こんにちは、渋谷です。
昨日は「色々面倒くさくていやんなっちゃってるんですよ」という話をしたじゃないですか。盆で親戚付き合いがやだやだやだっつって。……そしたら。
なーんと子供が熱出した!夏風邪です!こりゃどこにも行けません!えらいこっちゃ、面倒くさいこと全部スルー!
……こないだ、「雨ん中キャンプなんかしてらんねーよ」と呟いた私の目の前で、テントのポールが折れたしさ。もうこうなるとなんかすごいわ私。すごいっちゅーか怖いわ。
昔から、よくあるんだよねこーいうの。……呪い?いやいやいや、普段の行いがいいから神様が特別のご配慮を下さっているのです。子供も熱はあるけどぴんぴんしてるし、「そっか。嫌か。じゃあ行かなくていいよ。うん、もう行くな行くな」と神様が采配を振るって下さったに違いないのです。
と、いうことにしておきましょう。ありがたやありがたや。ま、実家には日帰りぐらいで帰ることになりそうですが、とりあえず難関は乗り越えた。良かった良かった。なので心安らかに本を読みました。岩井志麻子さんの「ぼっけえ、きょうてえ」です。
岩井志麻子さんと言えば、豹の格好してる変わったおばちゃんですよ。見た目もアレですが、発言もなかなかにアレな人ですね。……アレ。アレですわ。正直、若干引き気味に見ておりました。だって……あまりにアレが過ぎるんですもん。
でも、ホラーを書こうとするならこの人の作品は読んでおくべきだろうなあと思って、手に取ったこの「ぼっけえ、きょうてえ」。岩井さんのデビュー作である「ぼっけえ、きょうてえ」を含む、短編集となっております。
収録作が、
ぼっけえ、きょうてえ
密告函
あまぞわい
依って件の如し
の四篇です。
岩井さんという方は、この「ぼっけえ、きょうてえ」で日本ホラー小説大賞を受賞する以前は、別名義でなんと少女小説家として活躍されてたんだそうです。女豹が……少女小説。コバルトで書いてたんだって。それが、大賞をとって一般小説を書かれるようになったんですね。そして今のようにタレントさんもなさるようになって。
「ぼっけえ、きょうてえ」というのは岡山弁(……というのかどうか分かりませんが)で「すっごく、怖い」という意味なのだそう。
うん、実際、怖いというか、超ぞわぞわした!
表題作は、女のひとり語りで展開していく短編です。時代は明治中期。岡山の女郎屋の一室で、寝物語に女郎が話す身の上話。独特の柔らかい方言で語られるのは、女のあまりにも悲惨な半生。
母親は子供を間引くのが専業の子潰し婆。父親は知能が低く動物的で、女を夜な夜な犯します。家は貧しく村八分で、しかも父親と母親は、元を正せば血が繋がった兄妹。……うーん、またエグい方の近親相姦だ。なんとも嫌な話ですねえ。
父親が不慮の死を遂げ、母親は女を郭に売り飛ばします。実の兄である父親に抱かれる娘に、嫉妬心を抱いていたんですね。……もうねえ、なにがなんだか。でも、昔の貧しい寒村ではこんな話は結構あったのかもねえ。だって、他に楽しいことなんかなんにもないしさ。
そして売られてきた女は、唯一心を開いてくれた同僚の女郎に、大変な罪を着せて口封じに殺してしまいます。実は父親を背後から殴り付け、川に突き落としたのもこの女。ふたりもの人間を殺したこの遊女の結い上げた髪の中には、彼女を殺人へと追い立てた、恐ろしい恐ろしいもうひとつの人格が隠されているのです……!
楳図かずおの世界です。昔読んだなあ。結論を言えば、女の頭皮には人面瘡ちゃんが生息してるんですね。時代がかった岡山弁で散々悲惨な人生を聞かされた後に、人面瘡が出てくるとさすがにぎょっとするよー。
ちょっとミステリー色もあってね、女がひとりしゃべってるだけの話なのに、まるで一本の映画を観たようでした。これがたった60枚の短編だというのだから、すごいなあ。
他の作品も貧しい岡山の各地を舞台にした、明治期のお話でしたが、どれもぞわぞわする恐ろしさがあった。この人が書くホラーは、お化けが怖いって言うより、「人間が怖い」。いいね。今私が書きたいやつです。いいお手本を読んだと思います。
面白かったです。岩井さんの他の作品も読んでみたいと思います。さて。子の具合でも見てきましょうか。
ではでは、またっ!