生のお願い! 今から××体育館まで連れてって 」
「 今日はあそこで 競技会が有って 今 バスで戻って来たんだけど
               体育館の更衣室に忘れ物しちゃったみたいなの 」
「 あそこなら 電車で 行けっだろ 」
「 電車じゃ 向こうに着いた頃には
           体育館が閉まっちゃてるかもしれないもの 」
「 だから お願い、峰くんのバイクで連れてって 」
「 一体 何を忘れたんだ 」
「 そんな事より 行ってくれるの、如何なの? 時間が無いのよっ 」
「 判った 家まで走って取りに行くから
             裏門のコンビニの前で待っててくれ 」
ガラ ガラ 「 すまん、急用で抜けるわ 」
「 オーッ! 」「 今の麻宮だろっ、何事だっ! 」
「 何でもねーって 」 ガラ ガラ ピシャーン
・・・
「 ハァ ハァ ハッ 」 ピンポーン!ピンポーン!
「 母さ~ん ドアを開けて 」
「 勝則、そんなに慌てて どうしたの? 」
「 ごめん 時間無いんだ 」
ダダダッ ダッ バタン バタン バタン
カチャ キュルキュル ドリューン!
・・・ ・・・ ・・・
「 麻宮、待たせたっ、 」
「 うん~う 」と薫は 頭を振る
ドッ、ドッ、ドッ 「 ほい、メット 」
「 行くぜっ 」「 うん 」ドリューン!
要約 体育館に着いた頃には 閉館時間がまじかに迫っていた
「 此処で待ってて 」「 おぅ 」
麻宮は 何事も無く トートバッグを抱え 戻ってきた
「 おいおい そんなデカイ荷物を忘れたのかっ? 」
薫は「 エヘッ 」と舌を出して見せる
夕焼けの中 タンデムバイクは
河川敷に映る長い影と共に家路を急ぐ
ガクン、グァン、グァン
「 麻宮っ、パンクだっ、 確り摑まれっ、 」
このままブレーキを掛けても 横倒しになると判断した勝則は
わざと河川敷の草むらに ハンドルを切り
       摑まっている麻宮と共に倒れ込むように バイクを投げ出した
「 麻宮っ、大丈夫か? 」「 ええ 」
二人が倒れこんだ草むらは 体がすっぽりと隠れる程の高さが有り
それが クッションとなって ダメージを回避出来たのだろう
( あっ、ヤベッ 反応しちまった )
今、二人の状態はと言えば
勝則の上に折り重なるように薫が乗っかって居た
勝則は気持ちをすり替えようと
「 忘れた荷物にサイフでも入っていたのか? 」
薫が小声で「 レ オ タ ー ド 」
「 えっ、なんて言ったの 」「 レオタードよっ 」
勝則は墓穴を掘った 又もや 自身が反応する
「 峰くんのエッチ 聴き直しておいて 想像したでしょ 」
薫の言葉に パニクった勝則は
「 俺だって 男だかん 麻宮とキスしたいとか思ったりしても 当然だろ 」
「 じゃあ してみる? 」
「 えっ、エッ 」
目を閉じた麻宮の顔が ゆっくりと近づく
コツン、
「 フプッ 」
ヘルメットがぶつかり 薫は 思わず吹き出す
「 だいじょぶですかー !! 」
土手の上から 誰かに声を掛けられた
「 は、はい!」「 大丈夫ですっ、」
二人は顔を見合わせ・・//
「 すいません 此の辺に バイク屋かガソリンスタンドは有りませんか? 」
「 ガソリンスタンドなら
       向こうの橋を渡って 一つ目の信号の角に有りますよ 」
「 どうも ありがとうございます 」
「 峰くん バイクの方は大丈夫 」
「 大丈夫だと思うけど 
       ダメなら 電話して親父に来て貰うから 心配すんなって 」
カチャ カチャ ドリューン ドッ、ドッ、ドッ、ドッ
「 ハンドルも曲がってねーみたいだし 大丈夫だと思う 」
「 麻宮、ちょっと退いてて バイクを土手まで上げるから 」
ギューン グァーン グァーン グァーン
勝則のバイクはお尻を振りながら 土手の坂を上って行く
「 後は スタンドまで 押して行かなきゃなんないから
                         親父に迎えに来て貰おう 」
「 呼ばなくていいよっ 最後まで私も付き合う! 」
「 本当に良いのかっ? 」「 良いって 言ってんでしょ 」
バイクはエンジンが動いても
    後輪が お尻を振って暴れる為 乗り込んで走ることは出来ない
「 ごめんな 」「 やだ 未だ言ってる 」
「 オフロードバイクのブロックタイヤは釘なんかを拾い易いんだ 」
「 へ~ そうなの 」
「 今度からは パンク補修剤を常備しなくちゃなっ 」
「 ふ~ん そういうのも有るんだ 」
「 峰くんは ツーリングなんかもするの? 」
「 いや、このバイクは山ん中とかに行って
               化石堀りする為に 買ったんだ 」
「 ふ~ん それほどに好きなんだね 」
「 麻宮も好きだけどねっ 」
「 あっ、ドサクサに紛れてコクった 」「 ヘヘヘヘ 」
「 麻宮っ、マジで 俺と付き合ってくんないか? 」
「 うん、いいけど 」「 マジっ、本当! 」
 ・ ・ ・
バイクの修理を終え
麻宮の自宅前に着く頃には すっかり薄暗く成っていた
「 今日は あ・り・が・と 」
「 うん、遅くなって悪かったな 」
「 まだ 言ってんの 」
「 気にしないでいいわよ 私が頼んだんでしょ 」
「 また 明日ねっ 」 チュッ!
タッ タッ タッ タッ 「 ただいまー 」
薫は駆け足で 自宅に入っていった
「 く~っ、なんでメットの上からなんだよー 」



