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恥辱とカタルシス

作家志望、渋谷東子と申します。
よろしくお願いします。

なんか、お久しぶりです。

 

こんばんは、渋谷です。

 

 

 

なんだかお久しぶりになってしまいました。本読めなかった。読めなかったというか、時間なかったというか。

 

小説を書いてたんですね。書きたいことがすらすらと文字になったので、悩むことなくがっつり書いてました。すると読む方には気が回らなくなっちゃって。気持ちいいぐらいに書き進められて楽しかった。原稿用紙で223枚まで進みました。半分……かな。最後まで詳細にエピソードも詰めることができたので、あとは文字にするだけです。

 

そんなこんなで夢中になってましたが、どうにか1冊読み終わりました。時間かかったなあ。それって、実はこの作品が全編大阪弁で進められているから、というのもあるのよね。

 

先日亡くなった田辺聖子さんの作品を読んでみました。初期の短編を集めた作品「うたかた」です。

 

 

 

田辺聖子さんと言えば、うちの伯母さんが好きだったんですよね。

 

その昔、うちに大量の文庫本を送り付けてきた伯母です。瀬戸内寂聴、渡辺淳一、田辺聖子さんの著作が多かった。だから子供のころに田辺聖子さんの作品は読んでたと思うんです。でも記憶に残っているのは、「おせいさんの○○」みたいなエッセイだったような気がする。だって私、大人になってもこの田辺聖子さんという方はエッセイストだと思っていたぐらいですから。

 

亡くなって初めて、「乃里子三部作」なる代表作があることを知りました。こちらも必ず追いたいと思います。でもとりあえずは初期作品。今回の「うたかた」は、昭和32年から39年までが初出の、60年近く昔の作品たちが収められた短編集です。

 

収録作品が

 

うたかた

大阪の水

突然の到着

私の愛したマリリン・モンロウ

 

となっております。

 

「うたかた」という表題作に続いて、どの作品も一瞬の輝きの後味を追うような作品です。「うたかた」って、あっという間に消えてしまう水面の泡を差すんだってね。

 

まだ日本に戦争の痛手が残っていた頃から、高度経済成長で今以上にエネルギーに溢れていた時代まで。それぞれの時代で、泡のように消えてしまう切ない恋の記憶が収められています。まず響いたのは「うたかた」。これ、今すぐにでも私が書きたい世界だった。

 

 

 

主人公は卓ちゃんという尼崎のゴロツキ。ゴロツキ、というと十羽一絡げな感じがしますが、当時のヤンキーは環境に足を引っ張られているところが大きいのでしょうね。私は尼崎に行ったことがないのですが、ダウンタウンの出身地でめちゃくちゃな土地だったということだけは聞いたことがあります。

 

卓ちゃんは男前だし頭もいいんですが、アマに育ったばかりにヤンキーとして生きざるを得ません。一応ヤクザ以外の道で生計を立てようとしていますが、周りが悪いからねえ。その真ん中で生きてきた卓ちゃんはやっぱりどうやったってヤンキーです。そんな卓ちゃんが、ある日見知らぬ女をナンパします。

 

これが美人で身なりの良い上品な女。卓ちゃんは自分のテリトリーである、アマのヤンキー仲間の家に能理子を呼んでだらだらとデートを重ねます。次第に能理子に本気になっていく卓ちゃん。一緒に旅行に出たりして。理知的な能理子に似合う自分ではないことを拗ねたりします。そうこうしているうちに、突如姿を消してしまう能理子。

 

必死で能理子を探す卓ちゃん。仲間の情報網で遠方までおっかけたり。結果的に能理子は大阪の小学校の先生でした。しかも既婚者らしい。なにか鬱屈があって、違う自分になりたかったんでしょうね。

 

卓ちゃんは能理子に毒づきアマに帰ります。17歳のパンパンが病気を抱えながら街頭に立つ街、尼崎。「人間なんてものは、うたかたみたいなもんだ」――卓ちゃんの最後の一言が重い。社会的弱者の鬱屈。その中にある希望。……これは。ええわあ。その希望が削がれた時の卓ちゃんの絶望に身をつまされました。やっぱり田辺聖子さん、純文学の人やったんやね。

