うーん、時代ですかねえ。
こんにちは、渋谷です。
前回「消費される小説と残る小説がある気がする」って言ってたじゃないですか。うん、そりゃ「残ってる」小説を読んでみにゃならんなというわけで、昨日は図書館に行ってみました。
と言うか、二日に一回は図書館に入り浸ってるんですけどねえ。なんか好きで。借りなくても図書館に足が向いちゃう。本屋も楽しいんですが、図書館には座れるスペースがあるのがいいよね。
でまあ、古典と言われるものも読んでみようかと数冊借りてきました。ここには書かなかったんですが(厳密に言うと読書したと言えない分類の本かなと思って)桜庭一樹さんの「小説という名の毒を浴びる」という書評集みたいなのを読んだんですね。桜庭さんという人は大変な読書家なんですが、主に読まれてきたのが海外文学なのだそう。
だからその辺も読んでみたいなと思いつつ。私の海外文学歴と言えばホームズ、ルパン、ポアロ、若草物語赤毛のアン辺りの児童文学、大人になってシドニイシェルダン、スティーブンキングぐらいですかねえ。全然読んでないの。だからどんな人がいるのか、何が面白いのかも全然わかってない。
とりあえず、普遍的なのを読んでみようと思って手にしたのが、「星の王子さま」。子供向けのように見せかけて大人向け、大変深い話だということでしたので読んでみたんですが、これは結構、暗い時代を反映した話なのかも知れない……。
とあるパイロットの男が飛行機の不具合で砂漠に不時着します。怪我はありませんが飛行機は飛びそうにありません。手持ちの水は8日分。さあ困ったぞ、と思っているところに、小さな男の子が現れます。
こんなところに子供がいるわけないじゃないか、と男は思うんですが、彼は実在としています。そして男に「羊の絵をかいてよ」と頼むんですね。意味分かんねえなと思いつつ、男はポケットのペンとメモで少年に羊の絵を描いて見せます。物体としては紙でしかないその絵に王子さまは満足し、ふたりは友人になっていくのです。
共に砂漠で過ごす中で、王子さまは別の星からやって来たのだと話始めます。王子さまの星はとても小さくて、王子さまはそこでひとりで暮らしています。ある日星にバラの花が咲きました。王子さまはバラを好きになるんですが、バラは結構なツンデレで王子さまにあれこれいちゃもんをつけるんですね。バラはしゃべるんです。王子さまは好きになったバラと反目してしまうことが辛くて、星を後にします。そして様々な星を旅して、7つ目に地球に降り立ったというわけです。
そっからね、王子さまが降り立った色んな星の話になっていくわけです。まず最初が王様がたった一人で治めているひとりぼっちの星。王様はえばる相手を見つけて大喜び。一生懸命王子さま相手にえばりますが、もとよりひとりぼっちで暮らしているわけですから、えばる必要なんかなかったんですね。王子さまは嫌だなと思ってこの星を後にします。
次の星にはうぬぼれ屋の男が、これまたひとりぼっちで住んでいます。うぬぼれ屋もやっと自分を称賛してくれる相手が現れて大喜び。「俺ってイカスだろ?カッコいいだろ?」と猛アピールしますが、王子さまは「褒められることに何の意味があるんだろ」と首を傾げてここも出立。
……そういう風に、欺瞞に満ちた大人たちが住む星を、王子さまは首を傾げて通り過ぎていくんですね。星の数を数えて、誰も所有していないその星々は自分のものだから、管理するために数えているというビジネスマンや、酒浸りの自分が恥ずかしくて、そんな自分の姿を忘れるためにさらに酒に溺れる男、過去に決めたルールを曲げることなど考えず、自転が早くなった星で街灯をつけたり消したりしている点灯夫などがいます。うん、そらおかしいわな。おばちゃんでもそんな人たちと関わり合うのは嫌です。
王子さまは語り終え、とうとう水を切らした二人は井戸を求めて歩き始めます。井戸を見つけ、渇きを潤す二人。王子さまは出立の日からちょうど一年が経ったのだそうです。王子さまの星が空の一番近いところに巡ってくる。
地球に来て出会った狐に、王子さまは「俺にとってお前はいっぱいいる人間の中のひとりだけど、仲良くなったら唯一の存在になるんだぜ」と教えられていました。地球にはたっぷりバラが咲いていましたが、自分の星のバラは自分にとってかけがえのないたったひとりの存在だったんだと王子さまは気付きます。
よーし、帰ろう!と思い立った王子さま。毒蛇に噛んでもらって魂だけになって、軽くなって星へと帰っていくんです。
……うーん、言いたいことは非常によく分かります。「肝心なことは目では見えない」、有名な名言ですが、これを言ったのは王子さまじゃなくて狐でしたよ。この狐が一番真理を知ってるな。
この作品が書かれたのは第二次世界大戦中だそうです。冒頭に「この本をレオンに捧ぐ」とありますが、このサンテグジュペリのお友達はユダヤ人だったそう。そういう暗い時代背景だから、生まれた話なのかな。
けっこう、ただの童話なんですよ。地球までの6つの星をめぐってる辺りとか。「裸の王様」とか「クリスマスキャロル」とか「賢者の贈り物」的な。
でも、狐の言う「お前はいっぱいいるただの人間だけど、仲良くなったらかけがえのないたったひとりの人になるんだよ」というメッセージにはけっこうな意味がある気がします。「ユダヤ人」とひとくくりにすると記号でしかありませんが、仲良くなったらその人はもうただの「ユダヤ人」ではなくなる。
こんなこと、もう分かりきったことなんじゃないかと思うんですけどね。最近はすっかりマイノリティに優しい世の中になりましたし。でも、まだ民族差別とか経済戦争とか領土問題とか言ってるもんなあ。そう考えるとやっぱりこのお話から学ぶものは多いのかも知れません。
うーん、やっぱり一回宇宙人にお出ましいただくしかないで。地球の中で争ってる場合じゃないと目を覚ますようなことが起こらないかん。日本人とか韓国人とかこまいこと言ってるんじゃなくて、地球人として団結すべき事態が起こらんといかんのかも知れん。
できれば、優しい宇宙人に来てほしいなあ……。星の王子さまみたいな。あ、綺麗にまとまった。というわけで。
またっ!