               ( オタがオタオタ )

勝則と薫が付き合っている 噂は 瞬時にして学校内に広まった
勝則は今や時の人と成り
校内を歩いていても 自棄に視線を感じる程である
部室に逃げ込んでも やはり ご他聞に漏れず
悪友の藤間 弘が 手薬煉を引いて 待っていた
「 峰ぇ君、麻宮と付き合ってるんだって 」
「 まだ、コクっただけだよ 」
「 最近、付き合いが悪いと思ったら 女子に走ちゃってる訳だぁ 」
「 一体 僕との友情と麻宮のどっちが大事なんだい 」
「 麻宮 」 
ズザザー ザー
弘は大袈裟に身を引きながら
「 言ったね、即答だね、」
「 しかし、ミス朝霧高校の麻宮が なんでオタを選ぶかね~ 」
「 オタにオタと言われたくね~な 」
「 大体、俺は お前と違って 二次コンじゃねぇし 」
「 あ~、アニオタを見下したな、お前なんか振られちまえっ! 」
ガラガラガラ
「 おう、峰っ、麻宮と付き合ってるんだってな~ 」
「 かーっ、先生まで 俺をいじりに来たんスかっ 」
「 恋愛なら 先生の方が経験豊富だから
             相談が有れば乗ってやろうと思ってな 」
「 じぁ なんで 未だ一人なんスか? 」
「 あ痛! 」「 峰、今 此処ん所に プスッと刺さったぞ 」
・・・
「 ただいま~ 」 ん!
タッタッタッタッ
「 母さん、誰か来てるの 」「 あっ、麻宮、来てたの? 」
「 勝則、何ですかっ 其の言い草は 」
「 ああ、いらっしゃい 」 ペコッ
「 大体、お兄ちゃんが麻宮さんと付き合ってるって
             学校じゃ評判に成ってるけど
                  なんでお兄ちゃんなのか 不思議だわぁ 」
「 えっ、そうなの 麻宮さん 」「 ええ、」
「 やった~、久美子も麻宮さんの口から 初めて聞いた 」
「 お兄ちゃん、偉いっ、麻宮さんの彼氏なら 久美子も鼻が高いよ 」
「 言ってろっ 」
勝則は いつも自分が座るダイニングの椅子に紙袋を見つけ
「 何だ、此れ? 」
「 あっ、それは 私の 」 薫が咄嗟に紙袋に手を掛けると
バシャ! バサッ
紙袋が破れ 中に入っていた下着が床に散らばった
「 何遣ってるのお兄ちゃん! 褒めたら直ぐこれだ 」
薫も 勝則も顔を真っ赤にして固まってしまう
「 お兄ちゃん いいから 部屋に行ってなよ
                   後は久美子がフォローするから 」
「 う、うん 」
・・・
コン、コン、「 薫だよ 」「 びっくりしたっ? 」
「 うん、びっくりした 」
「 入っていい 」「 うん、いいけど ビックリするなよ 」「 えっ 」
キィー 「 お・じゃ・ま・しま~す 」
「 へ~ 勝則くんの部屋って 聞いてた通り 石ころだらけなんだね 」
「 石ころって言うなよ
      全部地球の歴史を伝える 大事な資料なんだぜ 」
「 ごめんなさい、私こういうの判んないから 」
「 謝んなくていいよ、俺の気儘で集めてんだから 」
ゴトン、ドン
薫の肘が 棚に有った化石に当って 足元に落ちた
「 麻宮! 大丈夫か? 怪我無いか? 」
「 うん 大丈夫だよ 」
「 足の捻挫が治ったばかりなのに 又 怪我しちゃうと部活大変だろ 」
「 それより、化石の方は? 」「 如何って事無いよ 」
「 ふぅ~ よかったっ・・・ 」
「 峰君、今も 私とキスしたい? 」 目の前の薫が目を瞑る
「 いいのか 」      コクリ 「 ぅん 」
・・・
「 ねえ、ねえ お父さん 今日ね~ お兄ちゃんたら
                   麻宮さんの前でドジっちゃったんだよ 」
「 うぅ~ん 」
夕刊を広げ 生返事を返す 父に
久美子は 「 ドジなのは お父さんに 似たのかもねっ 」
「 おぃ、おぃ 勝則、お前の所為で とんだ とばっちりだぞ 」



