読書感想文144 坂東眞砂子 狗神 | 恥辱とカタルシス

恥辱とカタルシス

作家志望、渋谷東子と申します。
よろしくお願いします。

おお……地元やった……。

 

こんばんは、渋谷です。

 

 

 

さあ新しいお話を書き始めておりますよー。狗神憑きのホラー的ミステリー。全15章のうちの1章めの半分って感じですかねー。でもなかなかてこずっております。なんせ方言が飛び交うものでねー、三人称で書き始めたら、慣れてなくて視点のおき方がおかしくなっちゃう。

 

ここ最近、一人称でばっかりお話を書いていたんですね。久しぶりで三人称単一視点で書いてみたら、なんか原則からずれているという。1章めは色々と説明文が並ぶんですが、これの視点がぶれるぶれる。私という作者の視点で書かなければならないのに、1章めの主人公の視点にすり替わってしまうんですよね。まあある程度の憑依はありなのかなと思いはしますが、新人賞では視点のブレは減点対象になるそうで。あれこれ考えてたらなかなか筆が進まーん。パソコンで書いてますけど。ま、三人称で書いた経験もありますので、慣れたらどうにかなるのでしょうが。

 

本当は一人称でいろんな人の視点で書き進めていきたかったんですが、方言がきつくてね。色んな方言が出てくるんですが、中でも多くの登場人物が土佐弁をしゃべるんですよ。年寄りもいるので、かなり濃い目の土佐弁です。地の文が土佐弁ってめちゃめちゃ読みづらいでしょー。そうなると三人称かなーと思うんですが、どうかな。しっくりこないと思ったら、一人称で書き直すかも。

 

まあ、とにかく書いていかなきゃ判断がつきません。頑張ろう。というわけで、読んだ本の話。

 

坂東眞砂子大先生の、「狗神」を読みましたよー。……これ、多分めっちゃうちの村が舞台だと思われる。なんと申しますか、激熱で濃厚な世界観でございました……。

 

 

 

主人公は41歳の独身女性、美希ちゃん。……同世代やん。断崖絶壁に家が張り付いた集落で、兄一家と共に住み紙漉きをして生計を立てています。ご存知ですか土佐和紙。高知は紙が有名なんです。うちの実家も祖父母の代にはミツマタを育ててましたねー。和紙の原料です。今書いてる話にもその辺りを出すつもりです。あとお蚕さんとかね。養蚕。私が子供の頃にも祖父母宅にはお蚕さんたちがいたものでした。

 

桑の葉を食べる音が、「わしゃわしゃわしゃ……」と響いたものです。白くて重みがあって、しっとりと湿り気を持ったお蚕さん。大好きでねー。蚕小屋に忍び込んでは手にお蚕さんをのっけて陶酔の時間に浸っていたものです。

 

実際、モデルになったと思われるその斜面に家がへばりついた地区では、今でも紙漉きの伝統が残っています。そんな集落で暮らす美希ちゃんは、坊ノ宮家というおうちの血を引いています。大きな旧家であるその坊ノ宮家は、「狗神筋」の家系だというのですが……。

 

 

 

うん、もうね、どろっどろの怪奇小説です。ただの怪奇じゃなくて、結構エグイです。近親相姦、出生の秘密、子供のすり替え、そして「狗神筋」の坊ノ宮家と地域住民との対立。40過ぎの美希ちゃんは、地元の中学に赴任してきた16歳年下のイケメン先生と肉体関係に陥ってしまいます。けれど美希ちゃんは、かつて知らずに愛し合った兄との間の子を生み落としてしまった暗い過去を抱えています。

 

すごいのは、田舎だからその兄ってのも家の近所にフツーに住んでるのよね。田舎ってそうなんです。過去があろうが揉めようが殺し合いが起きようが、なぜかその土地を離れようって気を起こさないんですよね。私みたいに15で土地を出る人間もいますが、出ない人間は何があっても絶対に出ない。まるで土地に縛られるかのようにして、一生をそこで終えていきます。ご先祖様が離してくれないのでしょうか。

 

逆に早々に土地を捨てた私は、実家に帰ると必ず雨が降り夏には100%ムカデが出ます。そして、尾籠な話ですが必ず生理になる。……なんかあるんでしょうかねえ。土地を捨てた女として、土地神様に嫌われちゃったんでしょうか。父は「歓迎されてるんだよ」と言いますが、……そう? 歓迎でムカデ出されても……困るんですけど。

