永遠の唄 -7ページ目

扉


最近日差しが暖かくなってきた

窓を開け柔らかい風を肌で感じる



日曜の午後というのはまるで学生時代

迫りくる"終わり"に向かって時を刻む

それを感じるからこそ憂鬱な気分になり

太陽がゆっくりと暮れゆくにつれて

私の心の中の太陽も段々と消えてゆく



それでもこの心にひと時の安らぎをと

私はゆっくりと扉を開いた



軌跡


追われるように過ごした日々は

私の心をきつく締め上げていた

体を痛めつけ精神をすり減らし

あるかどうかも分からない

未来なんていう光を求めて

あれはその対価だったのだろうか

燃え尽きて灰になった心には

時間が過ぎる景色しか映らない

そんな心にひと時の癒しを






長い一週間が終わった。



その傷が癒えつつある証拠なのか

それともただ記憶が薄れゆくだけなのか

自分の心にどこか変化を感じる。

何か過去がとても遠くに感じられてしまう。

時を重ねる度にそれが遠くなるのは

自然なことではあるのだけれども

遠すぎて悲しくなってしまう。



なんかもう、昔みたいな日記は書けない気がする・・・

そんな風に12月とか1月の日記を見る度に思う。

あの頃はまだ今より"甘え"があったからな

って今でも十分甘いか。



過去に縛られることは辛いこと。

脱力・無気力・無関心

そんな今日この頃。



ふー、また一週間が始まるのか。

ロスト


私は何もかも失った。

もう駄目だって思っていた。

積み上げてきたものが一瞬で崩れ去ったような

そんな気分に襲われていたとき

「キミの"絶望"は終わりじゃない。」

そう言ってくれたのは彼だった。



「絶望とは望みをまったく失うこと

 ・・・だとしたらやっぱりキミの"絶望"はまだ終わりじゃない。
」

まだとは一体どういうこと?

終わってないとは一体どういうこと?

「この世の中である特定の人のためになることなんてのはほんの一握り

 後はなんて事は無い、あってもなくても同じようなものなんだ。

 だから自分のためにならないことばかり続くと

 上手くいかないだとか、報われないだとか思ってしまうけれど

 そうじゃない、それが自然なんだって。

 それぞれ背負っているものの重さの違いから

 その価値観こそそれぞれかもしれないけれども

 結局のところ、皆同じようにあるものでしょう

 ・・・光だって闇だって。

 もしただそこに暗闇しか感じないのならば

 それはキミがその場に留まっているせいなんじゃないのかな。
」

そう言って彼は俯いたままの私の顎にそっと触れ

触れた指でそのまま空を指した。





・・・そっか、世界はこんなにも光で溢れているんだね。

そういう考え方も悪くないかも。

「サンキュ。」

見失ってた部分が少し見えてきた気がするよ。

写真


ちょっと調べ物をするために引っ張り出した古い参考書

開いてみるとそこには・・・

高校の卒業式のときに撮ったただ一枚の写真

メチャメチャ懐かしい!

「おおおーーー」と思わず言ってしまいまった(笑)