                  ( 海 )

「 ねえ、峰君、来週は私 部活無いけど 峰君は空いてるっ 」
「 ああ、俺達、文化部は 体育会系と違って アバウトだかんな 」
「 じぁさぁ、何処かに行かない? 」
「 今、バイクは修理中だからな~ 」
「 麻宮、少し遠いけど 電車で 海に行かないか? 」
「 海に行って、寒中水泳でもするの? 」
「 ちがう、ちがう、 正確には綺麗な海岸てとこ 」
「 俺、良い所知ってるんだ 」
「 うん、行って見たい 」「 じゃあ、決まり! 」
・・・
薫とは 駅の切符売り場で 待ち合わせる事にした
「 峰君、待った? 」
「 いや、俺もさっき着たばかりだ 」
「 麻宮、随分と可愛いんで無いかい 」
「 えへへっ、似合ってる? 」
「 うん、似合ってる、似合ってる 」
麻宮は薄い配色の花柄のフレア・ワンピにオープンパーカーを羽織り 
足元はコルクサンダルといった出で立ちであった
「 峰君は 何だか山に行くみたい 」
「 そうかな~ 俺、服装には無頓着だから 」
勝則はといえば、白のトレーナーにジーンズとトレッキングシューズ
グリーンのウインドブレーカーにやや大きめのリュックを背負っている
「 ごめん、この服装じゃ一緒に歩くのは恥ずかしいかもな 」
「 気にしないでよっ、服装なんて 」
「 ありがと、あっ、此れキップ 」「 えっ、買ってくれてたの? 」
薫が トートバッグを開けようとすると
「 今日は、全部 俺が払うから 」「 えっ、でも 」
「 心配ご無用、バイト代が入って 俺、少々リッチなんだ 」
「 うん、じゃあ今日は 奢ってもらっちゃう 」
「 じゃあ、行こうか? 」「 うん 」
カシャン、・・カシャン
・・・
ピーッ プシューッ プァーン ゴトン、ゴトン、ゴトン、ゴトン
車内は 然程混んで居なかった為、二人は並んで座席に腰掛けた
「 ねえ、ねえ この前さぁ 朋子ったら・・
勝則は 薫の話を聞きながらも
           薫と手を繋ぐ事ばかりが 頭から離れない
電車に揺られながら
腕を組んだり 膝に手を付けたりと落ち着か無かった
「 あっ、見て、見て、すごい 」
電車は山間を抜け そびえたつ様な鉄橋に差し掛かると
右手には キラキラ光る 早春の海が広がっていた
「 うん、今日は晴れてるし 来て良かった 」
「 峰君、目的地は近いの? 」
「 うん、二つ目の駅で降りて 少し歩いた場所 」
「 ふ~ん、どんな所かな~ 」
「 それは、着いてからの お楽しみ~ 」



                 ( 水晶 )