 

 

あと、何とも言えぬ迫力だったのが「虹」。これは重いぞ。主人公は足に障害のあるかや子ちゃん。先天性の脱臼を矯正されなかったことによりびっこを引いています。

 

そんな彼女はOLさんをしていたのですが、その会社がかなりなブラック企業なのですね。そこで、人の良い青年、卯之助が担ぎ出されて労働争議を起こすことになりました。しかし社長はワンマン。「辞めたい奴は辞めたらええんやで」と言われてきょどる周囲。けれど卯之助は強く、その姿に惚れちゃったかや子ちゃんも賛同しちゃってふたり揃ってくびです。でも卯之助には弟妹が6人。反骨心のある卯之助に男気を見た社長は彼を慰留します。でも女の子の偉そうなのなんかいらなーい!それで路頭に迷うかや子ちゃん。お母さんとふたり暮らしで、生活は貧しく、就職することもままなりません。

 

このあたり、世界的に恐慌でもあったんですかね。受けても受けても就職できないかや子ちゃん。卯之助は自分のせいで窮地に追い込まれたかや子ちゃんに憐憫を感じています。かや子ちゃんは卯之助のことが大好き。でも、社長に気に入られた卯之助には、高給といいとこのお嬢さんとの縁談が待っている。貧しさと、愛と。かや子ちゃんは時代に流されそこに埋もれてしまうのか。いや、それだけでは終わらせない田辺聖子さんの筆力があるんだよなあ。これはもう、はっきりと衝撃を受けた短編だったと確実に言うことができます。

 

 

 

……しかしね。

 

この短編集、面白かったのよ。田辺聖子さんというひとの、裸の出自が表されているようで面白かった。しかししかーし、読みにくかったのも事実なのよね。

 

なんせ、大阪弁なんですよ。しかも、古い、聞いたこともないような大阪弁。なんか京都弁に近いような……はっきりと核心を突かないような変な言い回し。言いたいことがいまいち伝わらない。映画の字幕を読んでるようでした。「マンハッタンには?」を、「あなたは以前マンハッタンに来たことがあるの?」と頭の中で訳さなければならないような混乱。だから読むのにも時間かかったんだよねえ。

 

一応私大阪生まれなんですけどね……。翻訳に時間がかかった。初期作品だからこそなのかも知れませんが。

 

でも中身はギラギラしたエネルギーに溢れていたぞ!あの気の良いおばちゃんキャラだと思っていた田辺聖子さん。さすがは芥川賞作家、しかもここまで長く人々に愛されているという事実には秘密があったのね!これからも、追っかけていきたいと思います。

 

というわけで、女性作家を追う旅を続けていきたいと思います。

 

ではでは、またっ!

7月がやってきましたね。

 

こんにちは、渋谷です。

 

 

 

今年が半分終わりましたなー。ほんとなら昨日噛み締めたかったところなんですが、昨日は実家に帰っていて噛み締めそこないました。毎年、この「今年が半分終わった」……をしみじみするのが習慣なんですね。うん、この上半期はとにかく本を読んだなあ。

 

小説は2本しか書き上げてない。長編と短編。今書いてる長編がちょうど半分ぐらいまで来ていますが、生産スピード遅いね。プロだってもっと書くでしょうに。7月中には長編を書きあげて、次の話の構想も練り終えたい。うむ。頑張るぞ。

 

さて、本を読んだお話。山本文緒さんの「プラナリア」を読みましたよ。直木賞受賞作。私、この山本文緒さんという方、名前は知っていましたが知ってるだけで特に印象に残るエピソードが何もなかったんですね。本屋で見かけたとか、ネットで書評を見たとかいうこともなくて、まったくの予備知識なく読み始めました。しかーししかし、なかなかにすごい人だった。山本さん、多分すごい頭がいい人なんじゃないかなあ。