式も終わり、思い思いに校門のところで騒ぎあう仲間達

終わりと始まりをそれぞれがそれぞれのカタチで感じあう。

その節目にただただ涙する者もいれば

別の道へゆく友とふざけあっている者もいたし

後輩や仲間達と飛び切りの笑顔で写真を撮ってる者もいた。

私は昔から写真を撮られるのが嫌いだったため

自分の写真はほとんど残っていない。

卒業式でもそれは例外じゃなくて撮らないつもりで

当日、カメラも持っていかなかった。

もうしばらく会えないであろう仲間と話をしていると

後ろから声をかけられた。

「towa君、一緒に写真撮ろっ。」

振り返る前にビクッとしてしまった。

聞き間違えるはずがない、この声の主は・・・



彼女はカメラを仲間のひとりに頼むと

私の腕をとり、広いところに出た。

冷やかす仲間に中指を立てながらも

私はされるがままについていく。

はっきり言って戸惑っていた。

何故なら彼女は間違いなく私の高校生活で

中心にいたであろう人物のひとりなのだから

それは良い意味でも悪い意味でも。

ちょっとした事情でまともに口を利くのはかれこれ半年ぶり

戸惑わないはずがないか。

思えばこうして隣り合うことさえ二年ぶりなんだな。

「じゃ、撮るよー。こっち見て。」

いろんな想いもあったけれども

今、この瞬間だけは笑顔で写ろう・・・

「カシャ」

カメラがふたりの"今"を切り取った。



「写真・・・焼き増ししたら俺にもくれないかな?」

目を見開いて私の目を見つめる彼女。

それはそうだよな、写真嫌いなのは当然知っているはずだし

昔デートでそれが原因でケンカしたこともあった位だもの。

それなのに私がそんなことを言ったら驚くのも無理ないか。

「いや、色褪せるのは確かに嫌なんだけれど

 ・・・忘れたくないんだ、瑠奈のこと。」

そして彼女は静かに一度頷いた。

「わかった。・・・また連絡するね。」

そう言い残すと、彼女は別の友達のところへと走って行った。

私はというと、そんな彼女を遠目で見送り

自然と出た言葉にどこか戸惑いを感じながらも

とりあえずは笑顔で卒業出来ることに感謝していた。



やがて桜が咲く頃、大学生になった私の元に

彼女から手紙が届いた。

彼女と一緒に写った最初で最後の写真。

今見ても苦笑してしまうほど、凄く照れてる私と

優しい笑顔をした彼女がいた。






いくら探しても見つからずに

てっきりもう失くしたとばかり思っていた。

偶然だとしても見つかったのはなんか嬉しい。



たった一枚だけの

私と彼女の青春の一ページ。

旋律




今日も窓の外は雨

部屋の明かりを消して

窓際に座り込み

夜の闇を眺めていた



ただただ荒れた空や

部屋の外で見る雨は

あまり好きじゃないけれど

静かに降る雨の優しい音

緑と触れた香りは心地よく

私を潤してくれる




長い夜と少し肌寒い風

静かに奏でるその旋律に

物思いに耽りながら

そっと耳を傾けていた



乾いた心に一雫の優しさ

呪縛




それは互いに相反するようだけれども

ふたを開けてみたら紙一重の存在なんてときもある



そんなこと認めてしまえば簡単なことなことで

気持ちも楽になれるのにそれが出来ないが故に

人は皆もがき苦しむのだろう



確かにやっても出来ないことはある

確かに考えても無駄なこともある



・・・でも全てが全てそうじゃないだろう?



やってみなければ分からないこともある

考えてみなければ気付けないこともある



自分で自分を縛ることは簡単なこと

簡単であると同時にとても楽なこと

けれども縛られたままでは

手を伸ばせば届くものさえ届かない



人が縛られるのが言葉ならば

その呪縛から解き放つのもまた

言葉なのではないのだろうか

進め


止まるな

その歩みを止めぬ限り

目の前に道は広がる



ここまで歩んだのだから

もう戻れないのかもしれない



迷いもあるだろう

戸惑いもあるだろう

捨てるということ

変わるということ

それはつまりそういうこと



もう戻れないのならば

進むしかないだろう

狭間


夢と現実の狭間

希望と絶望の境目

互いに異なるものでも

それはどこかで繋がっている



ちょっと手を伸ばせば

今にも届きそうなのに

永遠にも似た距離がある



もし届いたとしても

触れた瞬間にそれは無残にも

幻となって砕け散るのだけれど






夢に入り込んだ後は

決まってこんな気分にさせられる

今日だってそう・・・

覚めるその直前までは

それが現実と信じて疑わなかった

確かにそこにいるって

・・・そう思ったんだけどな



遠い遠い日の記憶は

今も私の深いところに

強く強く根付いている

Trauma




体の傷というのはすぐに消えるのに

心の傷というのは簡単に消えてはくれない







あの日を境に私は変わってしまった。

心と体がバラバラだからまるで

何かに体を支配されているかのように

思うように動いてくれない。

あの日というのは丁度一年前の交通事故。

体には全治半年ほどの怪我を残し

心にはそれ以上の深い傷を残した。



前は怖いものなんて何もなかった。

愛車であるバイクに乗り

明け方の国道を150km/hで走り

高速では限界速度(190km/h)で走った。

自分が風になるあの感覚がたまらなく好きで

私は時間さえあれば走り続けた。

一瞬とも言えるその開放が

私が私であることを証明してくれたから。

いつしか命と精神をすり減らしながら

無謀にも似た行為も自ら進んで行って

それはどこか死に場所を求めているかのようだった。

きっと"死"と隣接することで

"生"を感じていたんだと思う。



その後はというと、はっきり言って

車の助手席に乗ることさえ出来ない時期もあった。

私の心臓を鷲掴みにしたのだ

"恐怖"という名の魔物が。

心の自由を奪い、体の自由を奪った。

今では大分落ち着いたけれども

まだまだ縛られている感覚が残る。

再び走ることが出来る日は来るのだろうか。

出来ることならこんな記憶消し去りたいけれども

街であの音を聞く度に風の声が聴こえるし

時にこの傷が疼く度にあの瞬間が脳裏に浮かぶ。



まだまだ真新しい肩の傷跡

この傷が完全に消える頃には

心の傷も癒えてるといいな

代償


ここ最近ついつい口にしてしまうのが

「時間がない」という言葉。

何か言い訳のようで多用したくないのだけれど

ひとつの口癖といってもいい程使っている気がする。



自分のため、そして誰かのために割く時間が無いというのは

もちろん普通に考えれば決していい事ではない。

自由が制限されると同時に

規則という名の鎖が身動きを制限する。

けれどもこうして時間に追われることで

嫌なことを考えなくて済む

・・・これは素直に喜べると思う。

どうしても時間があると自由な分、余計なことまで考えてしまうから。



自分を縛ることで自分を守る

これもひとつの自由の代償だろう。