二人はひなびた駅の小さな改札を出ると
「 麻宮、此処から海は見えないけど
           其処の民家を抜ければ 直ぐ其処は海なんだぜ 」
「 うん、早く行って見たい 」「 少し、坂に成ってるから 転ぶなよっ 」
「 大丈夫、なんてったって 体育会系ですから 」
「 捻挫しない様に注意しなきゃ駄目だよ 」「 あ・り・が・と 」
民家を抜けると 松林が目に飛び込んで来る
足元には 無数の小さな白い花がたなびいていた
更に視線を松林の向こう側に向けると 海岸線が岬へと延びており
二人は かすかな潮騒を聞きながら ゆっくりと海岸に向った
砂浜に足を踏み入れると 浜風は やや強く
ヒュー パタパタパタ ヒューッ バサッ、
「 キャッ、 」パサッ
「 見えた? 」「 何、 」
勝則は尚も惚けて、腕を後ろに組み 顔を突き出す様にして
「 何か 見せて貰えるの? 」 カーッ
顔を赤らめた薫は 両手で勝則の肩を突き放す様に
「 も~っ 意地悪っ 」
「 あはははっ 」
勝則は よろける様な仕草をしながら 海岸の一点に目星を付けると
行き成り 薫の手を握り 「 こっち、 」
「 えっ、なんなの? 」「 いいから、いいから 」
「 何処へ行くの? 」「 まだ ひ・み・つ 」
勝則はこの時 意識的に薫の手を握った訳では無く
最早、石オタの感性に突き動かされ 行動していた
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、
強引に手を引かれ 要約 辿り着いた場所には
幾つかの岩がゴロゴロしている
勝則は自分の背丈の半分ほどの岩に手を掛け ポン、ポン、
「 此れっ! 」「 それって 岩でしょ 」
勝則は岩の周りを真剣に観察すると 「 此処、覗いて見て 」
勝則が指差す辺りには 腕が一本入る程度の空洞が空いていた
薫は 勝則の示す空洞を覗き込むが 「 暗くて 良くわかんない 」
「 ちょっと 待ってて 」
勝則はリュックを下ろし 中からミニライトを取り出し 空洞の中を照らした
「 あっ、見えた なんか 結晶みたいなのが光ってる 」
「 峰君、あれは なぁ~に 」「 紫水晶だよ 」
「 実は 今日此処に来た目的の大半は こいつなんだ 」
「 私に 紫水晶を見せたくて 此処に来たの? 」
「 見て貰うだけじゃ 無いんだけど・・ 待ってね、 」
そう言うと 勝則はリュックから タガネとハンマーを取り出し
コンコン、 キン、 コンコン、 コン、
やがて 空洞に手を入れ 取り出した手を 薫の目の前で広げると
「 麻宮、どれが 好い? 」
「 あっ、綺麗! 」「 う~ん どれにしょうかなぁ 」
「 これと、これにする 」「 麻宮、ひとつに決めてくれ 」
「 判った、じゃあ これにする 」
勝則は薫の選んだ水晶を さっさと自分の胸ポケットに仕舞い込む
「 え~ くれるんじゃないの? 」
「 あげるのは ペンダントに仕上げてから 」
「 ペンダントって 峰君が作るの? 」
「 うん、銀細工してる知り合いが居るから
              その人に教えて貰うつもりなんだ 」
「 あっ、じゃあさぁ 小さな貝殻なんか組み合わせても良いんじゃない 」
「 うん、それ良いなぁ~ 」
「 じゃあ 使えそうな貝殻、探してみる? 」 「 うん 」
二人は小一時間ほど 熱心に貝殻を拾い集め
お互いを見詰め合う程の距離に 顔を近づけて
其の真ん中に貝殻を広げると
「 どれにする? 」
「 私は この小さめの白い貝殻がいいと思うんだけど 」
「 じゃあ それで 決まり! 」
「 ねえ、峰君、お腹空いてない? 」
「 そうだね、駅の売店で駅弁でも買って 来ようか? 」
「 私、おにぎりを持ってきてるの 」
「 本当、麻宮のおにぎりを食べられるなんて 思ってなかった 」
「 リュックにレジャーシートが入ってるから 松林の下でお昼にしようよ 」
「 うん 」
勝則は 浜風が当らない場所を選んで シートを広げた
「 峰君のリュックには 何でも入ってるんだね 」
「 残念ながら おにぎりは入って無かったけどね 」
「 フフフッ、そうねっ 」



                  ( 雨 )

「 峰君、はい お茶 」「 うん、ありがとう 」
「 峰君は 将来 何かなりたい職業って 決めてるの? 」
「 将来の事なんか 全然判んね~よっ 」「 でも、鉱物学者とか? 」
「 これは趣味、ひょっとすると将来は
             石切り場でハッパ仕掛けてっかもよ 」
「 そう言う 麻宮はどうなんだよ 将来なりたいもんあんのか? 」
「 私は、お嫁さん 」「 随分と、安直ですな~ 」
「 だって、峰君のお母さん見てたら そう思えてくるもの 」
「 うちのおふくろ? 言葉遣いは優しいけど けっこう気が強いんだぜ 」
「 麻宮は どうか 優しいお嫁さんで有って欲しいよな~ 」
「 判んないわよ 」「 げっ、そうなのか? 」
「 でも 今のところは これ! 」
薫は 近くに有った小枝を拾うと 裸足のまま 砂浜に歩き出し
こちらに 小枝の先をピシッと向け 新体操の演技を始めた
「 麻宮、スカートが跳ねるぜ 」
「 残念でした、脚は上げたりしませんよ~だ 」
「 峰君もおいでよ、裸足だと 砂が気持ちいいよ 」
「 おう 」
勝則が靴を脱ぎかけると
ポッン、ポッ、ポッ、ポッ、
「 あっ、ヤベっ 雨だ 」
勝則は 浜辺に駆け寄り 薫の腰に手を回し 薫を抱え上げると
「 あっちの 民家の軒先まで走るぞ、摑まってろよな 」「 うん 」
ダッ、ダッ、ダダダダー
軒先に薫を下ろし 「 俺、荷物を取ってくるから 此処で待ってて 」
コクリ、薫は勝則の行動力に声も出せず ただ 頷いた
ダッ、ダッ、ダダダダー バサッ、バタ、バタ、
勝則はレジャーシートに全ての荷物を包み 薫の居る軒先へと向う
ダッ、バサッ、バサッ、
「 麻宮、先ず サンダルなっ 」
次に リュックからタオルを取り出し
「 じゃ~ん、拭き拭きタオル 」 と おどけて見せる
薫も勝則の調子に合わせ「 あっ、出た~ 」
勝則は 濡れた薫の髪をタオルで拭きながら
薫の潤んだ瞳に吸い込まれる様に 唇を近づけ
軽く触れると 又 瞳を覗き込んだ
「 そんなに 見つめないでよ 恥ずかしいじゃない 」
「 うん、恥ずかしがってる 麻宮って 萌えるよなっ 」
「 な、何言ってるの オタるんじゃありません 」
「 ブッ、アハハハハッ 」「 ウフフフッ 」



               ( 雪と彼女と )

