噎せ返る様な熱気を感じることが少なくなった。
膚を湿らせる程度に汗ばむことも、
風が湿気を孕むこともなくなりつつある。
高く突き抜ける、
けれども薄く冴えた空はいつ頽れるともわからない。
そんな触れると壊れそうな空模様を以てして、再び秋を迎えたのだ。
夏にこの瞳に映したのは幻影だったのだろうか。
それとも、
また何時もの様に己を化かし続けていたのだろうか。
一時確かに熱い血液の通ったかのような指先も、
既に蒼褪めて温度を失いつつある。
業火に焼かれる様な、
それでいて焔の舌先を愉しむかのような渇望は
一体何処に失われたのだろうか。
この想いは何処に宛てるべきであったのだろうか。
やはり独りであることに変わりはないのだ。
空が更に高くなり、木々が色づき、やがて葉を落とし。
一面に足元を彩る枯れ葉が朽ちて雪に埋もれ。
長い冬に鎖され。
こうしてまた同じように雪原の中独り、足を運んでゆくのだろう。
過ぎ去った夏に望んだものを思い出すことがないように。
無数に転がる虫達の死骸と共に葬り去ってしまうように。
冷えた頬を涙が伝うのは構わない。
その指で掬ってくれることなど端から望んでなどいない。
膚一枚隔てた体温はこの身には毒にしかならない。
只ひとつ、望むとすれば。
夏の夜にふと滲ませたあの淡い微笑みで、
睫毛の先に未だ残る微かな滴を乾かしてはくれまいか。
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秋ですね。
実りの秋、スポーツの秋、食欲の秋、色々あるかと思いますが
(芸術は一年中だから敢えて触れない)
秋はどうにも苦手です。
過ごしやすいのは良いのですが、
夏からの落差で寂寞感が拭えません。
秋物のお洋服とかメイクは大好きなんだけれどね。
秋が近づいてきたな、と思ったらブラームスが聴きたくなりますね。
特に晩年のピアノ小品なんて最高です。
若しくはマーラーの「大地の歌」第2楽章。
「秋に独りいて淋しき者」なんて題からしてぴったりです。
前奏曲Op.117の第3楽章大好き。