さあープロットができましたよ。
こんばんは、渋谷です。
新しい話のプロットが組めましたよ。ホラー。かつミステリー。登場人物19人。さあ、500枚以内で仕上がるんでしょうか。
なんかね、書く前から怖くてビビりまくり。最後まで話の流れを作ってみて、すごいメンドーな話になりそうなのが自分で分かってるから。これがプロット通りに進んでくれるんなら、何の反故もない話として仕上がるはずなんです。だって、今のプロット時点ではちゃんとひとつのお話になってるから。でも、書いてたら絶対話が違う方向に進みだすんだ。「こっちに進まなきゃおかしい」みたいになって捩じりだす。そうなったら、本当にちゃんと本筋に戻すことができるんだろうか。
それを500枚以内に収めれるのか……どうか。まあ、書いてみなきゃ分からないので、とにかく書くのみです。自分に書く力があるのかどうかとかはもう考えません。あると思えばあるし、ないと思えばないです。人間の目に見えてる現実なんか、この世のほんのちょびっとだからね。私の能力を私が限定するのはとてもおこがましいことです。私にはできる、と思って書きたいと思います。
明日から始動。その前に、大正から昭和初期の民族史を知りたくて一冊資料として読みました。
宮本常一さんの「女の民俗誌」。これが……もうあかん。面白くて、私こういう世界がホント好きなんやなあ……。
今回私が書く話には、高知のアンタッチャブルな民俗話、「狗神」をモチーフにするつもりです。憑き物筋の謂わばオカルトものなんですが、これがちょっと触るのが難しいモチーフで。狗神憑き、っていうのは、ちょっと前にはいわゆる被差別民だったんですね。これは、狗神という憑き物を作り出す方式にもちょっと怖いものがあるからなのかなと思うんですが。
怖い話をしますよー。よろしければお聞きください。動物虐待の話になりますので、お嫌な方はどうぞ回れ右を。
狗神っていうのお狐様と違って、人間が作り出す憑き物なんです。関東にはオサキ狐とかオコジョなんて伝承もありますが、似たような「使役する呪いの道具」が狗神。狗神は人間が作り出す恨みの念です。まずワンちゃんを首だけ出して土に埋めちゃう。お腹空いたワンちゃんはわんわん吼えて助けを呼びます。でもほっとくんですね。で、死にかけたワンちゃんの顔の前にエサをおいて、目を輝かせた瞬間に首を切る。……するとワンちゃんの首だけが飛んでエサに飛びつく。その首を呪いの道具にするのがいわゆる狗神。……嫌な話ですね、ごめんなさい。でも、実際西日本には、こういう呪いを使わなければ日々の鬱屈を晴らすことができない人たちがいたんですね。これは間違いなく、人間が作った身分制度の副次的な犠牲です。
このワンちゃんの怨念を使って、霊的な力を得るのが狗神憑きというやつです。私の周りに実際あったものではありません。大人になってから、高知の風俗を調べる上で分かったことです。狗神憑きの家系は、狗神憑きの家系同士でしか婚姻することが難しかったんです。血に狗神がのってるので。まあ嫌な言葉ですが、「血が汚れる」というやつですね。
だからまあ、これをモチーフにするなら、生半可な気持ちじゃいかんぞと。ちゃんと書かなきゃいかんし、逆にファンタジーとしてある程度はぼかさんと本当にエグイ話になっちゃう。だからその辺りの風俗、民俗史もちゃんと調べないかんねということで、とりあえず有名な民俗学者のこの方の「女」に関してまとめた本を読んでみました。話の中で、「狗神」は女にしか継承されない設定なので、この本がぴったりかなって。
この他にも高知の民俗史や、祭り、狗神伝説をまとめた本なども入手しましたが、これらはもうこちらには明記しません。全体ではなく、狗神近辺しか使わないので。この本は全体が面白かったので記録として残しておきます。うん、私、民俗学って好きなんかも知れん……。
宮本常一さんという方は、柳田國男さんの次ぐらいに有名な民俗学者さんなんだそうです。私は知りませんでした。この方は足でフィールドワークをなさった方で、「宮本常一の靴に赤いインクをつければ、日本地図は真っ赤に染まっただろう」と言われるぐらいに日本中を旅し、地域地域で人々に話を聞いて研究をなさっていた方なんだそうです。
私が読んだこの本は、昭和12年から昭和46年までのレポートをまとめたものです。日本各地の様々な「女」の生きざま、生活、結婚農業奉公風俗老い、一生が克明に描かれていました。私の地元の高知の山奥だったり、今現在住んでいる松山市の明治、大正期の記録もあった。怖いのがさ、「愛媛から高知の県境にあった『奉公分の嫁』と言われる制度」。
嫁はとりあえず、奉公人として婚家に預けられるんだって。で、向こうの家が「使い物になんねえなあ(奉公人として)」と思ったら、給金を渡され返されちゃう。もちろん夜の営みは致した後よ。やられ損。返されなくても待ってるのは「奉公人扱い」の生活ですよ。こっええー。うちのご先祖様にもこうやって嫁いできた人がいたのかしら。ああ、私、現代に生まれて良かったわ。
怖い話はまだまだ続きます。愛媛の山中のある地域では、女の子が生まれたら「姫が生まれたー!」って大喜びしたんだって。12歳ぐらいになったら売り飛ばせるから。道後あたりですかねー。花街が昔からありましたから。売ること前提。おっそろしい話やわあ。
それだけでなく、希望ももちろんあります。男尊女卑は武家社会のもので、江戸から戦前の農村や漁村の女たちにはちゃんと自己主張できる土壌があったんだそうです。儒教文化、武家社会の常識、戦争による洗脳によって女は弱くなっちゃった。いや、弱いものだとされてしまった。しかし原始、女性は太陽だったんですよね。農村や漁村には長くその文化が残っていたのだそうです。「姉家督」と言って、長女が家を継ぐ文化とか。未婚の女たちがグループを作ってお伊勢参りに出かけてみたり。旅は女の修養だったって。いいね。今の女の子たちの海外旅行みたいなもんやわな。田舎へ行けば行くほど、女は強かったようです。
そういう、「華やかな歴史書に載っていない市井の人々の小さな暮らし」が詰まっている本です。もちろん日本全国の逸話が散りばめられています。面白いです。「ポツンと一軒家」が好きなひとは絶対好きだと思う。「その土地の歴史」とか、「連綿と続いて来た人々の歴史」とかが琴線に触れる人は、きっとこういう世界に惹かれるんじゃないかな。
私こういうのが好きなんだって、はっきりと自覚することができた読書時間でした。……尊い。やっぱ読書っていいねえ。こんな昔のことを、文字にして残してくれる人がいて、それを読んでロマンに浸れるこの時間。プライスレスやな。
私、ばーさんになったら郷土史家みたいになっとるかも知れません。いや、その前に作家にならなきゃ。と、いうわけで明日からホラーを書きます。私にはできーる。出来る出来る。やってやれないことはない。やらずにできるわけがない。
さて、次は件の坂東眞砂子大先生の「狗神」だ!……避けて通るわけにはいくまい……読みます。パクリにならぬよう片目だけ開けて読みます。
というわけで今日はもう寝ます。
おやすみなさい!