「 麻宮、クリスマスイブに 峠まで行ってみね~か? 」
「 うん、良いけど? なんで? 」
「 あそこからの夜景を 見せたくってさ 」
「 そんじゃ 其の日に お前ん家に 迎えに行くからさ 」
「 バイクで行くから 必ずズボンを履といてくれよなっ 」
「 オッケー、解かった 」
・・・
( クリスマスイブ当日 )
キーッ ドッ ドッ ドッ
勝則はポケットからスマホを取り出すと
トゥルルー、トゥルルー、トゥルルー
「 あっ、麻宮っ 今、お前ん家の前に着いた所 」
「 うん、・・ うん、待ってるから 」
暫く待つと 薫がジーンズに白のダウンを羽織って現れた
「 待った? 」
「 ぜんぜん 」
「 じゃあ、メットとゴーグルなっ 」
「 サンキュー 」
「 寒いかもしんね~けど 我慢してくれよな 」
「 行くぜ 」「 うん 」
ドリューン! ギューン
勝則のオフロードバイクは林道を 軽快に掛け抜けて行く
ギューン ブロロー ギューン
「 寒び~っ! 」
「 麻宮~っ、だいじょうぶか~っ 」
コツン、コツン
曲がりくねった道を 上り詰めると 要約 展望台が見えて来た
キキーッ ドッ ドッ ドッ カチッ
「 麻宮、着いたぜ 」
「 うん、ありがとう 」
カチャン
「 100万ドルとはいかね~が 此処からの眺めは結構な物なんだ 」
「 へ~っ 港の辺りまで見えるんだ~ 」
勝則は 澄んだ空気の中 白い息を吐く 薫の口元に見入っていた
「 えっ、なに? 」
「 いや、なんでも 」
ゴソ ゴソ ゴソッ 
勝則はジャケットの内ポケットに 手を入れると何かを取り出した
「 海岸で取った
     紫水晶のブローチが出来上がったから
                     クリスマスプレゼントなっ 」
「 本当!!見せて、見せて 」
勝則の掌には 銀色のオープンハートの中心に紫水晶が吊り下げられ
其の斜め上に 二人で拾った白く小さな貝殻が付けられた
ブローチが月明かりを受けて 光っていた
「 峰くん やるじゃん 」
「 えへへへ、麻宮が気に入って貰えるか心配だったんだけど・・・ 」
「 そんなことない 十分だよ~ 」
「 ねえ、付けてみて 」
「 うん 」
「 どう? 似合う? 」
「 うん、麻宮かわいい 」
「 なっ、なに、 照れるじゃん 」
「 実は 私も用意してるんだ~ 」
薫もダウンジャケットのポケットから紺色の毛糸の塊を取り出し
「 出来上がったばかりだから 包装してなくて ごめんね 」
「 ?・・ 手編みの腹巻? 」
「 プッ、違うんだってば~ 」
「 峰くん、ヘルメットを脱いでみて 」
「 う、うん? 」
「 でねっ、こうするの 」
薫は勝則の頭から 紺色の毛糸の塊をスッポリと被せて 首元で折り返した
「 バイクで長いマフラーは使えないから
            ネックウォーマーにしたんだよ
                     MINEってロゴも入ってるからねっ 」
「 お~っ、暖ったけ~ 」
「 麻宮だって やるじゃん 」
「 ありがとう 」
薫の頬が 月明かりに照らされ 光っている
澄んだ空気の中 二人の吐く白い息が 絡み合う
心臓の鼓動だけしか 聞こえない
勝則は 吸い込まれる様に ゆっくりと薫に 顔を近づける
薫のまつげに?白い物が
「 雪 ? ・ ・ ・ 」
「 素敵!ホワイト・クリスマスだねっ 」
「 うん、ロマンチックだけど
            あんまし嬉しくね~ 」
「 どうして? 」
「 雪道に成ったら バイクは危ね~から
         何時までも此処に居る訳にはいかね~もの 」
「 しょ~がね~ 帰るか  」
カチッ、ドリューン
「 峰くん ・ ・ 」
薫はバイクに跨った勝則に いきなり擁きつき
チュッ、

 

 

 


 計画的運任せの恋愛事情 6 ( 石オタとミス朝霧高校 ) 2 へ ↓

 

 

 

 




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               ダンシング・アフター

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

                          ( 砂浜 )