 

 

 

この「プラナリア」は短編集で、収録作が

 

プラナリア

ネイキッド

どこかではないここ

囚われ人のジレンマ

あいあるあした

 

となっております。

 

どの作品も、主人公がちょっとヘンなんですね。ヘン……というと語弊があるんですが、性格的に難がある人ばかりです。そういう難のある人が、自分の難がある性格ゆえに苦しんでいる様を淡々と描いています。「プラナリア」の主人公の女の子は、乳がんを克服したにも関わらず、続けられるホルモン療法で肉体的に疲弊しています。だから会う人会う人に思わず言っちゃうんですね、「私、乳がんだからさ」

 

言われた方はぎょっとしますわね。でも彼女は自分が「もう大丈夫だ」と言われることに耐えられません。だってまだこんなにしんどいのに。まだ若い彼女の胸からは乳首がなくなり、大きな傷も身体に残っているのに。

 

周りの善人を自分の苦悩で振り回しちゃう主人公。彼女を突き放すことは誰にもできません。結局自ら周囲に壁を作り逃げ出してしまうのだけれど、そのラストまでの配分が絶妙。主人公の混乱と周囲の困惑が、うまーい分量で描かれているんです。だからこちらも「そりゃこの子が悪いよ」とも「周囲の人間に理解がないねえ」とも思うことができない。なんとも上手な書きっぷりなのですね。

 

 

 

人情ものであったにもかかわらず、面白かったのが「あいあるあした」。一流企業を脱サラして居酒屋を開いた36歳の真島君が主人公。性格は自己中心的で愛想のない大将です。彼の店には「手相を見てあげることで飲み代を相手に払わせる」ほぼホームレスの無職女、すみ江が入り浸っています。

 

真島君は公園で寝泊まりしているすみ江を心配し、家に泊めてあげます。強引に真島君に襲い掛かって家に棲みつくすみ江。彼女はそうやって色んな男に寄生して無職を貫いていたんですね。占いではお金を取らず、飲み屋で同席になるおっちゃんらに服やらなんやら買ってもらって生きているんです。性格は天真爛漫ですが、まあこの子も大分おかしな子よね。けれど離婚して娘と離れ離れになった寂しさを抱えている真島君はだんだんすみ江の虜になってきちゃう。すみ江を束縛しようとしますが、生来の風来坊であるすみ江はそんな真島君を嫌って姿を消してしまいます。

 

たまに面会することができていた娘も、元嫁の結婚で海外に行っちゃうし。何だかやけっぱちの真島君ですが、いなくなったすみ江に再会し、彼女が店の常連客(お金も前歯もないお爺さん)と同居していることを知ります。そこは別の常連客が持っている大きな家だったんですね。「寂しいなら真島君もおいでよ。一緒に住もうよ」その一言で、真島君は自分の都合ですみ江を「かわいそうな女」にしていたのだと悟る。本当はすみ江も、もちろん自分もかわいそうな人間なんかじゃないんだ。ちょっと変わった感性を持つ二人は、これからきっと人々の中でうまくやっていくのでしょう。

 

 

 

 

とにかくね、直木賞というより芥川賞っぽい短編集で、答えの半歩前でお話が終わります。この「あいあるあした」も私の解釈はこうですが、全然わかりやすく登場人物の心情は描かれていないんですね。他の人が読んだら違う解釈になるかも。でも、匙加減がすごく上手だから、「意味分かんない」には絶対ならないし、かと言ってすべてを言いきって読後の余韻を消すわけでもない。この山本文緒さんという人は、理系なんでしょうか。作家さんなんだから当然文系なんでしょうが、この絶妙な匙加減は理系脳なんじゃないかと思ってしまう。もしくは棋士みたいな脳みそしてるんじゃないかなあ。「ああなったらこうなる」を立体的に考えられるような。私にはとても難しいテクニックですが、真似してみたい。

 

大人が読む作品、という感じだった山本文緒さん。面白かったです。この方は他の作品も追いましょう。私もこんな理知的なん書きたいわ。

 

というわけで、7月になったので3週間後には夏休みがやってきますよ!そこまでに長編を書きあげよう!頑張るぞ頑張るぞ。ということで。

 

またねー!

