溶連菌、だってさ。
こんにちは、渋谷です。
今日から子供が学校に行き始めましたよー。
週末の高熱は溶連菌だったそうで。
溶連菌、てなんなんやと思いきや、子供が良くかかる病気なんですってね。喉にきて高熱が出て、ほっといたら発疹が出たりして猩紅熱に発展したりするんだって。猩紅熱。なつかしい。ベスがかかったやつですね。ご近所さんの赤ちゃんからもらってきて。
なんかたいそうな病気なのかと思いきや、薬を飲んだら2日ぐらいで学校行ってもいいんだって。翌日には平熱に戻ってたし。1週間抗生物質を続けないといけないらしいんですが、薬さえのんどきゃなんてことない病気のようです。
うちは初溶連菌だったので驚きましたが、そういやご近所の子供さん5人いるご家庭は、よく「家庭内で溶連菌が蔓延してるのよー」とか言ってたや。薬を途中で投げ出すとリウマチの原因になったりするらしいので、それだけは気をつけなくちゃというところですね。
お休みの間、子供は珍しく甘えっこになっていたのでみちみちごにごにとラブラブで過ごしました。もうお腹いっぱい。やっぱり一人は風通しがいいわあ。
と、いうわけで今日は120冊目の読書感想文。塩田武士さんの「氷の仮面」を読んだお話です。
主人公は翔太郎君という男の子。小学4年生です。とても可愛らしいお顔をした男の子で、性格は少し引っ込み思案。でも幼馴染の健二や耕三とわんぱくに遊ぶ一面も持っています。この翔太郎君、好きな漫画が「ときめきトゥナイト」。うーん……世代。私も小学生の時にドはまりしたよ。知ってます?ときめきトゥナイト。折しもついこないだ、子供が私の本棚にあるこの作品を見つけて読み始めてたんです。
大人になってから再読したくて、文庫版の物を買っておいてあったんですね。うちの子小学一年生ですが結構漢字が読めるので、ハマってどんどん読み進めていました。それを見て母は思った。ガラスの仮面も読ませて沼にはめてやろう。酷い母親ですね。
話が逸れたぞ。とにかく翔太郎君はそういうのが好きな子だったんです。ひらひらのスカート。リボンやフリル。ときめきトゥナイトは真壁君というちょっと不良っぽい男の子を、魔界からやって来た蘭世ちゃんという女の子が好きになって……というお話なんですが、翔太郎君のクラスには偶然にも真壁君という名前の男の子がいまして、翔太郎君は彼を好きになってしまいます。そう、翔太郎君は性同一性障害だったのです・・・・・・。
この翔太郎君という男の子が、いかにして性の不一致を乗り越えていくかという物語です。小学4年生だった翔太郎君の中学時代、高校時代、成人したのちを、丁寧に追った作品。真壁君との初恋、中学時代に経験したいじめ、高校時代に流れで付き合わざるを得なかった彼女、親バレからの家出、おかまバーで夢を追ったり、手術して女の身体になっていくことへの喜びと恐怖をかみしめたり。
もうね、一人の元男性だった女性の一代記として、すごい迫力なわけですよ。翔太郎君は蘭と名前を変え、おかまさんのショーパブでダンサーをしながら少しずつ女性の身体を手に入れていきます。睾丸を摘出する手術を受け、「これでもう自分は子孫を残せなくなったんだ」と愕然とするシーンがあったのですが、こんなの、私にはまったく思い至らなかった感情で驚きました。
女性になりたい方って「子供を産みたい、母になりたい」って考えるんだろうなって思ってたんですよ。でもそうじゃなくて、精子を作ることができなくなったことで、「人間として子孫を後世に残すことができなくなった」。これは……深い。男とか女とかいう問題の先に、そんな生物的な空虚感が待っているなんて。なんと切ない描写なのでしょう。
そして蘭ちゃんは恋も思い通りにはできないんですね。男の人を好きになることはあるんですが、保険証の名前から男だとバレてダメになっちゃったり。ここにも象徴的な場面があったんですが、ショーパブのママさん(元男性)が蘭ちゃんと恋バナの最中、「その相手の男の人は、蘭ちゃんの身体のこと知ってんの?」と口にする。
彼女たちははっきりと「自分は女」という認識なんですね。その上で、「身体に中途半端に男性的な部分が残っている」という認識。私いわゆるニューハーフの人って、そういうタイプの人、って認識だったんです。だっておかまさんって自分のこと「おかま」ってはっきり言うじゃないですか。でも違うんだ。あの人たちは「女」なんだ。身体にちょっと男っぽいところがあるだけ。本人は自分がどうしようもなく女だということを突き付けられて生きている。それって、とてつもなく辛いことじゃないですか。私も自分の股になんかついてる状態で生きていけって言われたら、もう宦官になっちゃいたいと思うでしょう。今更ながらに性同一性障害という状態で生まれてきた人たちのことを考え、胸に迫るものがありました。
蘭ちゃんはずっと心の中で真壁君を思い続けて生きてきました。真壁君は結婚して二児の父になるんですが、最後の最後、蘭ちゃんは真壁君に秘めていた思いを伝えるチャンスが与えられます。そこで明かされる真壁君の思い。ううう……あたしゃ泣いたよ。蘭ちゃん良かったね。家族と反目しても自分を貫いた蘭ちゃん。完璧な女性の身体を手に入れ(私は知らなかったんですが、手術でないところに女性器を作ることができるらしい)、戸籍上も女になることができました。……この後どうすんだ?まさか真壁君と不倫?いやいや……でもありそうなラストだったけど。
なんにせよ、すごい迫力で最初っから最後までを熱っぽく走り抜けていくお話です。面白かった!なのにひとつだけ気になったのはタイトル。「氷の仮面」。これ、このお話の熱が全然伝わってこない!なんか「氷の微笑」みたいでぱっと手に取りたいと思えない!
あたたかい人の思いによって溶かされる、氷の仮面をかぶって生きてきた蘭ちゃん、ということを表現したようですが。「翔太郎と蘭」で良かったんじゃないかなあ。最後の一文だった、「桜は、始まりの花」でもいい。とにかく「氷の仮面」じゃ、この作品のいいところが何ら伝わってこない気がする。
好きだからこそ勝手にずーずーしく案まで練ってしまいましたが。私、この作品好きだわー。塩田武士さん、すごい人かも。他のも読もう。ああ、楽しかった!
というわけで、次は吉本ばななさん。ではまたっ!