ガチャン、ガコーン
「 ほい、理美 」
「 ありがと 」
ガチャン、ガコーン
「 かぁー、良く冷えてんなー 」
「 会館の中、冷房が利いてないから 尚更冷たく感じるわね 」
俺 ( 吉沢 賢 ) と 彼女 ( 田辺 理美 ) は
この 文化会館で行なわれる 民族舞踊サークルのメンバーである
俺達は何時も 舞踊の練習を終えると
     自転車で 文化会館から伸びる長い坂道を下り降りる
坂を下りてゆくと やがて 視界を大きく遮る 防波堤にぶつかるのだが
俺達は 通常は開け放たれている 脇に有る防潮扉を抜け
そのまま 砂浜へと自転車を乗り入れる
ズサーン! ガチャーン、バサッ
「 賢、スピード出し過ぎだってば 」
「 アハハハ 」「 ウフフッ、」
そして、いつもの様に 時折 灯台から照らし出されるライトの下で
                 その日のおさらいをするのが日課と成っていた
「 そこんとこ もっと 指先をピンとしたほうが 」
・ ・ ・
「 ハァ、ハァ、ハァ、」「 ふぅ~ 今日は此れで御仕舞い!」
未だ ほんのりと日中の暖かさを残す砂浜で 隣に並んで座ると
理美がつぶやいた
「 今度の発表会が終われば 直ぐに卒業式だね 」
・ ・ ・
俺は卒業後、市内の電気工事会社に勤める事が決まっている
しかし、理美の進路については 何一つ聞いては居なかった
「 理美、卒業しても 俺と付き合ってくれないか? 」
・ ・ ・
暫くの沈黙の後 理美は膝に顔を伏せたまま 小さな声で
「 無理だよ 」



                       ( ジュース )

理美と付き合い出したのは ほぼ三ヶ月前の出来事がきっかけだった
その日、練習を終え用具室に和太鼓を納めようと 引き戸を開けると
ヒック、ヒック、・・ バタン、
俺は 見てはいけない物を見た様な 罪悪感に捕らわれ
引き戸に張り付いた
「 おい、泣いてんのか? 」
「 何でもない、」「 何でもなくて 泣ける訳ないだろ 」
「 俺に出来る事なら 相談に乗ってやるぜ 」
「 自分の事だから・・ 」
「 なら、俺に話して見るだけでも 気持ちが落ち着くんじゃね~か 」
「 私、トロ子だから 皆に附いて行けなくて・・ 」
賢は少し声を荒げ 「 自分の事を トロ子なんて言うな 」
彼女はいわゆる帰国子女で べつにトロい訳じゃなく
            日本語のニュアンスに附いて行けないだけなのだ
「 原口女史に 何か言われたのか? 」
「 あの人 言い方がキツイから 」
「 叱られても 当然なんだ ・ ・ 
     私、やっぱり むいてないから 辞めようと思うの 」
「 そんなに 簡単に辞めんなよ 」
「 俺が稽古に付き合うから もう暫く頑張ってみて
                    それでも駄目なら その時に考えよう 」
「 だって 言われっぱなしで 逃げるのは 悔しいだろ 」
「 でも ・ ・ 」
「 じゃあ、ジュース1本付けるからさあ 」
「 あはっ、何それっ 」
「 あっ、笑ったな 俺はこれでも真剣に言ってんだけど 」
「 まあいいや 俺の名前は 吉沢 賢、 君の名前は? 」
彼女の事はチェックは入れていたが 名前までは知らなかった
「 田辺 理美 」
「 そっか、で、今の話に乗るだろ 」
「 本気で ジュース1本なの? 」「 俺は何時でも 真剣だぜ 」
「 フフフフッ 」「 何か可笑しいか? 」
「 いいえ、ジュース1本で口説かれちゃいました 」




                   ( 花火 )
 

賢は大きな声で 「 なんで無理なんだ 」
「 だって、私、卒業したら 又 カナダに行くんだもん 」
「 そんなの 聞いてないぞ 」
「 ずっと・・ずっと、言い出せなかった 」 ヒック、
「 泣くなよ~、又 帰ってくんだろ~ 」
「 パパは ずっと永住するって 」
「 それでも、無理って事は無いだろ 」
「 今はLINEで何時でも連絡が取れるんだし
      もっと ポジティブに考えても良いんじゃね~のか 」
二人は 砂浜に向かい合わせに蹲り 暫く沈黙した
やがて 賢が口を開き
「 俺の事を嫌いなら しょうが無いけど
        そうじゃないなら 遠距離恋愛でも良いだろ 」
「 うっ、うん 」
理美は 未だ煮え切らない返事を返す
ヒューー ドォーン
突然 賢の背後の景色に閃光が走った
「 やべっ、花火大会が始まっちまった 」
賢は コクった後 理美を誘って花火大会に行く
               自分勝手な計画を頭の中で描いていた
「 しょうが無ぇ、此処で花火を見てから 帰るか~ 」
「 理美も 其れで良いか 」
理美は小さく頷き 「 うん 」
ヒュー ドン  ヒュー
 ドン パチパチパチパチ
ヒュー ドーン
・ ・ ・
「 この花火も 思い出になっちゃうんだ 」
「 なに 言ってるんだよ 」
賢が 理美の両手首を握ると
押し倒された様に 二人は砂浜に倒れこんだ
理美は静かに眼を閉じ 小さな声で
「 いいよ 」
賢は ゆっくりと理美の唇に狙いを定め 顔を近づける
理美の頬に 灯台の明かりが当たり輝いていた
"  ポトッ "
「 アッ、ご、ごめん 」
賢の額から 汗が理美の頬に落ちた
賢は ズボンの後ろポケットから 自分のタオルを取り出そうとするが
理美は 既に自分のタオルで頬を拭いながら
「 アハハハ ウフフッ 」
「 なんだよ~ そんなに笑う事でもないだろ~ 」
「 アハハハ 」
「 じゃぁ もう一回 やり直し 」
「 やだよ~っ べぇ~だ 」
「 わあぁぁ~っ 」
賢は 突然 海に向って走り出した
バシャーン
バシャ バシャ バシャ
やがて ずぶ濡れの賢が砂浜に姿を見せると 
理美に届く音は 囁く様な潮騒だけに成り
「 賢、どうしたの? 」
「 なんでもね~ 只 頭を冷やしたかっただけだよ 」
「 も~っ 訳わかんないっ 」
「 俺もっ!」
「 アハハハ 」「 ウフフフッ 」
「 送って行くから 返ろう 」
「 うん 」