 

第二弾ですよ。

 
こんにちは、渋谷です。
 
 
 
女性作家でこんにちは、の時間です。本日は第2回、瀬尾まいこさんです。
 
今年の本屋大賞を獲られた方ですねー。「そしてバトンは渡された」でしたっけ。読んでないんですが、本屋さんでチラ見したところによると、保護者が入れ替わり立ち替わりする女子高生のお話でしたね。複雑な生い立ちの女の子のお話なのに、とても温かい作品なのだとか。
 
あんまりね……。私の好みではないんだろうなと思ってたんですね。幸せな子の幸せな話を読まされて何なんだっていう。そりゃ良かったねとは思うけど、私にとっては他人の話。困難を克服するような見せ場がないんじゃ食指が動かんわ、と思ってたんですね。
 
でもまあ、本屋大賞の作家さんだし。とりあえずデビュー作でも読んでみよーかなと思って借りてきたこの「卵の緒」。
 
うちの地元が主催の、坊っちゃん文学賞受賞作です。あの賞で華々しいのは「がんばっていきまっしょい」ぐらいだと思ってました。まさか、本屋大賞獲るような作家さんが排出されていたとは。
 
で、「卵の緒」です。この本には、表題作の「卵の緒」と「7's blood」という作品が収録されています。
 
これがなんと、両方とも複雑な生い立ちの子供の話なのよねえ……。
 
 
 
「卵の緒」は小学生の育生くんという男の子が主人公。彼は自分を捨て子だったのではないかと疑っています。これが不思議なことに、特に理由もなくそう感じているんですね。
 
お父さんはおらず、お母さんとふたり暮らし。お母さんとの関係は良好です。近所に住む母方の祖父母にも可愛がられています。それでなんで捨て子疑惑を抱くのでしょう。……まあ、ちょっと過敏な子なのかね。そして学校で「へその緒」なるものの存在を知り、「これで捨て子疑惑がはっきりするぞ!」と勇んで帰宅した育生くん。
 
お母さんに「へその緒見せて!」と詰め寄ると、「いやあねえ、あんたは卵で産んだんだから、へその緒なんてあるわけないじゃない」とはぐらかすお母さん。……えっ、すげえな母ちゃん、そうきたか……!
 
お母さんはまだ若く、18で育生くんを産んだ計算になります。このお母さんが恋をし、職場の同僚と結婚する段になって育生くんに真実を告げる。結局、育生くんはもらわれっ子だったんですね。ラストは新しいお父さんとの間に出来た妹と仲良く過ごす育生くん。うん、良かったね。新しいお父さんがいい人で良かったよ……。
 
 
 
「7's blood」は、異母兄弟の交流のお話。すでに亡くなっている父親が、浮気相手に産ませた子と同居することになった七子。弟の七生は母親が刑務所に入ってしまい、七子の母親に引き取られたんですね。ぎくしゃくする姉弟ですが、七生は男をとっかえひっかえする母親に育てられているので卒がありません。次第にふたりは打ち解けていきます。
 
七子の母親は、七生を引き取った途端に入院してしまいます。やがて亡くなり、ふたりっきりの肉親の絆は強くなるのに、七生の母親が出所して離れ離れになる日がやって来ます。うーん……でもまあ、ふたりともしっかりしてるし。きっと強い大人になるよ。ね、うん、頑張って。
 
 
 
そんなわけで、面白くないわけではなかったのですが、そんなに響かなかった瀬尾まいこさん。文章はしっかりしてますし、実際一気読みだったんですが、おそらくこの人が書きたいテーマが私には遠いところにあるのかと。「他人だって家族になれる!」「人の愛の底力を信じたい!」みたいなのが私、よー分からんのよ。表面上な意味では分かりますが。
 
ああ……そうですか……みたいにしかならない。決して面白くないとは言いませんが、はりきって他の作品を探すかと言えば……ないな。
 
なんかひりつく火傷の痛みみたいなのが好きなんですね、私。あったかい優しいお話、読みたい方にはオススメの作家さんです。
 
というわけで、ごきげんよう〜。

変な人がいた―!

