読書感想文110 塩田武士 盤上のアルファ | 恥辱とカタルシス

恥辱とカタルシス

作家志望、渋谷東子と申します。
よろしくお願いします。

あああー!負けたー!

 

こんばんは、渋谷です。

 

 

 

また小説現代長編新人賞受賞作を読みましたよ。あ、その前に今日市の健康診断に行ってきました。40になると急に市が健康を気にしてくれだすんですね。なんか手紙が来てたのでありがたく行ってきました。

 

血液検査と尿検査とメタボ診断。あとオプションで子宮頸がんとマンモグラフィをしてきたよ。子宮頸がん、5年ぐらい前にしたときはちょー痛かったのに今回は痛くなかった。なんかやり方が変わったんですかね。昔は「ピンセットで組織をもぎ取りますよ!」みたいな痛みがあったんですが、今回は全然痛くなかった。でも、マンモが痛かったわー。3年前にやった時は全然痛くなかったのに。あれ、技師さんの腕なんですかね。

 

胸をギューッと押しつぶすんですよ。なんかのしイカの気持ちがわかる感じになりますよ。「私の胸に何してくれんねや」などとちょっとしたイラつきも生まれますがとんでもございません。検診して下さっているんですから。粛々と受けてまいりました。とりあえず身長体重は良好、尿検査もパスでした。

 

何日かしたらそのほかの結果が送られてくるらしい。何ともなければいいんですが。子宮に関しては一回手術してるので自信がない。なんか痛いし。何ともなければいいな。

 

そんなわけで健康を気にした一日でした。ちゃんとした社会人みたいな振りをしてきたよ。でも家に帰るといつも通りだ!酒を飲んで本を読みました。

 

塩田武士さんの「盤上のアルファ」、もう面白かった!惨敗!こんな人と同じ年に出したら、どんなに面白い作品書いても受賞できるはずないわあ……。

 

 

 

 

塩田武士さん、私と同い年なんですね。1979年生まれ。専業作家でらっしゃるので、今年に入って急に健康診断の勧めが公共から届いたことであろう。40ですから。不惑。歯槽膿漏の検診もタダで受けられるらしい。

 

兵庫県出身の方です。関西学院大学卒。神戸新聞社に入社。2010年に小説現代長編新人賞を受賞されました。新聞記者さんだったんですね。この「盤上のアルファ」は塩田さんを主人公に置いたかのような、ドキュメンタリーなのではないかと考えてしまうような作品です。これがねー、もう、面白かった!

 

半分まで読んで既視感を感じて思い出したよ。このお話、NHKで連続ドラマになってるんですよね。結構最近だったと思います。私の好きな玉木宏が主演で、雄輔なんかが出てた将棋ドラマ。

 

夫が見てたのを横から見てたんだよなあ。おそらく最後までは見てなかったと思うんですが。読んでみればドラマになるのも納得の面白さでした。

 

 

 

すぐ前に読んだ「踊り子と将棋し」と背景は似てるんですね。新聞記者と棋士。「踊り子と将棋指し」の作者、坂上琴さんも元新聞記者でらっしゃいました。他にも小説現代長編新人賞には結構傾向があって、かつての受賞作には時代小説が多い。朝井まかてさんもこの賞からデビューされて今や審査員をされてるんです。まあ時代小説も書かないし新聞記者でもない私は目を瞑っときましょか。そういう流れもある、ということで。

 

主人公は神戸で新聞記者をしている秋葉という男性。33歳です。事件記者として活躍していた彼は性格が悪すぎて左遷されてしまいます。性格が悪い、てか、周りと迎合できない人間性なんですね。まあ分かるわ。にこにこ出来ない人間、いますよね。別にそれが悪いわけでもありません。

 

左遷された彼は文化部付になってしまいます。そこで取材対象になったのが囲碁将棋の世界。それとは別軸で語られる真田という男の人生。彼は秋葉と同じ33歳。恵まれない幼少期を過ごし、将棋だけを心の糧に成功を夢見ますが、破れ、フリーターとして喫茶店でバイトをしています。坊主頭で常にタンクトップ。秋葉が恋心を寄せる静という女性が経営する小料理屋で二人は出会い、やがて心を通わせ、プロを目指す真田を秋葉は応援することになります。

 

空虚だった事件記者時代の自分を投影しているんですね。秋葉も真田もそろって社会不適合者です。孤独に生きてきた二人が、共に目指すものを見つける。熱くなる物語です。まるで少年漫画のような盛り上がりを孕んで、真田の昇格試験の模様が綴られていくんですが、そこにミステリー要素やラブストーリーや家族のドラマまで織り交ぜられている。最後の数ページ前で「えっ!?」ってなったからね。これは、受賞作にして映像化というのも納得の仕上がりでしたわあ……。

 

 

 

ドラマでは雄輔が演じていた真田、私の頭の中では千鳥の大悟で再生されていました。雄輔じゃないって。絶対塩田さん大悟であて書きしてるって。

 

細かいあらすじってものはないような作品なんです。真田という男が棋士を目指して狭き門をくぐるべく戦う。その姿を自分に重ね合わせて応援する秋葉という男がいる。ただそれだけ。それだけなのに、すごい熱をもって迫ってくるような作品です。こんなんが大賞獲ったら、そこそこ面白いものが書けるみたいな人は尻尾巻くしかないわな。だって面白いもん。塩田さん、自分で「これは絶対に面白い!」って確信をもって世に出してるって感じがするもん。

 

その後も多数の著作を発表されているようです。他のも読んでみよう。きっともっと面白い。重箱の隅をつつくなら、このお話、読後はすごく爽快だったんですが、中盤までが結構間延びしてたのよね。目的が分からない、秋葉と真田の燻った話ばっかりだからあんまり盛り上がらない。

 

三人称の文章にも、ブレが見受けられたように思いました。あといちゃもんなんだけど、将棋が分からない人にはこの作品のクライマックスの盛り上がりは体感できないんじゃないかと思う。私は子供の頃に近所のおっさんに習った程度ですが、一応駒の動かし方とか中飛車とか居飛車が分かるんですね。分からない人には説明がないのでこの熱さが伝わらないかも。まあ、分かる人が読んでください、というスタンスなのかも知れません。うん、ただのいちゃもんです。

 

いい作品を読ませて頂いたな、と思います。ありがとう塩田さん。他のも読むからね!身体大事にして検診にもちゃんと行ってよねー!

 

 

 

みんな本気の作品を応募してくるんですね。頑張らなくちゃ。次も小説現代長編新人賞のを読みます。まっけないぞー!

 

じゃあ寝ようっと。睡眠大事。

 

では、おやすみなさいー!