読書感想文155 窪美澄 水やりはいつも深夜だけど | 恥辱とカタルシス

恥辱とカタルシス

作家志望、渋谷東子と申します。
よろしくお願いします。

あと一週間ですー。

 

こんばんは、渋谷です。

 

 

 

夏休みもあと1週間よー。今日は小学校の掃除に参加してきました。

 

なんか夏休み前にプリントが入ってたのよね。「8月25日に学校の掃除をするよ」と。

 

だから「手伝いに来てよね」と。

 

私は素直だから軍手やら雑巾やら持って行きましたよ。子と。そいで、学校に行ってみたらクラスの半分も人来てないんでやんの。

 

うちのクラスは8家族ぐらいでしたかねえ。ああいうのって、言われたからって絶対行かなきゃいけないってわけじゃないのね。しかも私、内容が分かってないから、ロングスカートに素足にヒールで行ったのよ。日傘差して。自分用の上履き持ってさ。

 

そしたらみんなジャージにスニーカーに帽子だった。そして与えられた仕事は運動場のトイレの掃除。虫だらけ、ゴミだらけ。水でびちょびちょ、それが終わったかと思いきや、今度は芋畑で雑草を抜かされる。

 

全身どろどろのぐっちゃぐちゃやーん!なんやねんもう!腹立ちまぎれに知ってるママさんに「結構人集まってないんやね。みんな、来ようと思わんのかな?」と愚痴ってみると。

 

「……仕事してるママさんもいるから。みんな、忙しいんじゃない?」

 

とさらっと言われましたとさ。そっか……。そしたらもうなんも言われんな。大体ボランティアなんだから、文句言う方がおかしいんよな。掃除なんだからジャージで当然だっての。分かってないとんちんかんな母親として本日の私は先生の記憶に残ったことでしょう。

 

でも、全校で校庭に並んだ時に、二年生の列が異様に少なかった。なるほど、一年生の初の掃除で私みたいに文句垂れて、「来年は絶対に行くもんか!」となった人が多々いたのでしょう。うん、わかる気がする。とにかく疲れたわー。でも、そんな夏休みもあと一週間。

 

早く私だけの世界を構築したい。頭の中に私だけの世界を作り上げたい。あと一週間。9月が待ち遠しい。

 

と、いうわけで今日も本を読んだ。窪美澄さんの「水やりはいつも深夜だけど」。

 

いわゆる「専業主婦、兼業主婦」問題も出てきていましたね。色んな人の心のもやもやを描いた作品、うん、興味深かったです。

 

 

 

この「水やりはいつも深夜だけど」は短編集で、収録作が

 

ちらめくポーチュラカ

サボテンの咆哮

ゲンノショウコ

砂のないテラリウム

かそけきサンカヨウ

 

となっております。

 

すべてのお話、登場人物は別で、それぞれに関連性はありません。ですが、多分舞台は同じ街なのかな。昔は下町に近いような場所だったけど、最近は低層マンションなんかが増えて高級住宅地と言われる場所になった街。

 

そんなところには「ちょっと宅はよそ様とは違うんざーます」みたいな人が住み始めるんですね。そんなママ友との関係に悩む話が「ちらめくポーチュラカ」。

 

そんな簡単な話じゃないんですけどね。私も経験したので「あるある」と言いながら読みましたが、キラキラ系ママへの嫉妬とか。保育園ママを見下す幼稚園ママとか。子供を介すると急に垣根がなくなって、友達に「ならなきゃいけなくなる」面倒さとか。子育て中のママさんならだれもが「わかるわー!」と膝を打つのではないでしょうか。

 

「サボテンの咆哮」は、そんな高級住宅地に引っ越したある一家のお話。育児ノイローゼになった妻を慮り、妻の実家の近くに引っ越したある男。出来る範囲で家事も育児も手伝って、気遣っているのに妻は実家に入り浸りになってしまいます。

 

子供はなんか義実家にばっかなついてるし。俺には微妙になついてないし。とか思ってたら嫁が「二世帯住宅建てんだけどー」とか言ってくる。義両親は嫌いじゃないけどそんなのって息苦しいじゃん!まるで俺が嫁を育児ノイローゼにしたダメ夫みたいじゃん!

 

そんなわけで不倫に走ってしまう夫。……これもあるあるですな。まあこの旦那さんは家族の元に戻るのですが。気持ちはわかるよ。あんたは悪くない。

 

 

 

そんな風に、家族のお話が収められた短編集です。知的障害の妹をもったある母親が、自分の娘に障害があるのではないかと思い悩む話とか。出来婚を悔やみ、「あん時に嫁が妊娠さえしてなきゃ、俺だって逆玉乗ったり若い女抱きまくったりして楽しく暮らしてたのになー」とか不埒な思いに苦しめられる男の話とか。

 

生きてて、結婚する、子供を持つって選択をした時に、こういう思いに苦しめられる人っていうのは少なからずいると思います。「あるある」」を鮮やかに描き出した作品でした。……でも。でもね。

 

この短編集、どの話もぜーんぶハッピーエンドなんですよ。みんな色々思い悩むんだけど、なんか結局元さやに納まったり、最終的には明るい明日が待っている。

 

……でもさあ、現実ってそんなにうまく収まるもんじゃないよね。ていうか、そこんとこをぶっ壊してきたのが窪さんの作風だと思うんです。今回のこの短編集は、どの登場人物も社会的に破綻する前に自分の過ちに気付く。修復し、日常が帰ってくる。

 

逆に、そっちの方が現実的と言えるのかも知れませんけど。「ハッピーエンドの話を書く」と決めて雑誌連載を始めたのだというのがよく分かる作品集でした。一言で言えば、物足りなかった。

 

 

 

最近とみに思うのですが、「小説作品」として、消費されるものと残るものがあるよね。それってまあいわば、ビックネームの文学賞とったとか、そういうことになるのかも知れませんが。でも賞獲りものと獲ってないものを読み比べてみると分かる。「消費されるだけ」で消えてしまう作品っていうのは間違いなくある。

 

決して賞獲りでなくても、深く心に刺さる作品もある。そういうものを書きたいなと強く思いました。……お、偉そうか?偉そうだな。うん、まあでもそう思ったんだからしょうがない。

 

さあ明日から最後の一週間。宿題も大詰めです。我が子の読書感想文はどうなる?なんとかうまいこと、誘導したいと思います。

 

ではでは、おやすみなさい!