 

こんばんは、渋谷です。

 

 

 

女性作家の色々を読んでみよう、第一弾は本谷由紀子さんです。

 

第一弾って……。どうやらシリーズ化するようですね。早速知りもしない人に手を出してみました。2016年に「異類婚礼譚」という作品で芥川賞を受賞されている方ですが、私は不勉強なもので全然存じ上げていませんでした。1979年生まれ。いやん、同い年やん。

 

元から劇団を主宰して演劇をされていた方のようで、戯曲関係の賞をいくつか受賞されて、その後に小説を書かれて色々と著名な賞を受賞されています。この「嵐のピクニック」は大江健三郎受賞作。大江健三郎よ?ノーベル賞。だから私、重厚な泣ける話でも読めるんじゃないかと思って手にしてみたんですよ。そう思うでしょ?

 

ところがどっこい、この人、さすが演劇をされていた方ですね。短編集なのですが、どれもこれも捻りが利いてて面白い!ほぼ、コメディなんじゃないかなー。もちろん考えさせられる作品やぞっとするようなお話も収録されていましたが、なんか私は笑う場面の方が多かった。しかもその笑いが「……。ふっ」みたいな笑なのよね。げらげらなんかは笑わないんだけど、「なんか、今ヘンなことが起こったぞ」みたいな。

 

「このヘンな感じ、昔なんか感じたことあるぞ。なんだっけ。絶対知ってるんだよ。あれ、なんだったっけ……」みたいなね。その共感するラインがすごいヘンなとこに設定されてるのよ。だから私、少々琴線に触れてしまった。これ、意味が分かんない人には全然謎な世界だと思うんですけど。

 

詳しい話は後程。収録作が

 

アウトサイド

私は名前で呼んでる

パプリカ次郎

人間袋とじ

悲しみのウエイトトレーニー

マゴッチギャオの夜、いつも通り

亡霊病

タイフーン

Q&A

彼女たち

How to burden the girl 

ダウンズ&アップス

いかにして私がピクニックシートを見るたび、くすりとしてしまうようになったか

 

となっております。

 

 

 

まずインパクト大なのが「パプリカ次郎」。とある国の貧しい市場で働く少年パプリカ次郎。まず「パプリカ次郎」てなんやねん。八百屋の孫やからパプリカはまだわかるとしても、なぜ「次郎」。特に兄ちゃんがいるわけでもないのにこのネーミングセンス。

 

パプリカ次郎が働く市場では、不定期にギャング団に追われたアジア人の男と白人女が巻き起こす銃撃戦に巻き込まれます。屋台めちゃくちゃ。市場で働く人々は流れ弾で死んじゃったりします。でもみんな「しょうがないな」とか思ってあきらめてるんですね。それに憤るパプリカ次郎。

 

やがて大人になったパプリカ次郎は自分の屋台を持ち、壊れないよう天幕を丈夫な布にして商売をしていました。するとある日ビルの上空から屋台に降ってくる例のアジア人。ぼいーんと弾けてバウンドしたかと思うと結局屋台を壊して走り去ります。……なんやねんもう。次郎はこのちょこちょこ起こる破壊劇の真相を探ろうとしますが……。

 

……うん、もういかんね。それ、ジャッキーチェン辺りがロケしよるよね。しまいには駆け抜けるジャッキーを見かける度に、オーバーアクションをすることを心得始めるパプリカ次郎。なんだこれ!めちゃくちゃな世界観がほんとに舞台の一幕のようです。

 

 

 

あと本気で笑ったのが「Q&A」。女性のカリスマとして女性雑誌のご意見番を長年務めてきたおばあさんが、引退を胸に最後のインタビューに挑みます。これが、風刺が効いてて笑っちゃう。

 

今まで何十年も女性の悩みを聞いてきましたが、結局女の悩みなんて「好きな人から連絡がこない」「浮気されている」「セックスしてもらえない」「彼氏がクソ」のうちのどれかに分類されます――だって。その後の読者のお悩み相談コーナーも面白かったあ!

