読書感想文142 増島拓哉 闇夜の底で踊れ | 恥辱とカタルシス

恥辱とカタルシス

作家志望、渋谷東子と申します。
よろしくお願いします。

昨日はこんなところへ。

 
こんにちは、渋谷です。
 
 
 
 
プールですね。
 
これはあんまり人がいない瞬間に撮ったんですが、もうさすがは夏休み。
 
芋洗いですわ。芋。流れるプールで子が水を飲んでしまい一瞬怖いことになったんですが、後から後から人が押し寄せて救助するのも一苦労。はしゃぎ盛りの小学生男子の波から我が子を救出しましたよー。いやー焦った焦った。
 
「邪魔だから脱ぐ」とラッシュガードを脱ぎ捨てた子はもう1日で真っ黒に焼けるしねー。私も日焼け対策はしまくりましたが足が焼けてしもた。まあ、子供孝行ですからしょーがないか。楽しそうでよかったよかった。 
 
さあ、平日です。小説書きたいけど……頭が追い付かない。子供がいる横でなかなか進まない。でも、どーにか頑張りたいと思います。で、読んだ本の話。
 
 
 
増島拓哉さんという方の、去年の小説すばる新人賞を読みましたよ。「闇夜の底で眠れ」、うん、これ、めっちゃ面白かった!
 
小説すばる新人賞、私も去年出したんですよね。……あれ?ちがった?すばるじゃなかったっけなあ……。なんせ、一次を通ってないのでもう記憶に残ってません。まあ、私がその時書いたものなんか、この「闇夜の底で眠れ」に比べたらはなくそみたいなもんです。よー応募しようって気になったなあ私、などと、珍しく我が身を振り返って恥ずかしくなってしまったりもします。だってさー、この増島拓哉さん、この賞を受賞した時19歳なんだぜ?19歳。しかも、この作品青春ラブコメディとかじゃないのよ。ハードボイルド。もうごりっごりのハードボイルド。
 
異世界に転生しないし、ハーレムで俺モテちゃってでもないし、素っ頓狂なかわいこちゃんに振り回されて僕ちゃんもう大変でもないし、ほんまのハードボイルド。19歳、大学生がこれを書くって、どういう人生を歩んできたんだ、と思ってネットで調べたらこれがまたフツーの子なのよー。「ちゃんとお勉強してきた普通の子」。「いいおうちに生まれて家族みんなに愛されてきた普通の子」。黒川博行さんとかのハードボイルド小説が好きなんだって。実際には明るい道しか歩いてなさそうなお坊ちゃんぽいのに(あくまで印象です)これを書いちゃうなんて、読書の力はすごい。そして、読書で得た世界観をここまでリアルに再現できる増島さんはほんとにすごいなあ……。
 
 
 
主人公は伊達くんという元極道のお兄ちゃんです。日雇いでたまーに仕事をしながらパチンコ屋に通うパチンカス。背中には龍の絵があって少年院から刑務所までしっかり経験を踏んでいるクズ。うん、います。パチンコ屋に平日の昼間っから詰めてるお兄ちゃんって、こういう人普通にいます。私も過去パチンコ屋に昼間っから入り浸っていたので、たまにこういう人にコーヒーをおごってもらったりしていました。話すといい人なんだよね。フツーに楽しいお兄ちゃんなんですが、深入りをしては絶対にいけません。
 
伊達くんも楽しく軽口を叩く、大阪弁のお兄ちゃんです。傍から見ると。けれど中身は未消化の過去を燻らせ、凶暴な魂を隠し持っています。そんな伊達くんが企てたのが「闇金狩り」。偽造免許証でヤクザがバックについていない闇金を回り、一気に金を引き出してとんずらしようという計画です。だって伊達くんはお金がいるのです。90分5万円の高級ソープ嬢、詩織ちゃんに恋をしてしまったのですから。
 
あほですね。あほ。でも、なんか伊達くん憎めないんだよなあ。結局計画は失敗、伊達くんの正体を掴んだ闇金に追い込みをかけられることになるんですが、そこを救って(?)くれたのが極道時代の兄貴分の山本さん。債権を買い取り、伊達くんに出し子や美人局みたいな非合法のバイトを紹介して、そこから返済をする形をとってくれたんですね。とりあえず首の皮一枚つながった伊達くん。けれどこれが、彼の運命を闇夜の底まで引きずり落とすきっかけになるんです……。
 
 
 
あー、面白かった!元々伊達くん、クズなんですけどね。でもなんか、人間的にはまっすぐで好感が持てるキャラなんですよ。まっすぐなクズって嫌いじゃありません。でもその伊達くんが、闇に翻弄され、まっすぐゆえに奈落の底まで落ちていく。いいですねー。人間って誰しも破滅願望みたいなのを抱えているものなんじゃないかと思うんですが、そういう欲をきっちりと満たしてくれる作品です。
 
希望に満ちた物語ももちろん面白いんですが、たまにはこういうめちゃくちゃなのが読みたくなる。書く方でもたまに書きたくなる。でもここまでの完成度で書く自信はないなー。増島さん、次作も楽しみだなあ。きっと今書いてる最中なんだろうな。読んでみたい。面白い作家さんだなと思います。
 
この小説すばる新人賞、このいっこ前の「天龍院亜希子の日記」も読みましたが、あれとはだいぶ毛色が違う作品の受賞になったんですね。あの「天龍院~」はちょっと私には遠いところにあったんですが、今回の受賞作は本当に良かった。さあ、私も負けずに頑張りましょう。
 
というわけで、頭を使いたいと思います。
 
ではでは、またー。