 

とにかく、田舎というところにはそういう「なんかよく分かんないけど、間違いなくいる何か」が否定されずに残っている場所なんです。「狗神筋」という血筋もそう。この令和の世にもこの血筋は間違いなく残っていることでしょう。こういう因習は人の口に立たない。立たないからこそ、廃れることなく連綿と続いていく。怖いですが、こういうのって都市伝説を超えて日本中に残っているんじゃないかと思う。逆に、廃れさせると何が起こるか分からん怖さもあるしねえ。

 

 

 

……なんか、全然この作品の話が進みませんね。とにかく美希ちゃんは、都会からやって来た晃さんというこの先生と恋仲になって、子を宿してしまいます。16歳差。でも晃さんは結婚しようと言ってくれました。晃さんが赴任してきてから、集落には寝苦しい夜が続いています。村民みんなが眠れないんだって。それを地域の古老は「狗神が目覚めたんじゃないか」なんて言う。信じていなかった美希ちゃんですが、彼女が誰かを羨むたび、その人がまるで狐憑きのように狂っていく……。

 

ラストには、狗神筋である坊ノ宮家の根絶やしを企んで、地域住民が山に火を放ちます。山中で先祖祭りをしていた坊ノ宮家は火に巻かれ、全滅してしまう。その中で、晃が美希の16歳の時に産んだ子供だと判明するんですね。……もう。なかなかにエグイ。兄妹の近親相姦の果てに出来た子と、母親が近親相姦。ここまでくるとさすがの近親相姦好きの私もげっそりよ。

 

狗神筋の血を濃くした晃先生の登場で、狗神様は活性化して悪さを始めたようです。しかし山の三方から火を放って、回るのが早すぎるっちゅーねん。これは生木を焼いたことのない人には分かんないんだろうなあ、山なんて、そんなに簡単に燃えませんから。根っこがついてる木なんか、水分の塊ですから燻るだけでそう簡単には燃えませんから。

 

まあ、物語を終わらせるためには、坊ノ宮家の皆さんに死んでもらわなくちゃいけなかったのかと思いますけど。これはここにも書いた、別の話でも思ったんだよなあ。「山はそう簡単には燃えない」。テレビで見る外国の山火事とかは干ばつの末ですからね。実際私は山火事をまじかで見たことがありますが(父の工場が燃えかけた)、舐めるようにゆっくりと火が進んでいくものです。最後の最後でこのオチはちょっとがっかりでした。晃先生が狗神筋の本丸だった、っていうのはなかなかのどんでん返しでしたが、どうにも、エグさばかりが残る読後感でした……。

 

 

 

あー、結構文字数書いてるな。このお話にはかなり思い入れを持って読んだので、なんだかだらだらと色々書いてしまいました。結局、「狗神とは何なのか」というところを、このお話の中では「鵺の一部」として扱っていました。伝承の中の一つですが、京都に出てた妖怪ですね。鵺。しっぽが蛇で頭がサルで胴体がトラで……でしたっけ。とにかくなんか、色んな動物の集合体の妖怪が鵺。安倍晴明だかが退治して、バラバラになった欠片が高知に流れ着いた、なんて伝承があります。それが狗神の起源だと。

 

まあ「諸説あり」ですね。私は「土中に埋めて首を切って……」の「人間が作り出した呪いの道具」の方が現実的かなと考えています。現実的って。めちゃめちゃ、非現実的な話をしているのは分かってるんですが。でもねえ、「晴らさでおけない」恨みを作り出したのも人間なんだよ。人を恨んだ時、どうにかして復讐を遂げたいと思うのが人間です。でも自分にはまったく現実的な力がない。どうにかして、どんな力を得てでも恨みを晴らしたい……そんな思いから狗神は生まれたのではないか。そう思うんだよねえ。まあ、そういう感じで今取り掛かってる話も書いていきたいと思います。

 

差別って、罪なものだね。今の日韓関係を考えても思います。宇宙人からしたら、地球なんて小さなひとつの惑星です。そこで似たような民族が争ってるなんて。蟻の喧嘩みたいなもんやな。赤い蟻と黒い蟻の喧嘩。同じ蟻なのに、どうして相いれることができないのか。

 

おお……書きすぎた。もう寝よう。明日からは貴志祐介さんを読みます。ミステリー×ホラーと言えばこの人かと。楽しみ。というわけで。

 

おやすみなさい!