海外ツアーで観光地を訪れた場合、ほとんどの場合、観光案内を現地のガイドさんにお願いすることになる。
この現地ガイドさん、『スルーガイド』と『スポットガイド』に分類することができる。
スルーガイドは、滞在中の一部又は全行程を宿泊も含めてグループに随行するガイドで、アジアやアフリカなど人件費が比較的安い国や地域に多い。
一方、人件費の高くつくヨーロッパなどでは(現地ガイドの手配が困難な地方を訪れる場合や、個別の事情によってスルーガイドの手配をする場合はあるが)、基本的には『スポットガイド』をお願いすることになる。
スポットガイドとは、読んで字のごとく『スポット』の『ガイド』なわけで、観光地などを訪れた際に現地で待ち合わせをし、その街限定、時間限定で観光案内をお願いする現地ガイドさんのことだ。
このスポットガイドさんだが、大きな街や日本人の多い観光地では、日本語を話すガイドさん(ちなみにJSG=Japanese Speaking Guideと表記される)も数多くおられるので、比較的容易に手配することができる。
しかし、小さな街やあまり日本人が訪れない観光地ではJSGの数も少なかったり、そもそも居なかったりで、大体の場合英語でのガイド(ESG=English Speaking Guide)となる。
で、当然、このESGさんの話す内容を日本語に通訳してお客さんに伝えるのは、添乗員の仕事ということになる。
日本中の海外添乗員の中で英会話レベルは最下層クラスであると自負しているこの私、このESGさんには毎回かなり手を焼くことになる。
メモを片手に(年とか人名とかいちいちメモっとかないと覚えきれない)悪戦苦闘、終わった頃には脳みそクタクタ、写真も全然撮れなかったなんてこともしばしば。
途中で諦めて、あたかも通訳をしているようなフリをして、ガイドブックやインターネットで調べておいた予備知識を披露していたなんてことは・・・無いと思いたい。
ある年のクロアチアツアーの時だった。
アドリア海沿岸の美しい街、スプリット。
この街にある世界遺産『スプリットの史跡群とディオグレティアヌス宮殿』見学の為に、スポットガイドを手配したのだが、生憎日本語の話せるガイドさんはおらず、ESGでの対応となっていた。
そして待ち合わせ場所にやってきたのは、エメラルドグリーンの瞳を持つ美しいクロアチア人女性だった。
ド、ド、ド、ドキューン!・・・ってハートを射貫かれている場合では無い。頑張って通訳をしなければ。
その方の話す英語が訛りもなく、とても聞き取りやすいものだったにもかかわらず、しばしば通訳が滞ってしまったのは、ついついその引きこまれるような緑の瞳に呆けたように見惚れて、通訳が上の空になってしまい、「あ、さーせん、もう一回言ってもらえます?」などとちょいちょい言っていた間抜けな添乗員の仕業だと気付いたお客さんは、一体どのくらいいただろうか?