読書感想文162 今村夏子 こちらあみ子 | 恥辱とカタルシス

恥辱とカタルシス

作家志望、渋谷東子と申します。
よろしくお願いします。

あーちょー怖いわ。

 
こんばんは、渋谷です。
 
 
 
 
一気に読みきったー。夫がなんか急に仕事に出たからのんびり本が読めたってのもあるんだけど。
 
今村夏子さんの「こちらあみ子」を読んじゃった。太宰治賞受賞作。この「こちらあみ子」でデビューされ、この短編と「ピクニック」を収録した「こちらあみ子」で三島由紀夫賞を受賞されています。
 
分かります?現れていきなり太宰治に三島由紀夫よ。純文学の申し子じゃん。その上芥川賞。太宰に三島に芥川。三冠王。すごいですね。私のひとつ下の39歳の、柔らかい印象の女性なのですが。
 
尊敬です。で、「こちらあみ子」。
 
これはねー、怖いわ。死ぬほど怖い。
 
子供を育てた経験のある人には、本気で恐ろしい世界を、ひょいっと簡単に書き上げた作品です。これをほいっと書けちゃう今村さん、どんだけ、どんだけの人なんでしょうか……!
 
 
 
 
あみ子ちゃんはちょっと変わった女の子。ちょっと……いや、かなり変わってるんですね。はっきり言いましょう、おそらく彼女は発達障害なんです。
 
発達障害の中でも、かなり深刻な度合いの子なんじゃないかと思います。あみ子ちゃんに視点を合わせて描かれている作品なんですが、酷いよ。ほんとに、あみ子ちゃんは周りから見るとひどい。
 
授業中にやだなと思ったら帰っちゃったり。人の気持ちを類推することができなくてキモがられたり。急に叫び出したり、授業中に座ってられないとかいう次元じゃないんです。いきなり授業中に大声で「お化けなんてなーいさ、お化けなんて嘘さ」なんて歌いだしちゃうような子なんです。でも、あみ子ちゃんには一ミリも悪意はありません。
 
あみ子ちゃんのお母さんは後妻さん。自宅で書道教室をしているしっかり者の女性です。あみ子ちゃんが変わった子であることも認識したうえで、彼女をありのままに育てようとし、愛してくれているんですね。
 
なのにあみ子ちゃんは、お母さんとお父さんとの間に出来た子供、自分の妹か弟ですね、その子が死産であったんですが、それに対し、お母さんにこんなプレゼントを差し上げてしまうんです。その辺りにあった木の板に「弟の墓」と書いたものを渡しちゃう。金魚の墓とか、ポチの墓みたいな木の板に書いたやつですね。それを「お母さん、元気出してね!」みたいな意味でプレゼントしちゃう。悪意はないのよ!ないけど、あんまりにもあんまりなのよあみ子ちゃん……!
 
 
 
 
ええと、真面目な話になるんですが。
 
うちの子供が通ってる学校にですね、似た感じの子がいるんですね。クラスにふたり。と言うか、特別学級のお子さんもお二人、同じ教室で学んでいます。このお子さんたちにはおひとりにひとり先生がついています。そのほかに、あみ子ちゃん的な子がふたりいるのね。その子たちは男の子なのですが、私はすごくなんか怖いなと思っています。
 
正直な気持ちです。だってうちの子の顔に、唾吐きかけてきたりするんだよ?黒板消しで顔殴ってきたりするんだよ?うちの子が泣いていたという話を、見守りのママ友さんが教えてくれたりするの。先生はノータッチだから、私の方から「気をつけておいて頂けますか?」とお手紙を書くんです。だって、私の子供はそういう風に粗末に扱われていい存在ではないのですから。
 
うちの子はされていませんが、ヒモで女の子の首を絞めたりするんだよ?傷害事件だよそれって大人がやったら。でも先生はノータッチ。そら、被害者の親はいい気はしませんわ。当然です。私だってそんなことされたらブチ切れますから。
 
幼稚園の時にも、言葉が遅いお友達はおられました。でも、その子のお母様は年少の時点で専門の病院にお子さんを連れて行かれました。で、ずっと療育に通われて、その子はかなり発達を取り戻したんですよ。その例を見てる私としては、特別学級のお子さんも見ている上で言えば、私の子供に危害を与える子を優しい目で見ることはできない。
 
でもねえ、そのようなお子さんの親御さんのお気持ちを考えてもみるんですよ。辛いだろうなあと思う。だから、声高に責める事なんてとてもできない。
 
私にとって、傲慢な言い方かもしれませんがそれがあみ子ちゃんの親御さんなんですね。継母であるお母さんは心を病み、お兄ちゃんはグレ、お父さんは、現実から目を逸らそうとしてしまうのです……。
 
 
 
 
あみ子ちゃんは、ありのままで育ったゆえに周囲に爪はじきにされたまま、中学を卒業し、おばあちゃんが住む田舎に厄介払いをされます。そこは静かな優しい場所。あみ子ちゃんはやっとかき乱される騒音のないそこで、静かな生活を得ることになります。けれど彼女の未来には光はない。
 
どうして彼女の未発達を放っておいたのでしょう。親御さんの罪なのではないか。私はそう思いました。今、世の中では「生き辛い大人」、「発達障害」というワードが叫ばれています。私も多分、診断を受ければ何らかの病名がつく人間なんだろうと思います。でも、もう大人だから処世術を得ることができなんとか生きています。けどさ、ここに至るまではほんとに大変だったんだぜ。
 
どうしてあみ子ちゃんを放っておいたんだろう。この悲しみ。そして、我が子がそんな子だったら。この恐怖。それに支配されていた短編でした。あみ子ちゃん目線で書かれているからなんかのんびりしてるけど、とんでもない。これは相当なホラーです。
 
発達障害に対し、偏見を持っているわけではありません。自分も少なからずそういう人間だと思うからね。でも、我が子に危害が及ぶ段階で、「仕方がないわよねー」なんて言ってられませんから。私は自分の子供を守る気しか持ってませんから。
 
そういう意味で、ほんっとに怖い作品でした。「こちらあみ子」。色んな人に読んでほしいと思うな。これは、衝撃作と言っていいと思う。
 
 
 
 
はー、夫も帰って来たし寝ようか。あーびっくりした。驚いた。ま、うちのクラスの問題は、保護者の皆さんで情報共有をしようということになってまして。
 
先生が動く気がなさそうなんでね。まあ、先生としても動きようがないんでしょう。だから親としてできることは、「何かあったら言いなさい」「誰かが何かされていたら助けなさい」それしかないんだもの。
 
うん、以上!衝撃の今村さんでした。あ、「ピクニック」も怖かったよ!なにが「ピクニック」やねん!この人、ホントに怖い人なんかも知れん。
 
というわけで他のも読みます。では。
 
おやすみなさいー!