 

Q暴力を振るう彼氏とどうしても別れられません

 

A決闘を申し込みましょう

 

そ……そうか!せやな!暴力には暴力や!これは目からウロコ!こんな調子で面白かった短編です。

 

 

 

あと最後の「いかにして私がピクニックシートを見るたび、くすりとしてしまうようになったか」もヘンだった。高級なセレクトショップで、3時間も試着室から出てこない客。店員にあれこれ持ってこさせ倉庫の服を全部着てもお気に召さない。この中に入ってるのは一体何なのか。しまいには一晩粘る謎の客に、店員さんはついに試着室にロープをつけて往来を引き回し始めます。この先に私の気に入りの店があるんです!こうなったら意地でもお気に入りの一着を見つけましょう!私は必ずお客様に喜んでいただける服を見つけますかーら……!

 

……あほくさ笑 うすた京介のマンガみたいやん。この本谷さんて方は面白い人ですねー。もちろんおかしい話ばっかりではなかったんですが。「マゴッチギャオの夜、いつも通り」とかちょっとぞっとさせられたし。「How to burden the girl 」とかめっちゃぎょっとしたし。

 

いやー、この人面白い。同い年ということもありますが、多分同じクラスだったら仲良くなってたタイプの人ですね。笑いのツボが一緒。ビビるツボも嫌な気持ちになる基準もたぶん似てる。面白い人を発見してしまいました。

 

その他の著作も読みましょう!あ、もうすぐ明日。夫がまだ帰ってこーん!私はもう眠いのですが。

 

もうちょっと起きて待ってましょうか。では、おやすみなさいー!

BUCK-TICKだよBUCK-TICK。

 

こんばんは、渋谷です。

 

 

 

もうこのところBUCK-TICK熱が止まりません。中学の時にハマってテープで聴きまくったBUCK-TICK。まさか30年近くの時を超えて今更再ブームの時を迎えるなんて思ってもいませんでした。いやもうこれが良すぎて良すぎてねじ切れそうになってるここ最近。

 

2000年代に入って、バンド的にも低迷期を迎えていたと思うんですよね。それでも活動を続けていたBUCK-TICK。コアなファンはいたかと思いますが、そのころのアルバムって聞き返してみてもちょっと熱が足りないような気がするんですよね。私的には、復活の狼煙が上がったのは2016年の「アトム未来派NO9」からなのではないかと。もう最高。私は離脱期間が長かった人間なので、評論するようなおこがましいことはとてもじゃないけど言えた義理じゃないんですが。全然リアルタイムで活動追ってないし。

 

なんつっても「New World」にハマってしまったんですよねえ。名曲。本当に名曲。何の因果か、こないだすばる文学賞に出した作品のタイトルは「新世界」。New Worldやーん!やっぱりあっちゃん大魔王から逃げることなんて不可能やーん!その上椎名林檎ちゃんとMステ出るしさあ……もう逃げられない。BUCK-TICKに舞い戻ってきてしまったわ。

 

Spotifyで音楽を聴いているんですが、ヘビーローテーションしているプレイリストの内容がこちら。

 

New World

…IN HEAVEN…

BAVEL

駆け落ち者

Future song 

他にも「さくら」とか「美醜love」とか「ICONOCLASM」とか「ゲルニカの夜」とか大好きな曲はいっぱいあるんですが、小説書いててテンションが下がらない曲だけを選んで並べてみています。やっぱNew Worldが一番滾るね。滾る。「BUCK-TICKとかどんなバブルの遺物やねーん!イカ天か!」と思われるかも知れませんが、あの人達進化してるんです。50代にしてMAX。ほんとーに曲も歌詞も歌もあっちゃんも芸術作品だから。あーライブ行きたい。イエモンより林檎ちゃんより今の私はBUCK-TICKやな。櫻井敦司に触れるなら死んでもいい。