 



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                大空と彼女

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

                 ( 伝票 )


キューン ガタン
俺が フォークリフトで苗床を軽トラに積んでいると
突然 後ろから声を掛けられた
「 すいませ~ん このポリ容器も
        あのヘリの所まで運んで頂けますか? 」
「 あっ、いいですよ 」
キュル キュル キュル キューン
「 此の辺で良いですか? 」
「 もう少し前まで お願いします 」「 はい 」
キュル キュル キュル 
「 どうです? 」「 はい ここで結構です 」
キューン ガタン
「 それじゃ 伝票にサインを 」
「 えっ、俺は農協の職員じゃ・・
           あっ、 お~い堀田 来てくれ~ 」
俺は 事務所のドアから出てきた 堀田を視止め 呼びつけた
「 何ですか? 高次さん 」
「 うん、この人が 伝票にサインしてくれってよっ 」
「 あっ、あっ、御免なさい 彼方は此処の人じゃ・・ 」
「 別に気にしなくていいよ ここの職員は家族みたいなもんだから 」
「 わ、私 今日 初仕事で 農薬を・・ 」
「 落ち着いて、落ち着いて、 」
「 俺は 吉田 高次 近くで米農家を遣ってるだが、
                         でっ、 君の名前は 」
「 はぃ、私は佐伯 梓 今日はヘリで農薬散布する為にこちらに来ました 」
「 へ~っ ヘリコプターを操縦できるんですか すげ~なぁ 」
「 おい、堀田、さっさと伝票にサインして差し上げろ 」
「 まったく~ 高次さんは 人使いが荒いんだから 」
サラ サラ サラ
「 はい、どうぞ 」「 すいません ありがとうございました 」
カチャン ウィーン ウィーン
「 えっと、 ・ ・ 
   佐伯さん、そんな小さなポンプじゃ 時間掛かっちゃいますよ 」
「 堀田、じょうごは有るか? 」「 倉庫に有ると思いますが 」
「 じゃあ、悪いけど 持って来てくれ 」
「 はい 」タッタッタッタッ
ウィーン ウィーン ウィーン ウィーン
・・・
タッタッタッタッ
「 有りました、高次さん此れで良いですか? 」
「 オッ、サンキュー 」
高次は 散布用タンクにじょうごを差し込むと
「 佐伯さん、少し離れて貰えます 」「 よっと! 」
高次は 梓の使っていたポンプを抜き取り ポリタンクを抱え上げた
ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ
「 ほいっ、一丁上がり 」
「 ありがとうございました
        私なら 未だにチマチマと遣ってたかもデス 」
「 如何って事は無いです、
       何時でもお手伝いしますよ この 堀田が 」
「 えっ、えっ、 」
梓は その場で 敬礼をして見せ
シュタッ! 「 お仕事に 行ってきま~す 」
「 はい、ご苦労様です ・ ・ 」
バタン カチッ カチッ カチッ
「 離れてくださいね~ 」
キュン キュ~ン キュ~ン バラ バラ バラ バラ
ヘリコプターは猛烈な風と劈く様な音を立てて 舞い上がった



                 ( 婚活 )

「 おっ! 」
久しぶりに街に出掛けた高次は 建物に入って行く 彼女を視止めた
( え~っと、何て言ったっけ そうだ、佐伯 梓、そうだ、そうだ )
( おりょ!此処は確か? )
( 後輩の竹田が就職した 結婚式場だよな・・・ )
( 彼女、結婚でもするのか? )
ウィィ~ン
建物に入ると 都合良く 受付に竹田が立って居た
「 お~っ、タケ、がんばってっか 」
「 あっ、先輩 」
「 どうしたんですか? もしかして式場の予約ですか? 」
「 あっ、すまん そうじゃ無いんだ 」
「 実は、今 此処に来た 佐伯さん・・・ 」
「 吉田先輩、佐伯さんと お知り合いなんですか? 」
「 いや、顔見知り程度なんだけどなっ 」
「 彼女、結婚準備で 此処に来たのか? 」
「 違いますよ~ 」
「 じゃあ、何だ !? 」
「 幾ら先輩でも、お客様の個人情報は教えられません 」
「 んな~、堅い事言うなよ、
     じゃあさ~ 彼女に薦めたパンフでも見してくれよ~ 」
竹田は 徐に カウンター下から一枚のパンフレットを 無言で取り出した
「 へぇ~、婚活パーティーか
          お前ん所 こんな事も遣ってんだ 」
「 先輩、なんで こんな事調べるんすか? 」
「 そりゃあ、彼女に興味が有るからに決まってるじゃね~か 」
「 はあ ・ ・ ・ 」
「 よし、決めた!俺も このパーティーに参加するわ 」
「 なっ、何、言ってんすか 第一、定員って物が有るんですから 」
「 一人や二人 押し込めんだろ
     ごちゃ ごちゃ 言わずに さっさと手続きをしろ 」 
「 たく~っ、昔から強引なんだから~ 」
「 顧客を一人獲得したんだ 喜べ 」
「 こんな 我が儘なお客、素直に喜べないっす 」
「 はははっ、大目に見とけっ 」
 ・ ・ ・


