台風でございますね。
こんにちは、渋谷です。
台風がやってきておりますよー。どうやらただいま愛媛県に上陸している模様。しかし松山はそよりとも風が吹いておりません。雨もしとしと降ってるだけ。
高知は昨日結構は風だったんですけどねー。昨日のうちにこっちに帰って来たら、もう全然台風の影すらありません。
松山、中予地方というんですが、この辺りは石鎚山に守られてまったく台風の被害が及ばないんですね。私は高知から嫁に来たんですが、何にびっくりしたって松山の家って雨戸がないんだよ。雨戸ないと台風の時どーするん?ときくと、夫は「台風なんか来んもん」とのこと。
うそー、台風は来るって。だって高知に来るんやから隣の愛媛にも来るやろ、と思っていたんですが、本当に来ないんですわ。いや、来るのは来るんだけど、雨も風も大したことない。南予なんかに行くとその限りではありませんが、とにかく今日も平穏な一日が過ぎていきます。
この後も勢力は衰えずゆっくり進んでいくようですので、どうぞ進路に当たる先の皆様はお気をつけてお過ごしください。交通機関も止まってるようですし、家から出んのが一番ですね。うちの親戚も帰省してきていましたが、もうお盆明けるまで帰るのあきらめるって。うん、正しい選択だ。
と、いうわけで私はめんどい親戚関連の行事も終了し、松山の自宅で読書読書。宮尾登美子さんの「仁淀川」を読みました。
今書いてる話が高知が舞台なので読んでみたんですが、うーん、やっぱり、古い作品って持ってる重厚さが違うわあ……。
私は知らなかったのですが、この「仁淀川」は「櫂」「春燈」「朱夏」に続く、四部作の最終巻だったんだってね。「仁淀川」で主人公の綾子ちゃんという女の子が宮尾さん自身で、ご自身のご両親からの一族の日々を、自伝的に書き連ねたものがこの四部作なんだそうです。
じゃあもうその三冊も読まなあかんやん……。うん、読む。図書館で借りてきて読む。まあ他にも読みたい本が詰まっているので、すぐにというわけにはいかないかも知れませんが。
綾子ちゃんは高知のお城下の生まれ。お父さんの岩伍さんはいわゆるヤクザ上がり……とでも言いましょうか、女衒に近いようなお仕事をされている方です。身を売らなきゃ生きて行けない女の子に、色町でのお仕事を斡旋する紹介人。このお父さんと喜和さんというお母さんに育てられたのが綾子ちゃん。喜和さんは実は岩伍さんの後妻さんで綾子ちゃんの生みのお母さんではありません。でも綾子ちゃんは喜和さんに大変に懐いていました。
やがて岩伍さんと喜和さんが離縁するにあたり、大好きな喜和さんと離れ離れになってしまう綾子ちゃん。やけっぱちになった綾子ちゃんは17歳で職場の同僚要くんと結婚を決めてしまいます。要くんは大変な山の中の農家の長男なんですが、さあ、都会育ちのお嬢様である綾子ちゃんに、田舎の嫁が本当に務まるのでしょうか……。
ざっくり言うと、破天荒な都会の嫁綾子ちゃんが、田舎に嫁ぎ慣習の違いに苦しむ話です。また、わだかまりを捨てきれなかった父との関係、義理の母でありながら誰より愛した喜和との関係、相容れぬものがありながら仕えると決めた姑いちとの関係などに、もまれながら強くなっていく綾子の姿が描かれています。一大ホームドラマですな。「おしん」とかあのあたりに近いものがありますね。で、これがほぼ自伝なのだというから真実味がありより引き込まれる。いやー、田舎の嫁ってホントに大変やったんやな。
特に要くんのおうちは小作農だったので、田畑はもちろんのこと、養蚕や養鶏やサトウキビ育てて精糖までしなくちゃならなくて、朝から晩まで大忙しです。嫁ももちろん働き手ですので、のんびり子育てだけしたりなんてしてられません。朝は4時に起きて裸足で土間に飛び降り、夜9時にやっと晩御飯で座敷に上がるまで、ずっとどろんこの足で田畑を駆けまわるんだって。……あーやだ。無理無理。私、現代に生まれてほんと良かったああ。
特に綾子ちゃんのお姑さんのいちさんは、早くに旦那さんを亡くして、農業で三人の子を育てながら、自身の舅の面倒まで見ちゃう女傑です。綾子ちゃんは高知市内の色町で、お茶やお華を習いながら育ったお嬢様。けどまあ色々と苦しみながらも、綾子ちゃんもやっと一人前の母親になって来たなあと思った終盤。
いきなり話は終わってしまうんですね。ドラマの「――それから15年後」みたいになって。しかも綾子ちゃんたらいきなり借金もつれになってるわ、離婚してるわ、子供連れて夜逃げするわで、そこに至る原因も全く書かれてなーい!どうした綾子ちゃん、君の人生に一体何があったんだ!
で、結局この夜逃げの先は東京で、綾子ちゃんは文筆家として身を立てていくことになるんだそうです。それで書いたのが「櫂」。この作品は太宰治賞を受賞します。なるほど、ほんとに私小説なわけだ。しかし、よっぽどドラマがありそうな離婚の原因とか借金の原因とか、その辺を教えて欲しかったよ……。気になるわあ……。
とにかく、この「仁淀川」のまえの三冊を読まんことには、この作品のすべては語れないな、と思いました。一冊ずつ独立してるお話にはなってるようですが、一連の流れがあって初めて得られる感慨、みたいなものを私、すっ飛ばしちゃってる感じなので。
読もうと思います。昭和初期の高知の世相を知れたのはとても勉強になりました。自分の作品に生かしていきたいと思います。と、いうわけで。
どうぞ台風にお気を付けくださいねー!