 

はあああ……落ち着きましょう。今パソコンの横にスマホ据えてYouTube見てるのね。興奮してしまうわ。この興奮をご存じでない方はぜひYouTubeでどうぞ!公式でPVを垂れ流してくれています。いよっ、太っ腹!あ、そうだ。New World張っとこう。

 

 

 

 

自分が作り出すもので見る人がこんなに喜んでくれたら、それって本当にうれしいことですよね。私もそういう表現者になろう。なろうなろうそうしよう。

 

というわけで、今日は吉本ばななさん。山本周五郎賞受賞作、映画化もされた「TUGUMI」です。

 

 

 

語り部の名前はまりあちゃん。19歳の女の子です。この子が主人公、なのかなと思いきや、彼女はただの語り部。本当の主人公はまりあちゃんの1歳年下のいとこ、つぐみです。彼女は病弱でしょっちゅう床についています。だから弱々しいキャラなのかと思いきや、大間違い。猟奇的なまでに性格の悪い美少女です。映画では牧瀬里穂さんが演じておられました。

 

つぐみのおうちは西伊豆で旅館をしています。まりあちゃん(映画では中島朋子さん)はお母さんと共にその旅館の隣に住んでいるんですね。つぐみの母親とまりあちゃんの母親は姉妹です。まりあちゃんちはお父さんが妻帯者で、謂わば日陰の身。でもお父さんは週末ごとに西伊豆訪れてくれます。なんせこの海辺の情景と、まりあちゃんを囲む人々の人情が美しい。

 

皆が優しくて、まりあちゃんの人生には美しい時間が流れます。でもそこでひとりエキセントリックなのがつぐみ。口が悪く人の心を折るようないたずらを仕掛け、すぐに熱を出して寝込みます。つぐみには人生の時間は多く残されていないと周囲の人間は考えているので、そんなつぐみに寛大。だからつぐみはどんどん増長して、酷い仕上がりのおてんば娘になり上がります。

 

でも、まりあちゃんとつぐみの姉の陽子ちゃんはそんなつぐみをうまく操縦するんですね。酷いつぐみも周りの愛情に支えられ、死と隣り合わせの恐怖の中にあがきながらも成長していく。そんな西伊豆に、ある夏恭一、(真田広之)という青年がやってきます。彼とつぐみは恋に落ち、生まれて初めての主体的な恋に少しずつつぐみが変わっていく……というのがこのお話のあらすじです。

 

 

 

そんなにね、大きな事件は起きないんです。恭一が地元のヤンキーとやりあって、恭一の愛犬が殺されてしまう、という悲劇は起こりますが。それに仕返しをしようとするつぐみ。別にバイオレンスに発展することもなく、淡々と仕返しがなされる。つぐみはその奮闘のせいで高熱を出して生死をさまよいます。死の淵を覗いたつぐみが、まりあちゃんに残した手紙でラストは締めくくられます。

 

まったくもって、つぐみのエキセントリックな人間性と西伊豆の綺麗な自然を、吉本ばななさんの筆で切り取っただけの作品です。サスペンスやミステリーや感動を求めて読むと物足りないかな。でも、本当に美しいお話でした。吉本ばななさんって手元のものを3倍は綺麗に書く才能があるよなあ。海の透明感や旅館の畳の清潔さなんかが目に浮かぶようでした。私も夏の景勝地でひと夏を過ごしたような気分になりましたよ。……こんなのは、なかなか私には書けないだろうけどなあ。

 

これから、色んな女性作家さんの作品を読もうと思ってるんですね。全然知らない人にもチャレンジしてみようと思ってます。だって私も女性作家になるんだもん(どーん!)。どんな作品を書く人が周りにいるのか、知っておかなきゃいけないし。

 

そんなわけで明日も積み重ねるのみですな。ではでは、おやすみなさいっ!