婚活パーティーは 隣町のホテルのラウンジを借り切って行われていた
チ~ン、カシャーン
エレベーターを出ると 竹田が駆け寄って来る
「 せんぱ~い 」
「 なんだ、タケ 俺の事が心配でフォローしに来たのか? 」
「 先輩の事より、パーティーが心配ですよ~ 」
「 先輩、お願いですから パーティーを引っ掻き回さないで下さいね 」
「 おっ、随分じゃね~の
       心配すんなって、タケの面子を潰す様な事はしね~から 」
「 ところで、佐伯さんは来てるのか? 」
「 はい、今日は 赤いカクテルドレスを着てらっしゃいます 」
「 先輩、今日の進行役は僕なんですから
             くれぐれも 本当にお願いしますよ 」
「 解かってるって~の 」
高次は 会場に入り 梓に目星を付けると
       他の参加者には目もくれず 一点を見詰め近づいていった
「 今晩は 」
「 あっ!こんにちは 」
梓は 少し驚いた表情を作り 軽く会釈を交わすと
         高次の視線を外し 隣のテーブルへと移動してゆく
( げっ、シカトかよ~ )
今日のこの日の為に 彼女と話す話題をシュミレートしてきた
                 高次にとって この肩透かしは 相当堪えたが
高次は 梓の素気無い態度に意気消沈しながらも
折角のパーティーを楽しむ事に 気持ちを切り替えようと
                       片っ端から 参加女性に声を掛けた
「 え~、皆様 お忙しい中 本日のイベントに
              ご参加いただき 誠にありがとうございます 」
「 わたくしは 本日の進行役を担当します 竹田と申します 」
「 さて、パーティーも終盤に差し掛かって参りました
        此の辺で 会場入り口でお配りした
              ビンゴカードの抽選を行いたいと存じます 」
「 当選者には なんと、此方のホテルディナーの
      フルコース・ペアチケットを十名の方に進呈いたします 」
「 では 参ります! 」
ピー、ピ、ピ、ピ、ピ、ピッ、ピッ、ピー
会場の大型モニターに番号が次々と映し出されてゆく
ザワ、ザワ、ザワ、
「 あっ、当りました! 」
高次の隣に居た 女性が手を挙げた
「 はい、先ずは 幸運なお一人様 どうぞ此方へ 」
ザワ、ザワ、ザワ、
ピー、ピ、ピ、ピ、ピ、ピッ、ピッ、ピー
ザワ、ザワ、ザワ、
先ほどの 幸運を射止めた女性が 高次の隣に戻ると 小さな声で
「 吉田さん もし、よろしければ 私とディナーを・・・ 」
高次は 彼女のネームプレートを ちらりと見て
「 鏡さん、ありがとうございます
            だけど 僕の本命は あちらの赤いドレスの 」
「 それでも 構いません 」
「 僕なんかでいいんですか 」
「 ・・・ 」
「 あっ、選んで頂いたのに はい、ありがとうございます 」
「 なんだか 変な日本語になっちゃいましたね ハハハハッ 」
「 では、来週など 吉田さんの ご都合はいかがでしょうか? 」
「 はい、僕は何時でも結構ですよ 」
「 じゃあ、メアド交換して頂けます? 」
「 は、はい、すいません 女性に其処まで言わせてしまって
                         まったく 申し訳ないです 」
パーティーが終わり 窓の外を見ると 雨が洪水のように降っている
高次は エレベーターに乗り込む 梓に声を掛けた
「 佐伯さん、外はどしゃ降りですから 僕の車で送りましょう 」
「 いえ、父が迎えに来ますから 」
又も 素気無い言葉を返され 更に
「 先ほど メアド交換した方を お送りしてあげては、 」
少々、カチンときた 高次はトーンを落とした声で
「 そうですね、そうします 」
カシャーン
梓を乗せた エレベーターのドアが閉まると 高次は踵を返し
パーティー会場へと戻り 鏡さんの姿を捜した
「 せんぱ~い、佐伯さんを捜してるんですか? 」
「 いや、鏡さん、鏡 恭子さんを捜してる 」
「 その方なら 先程 女性三人連れで 帰られました 」
「 そうか 」
「 なんです、先輩、鏡さんに目移りしたんですか? 」
「 うるせー、タケ、シメるぞっ 」





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