うーん、やっぱり審査員てのはすごいのねー。
こんにちは、渋谷です。
村山由佳さんの直木賞受賞作、「星々の舟」を読みましたよ!これは!すっごい面白かった!面白かった、て言うかなんかすごく感動した!決して泣かせる話っていうんじゃなかったんですが。
話の持つ懐の深さと言うか、村山さんが小説というものや人生というものに対して持ってる大きな愛と言うか、なんかよく分からんけどでかーいお話だったんです。この作品が直木賞をとるのは納得!こないだの「ほにゃららする準備がほにゃららら」みたいのは一体何だったんでしょう。
村山由佳さんはすばる文学賞受賞作を読んだ時には、「……なんか華がない話だなー。なんでこんなので受賞できるの?変なのー」とか思ってたんですが、審査員の方ってやっぱりすごいのね。作品自体はもちろんですが、その作家のポテンシャルみたいなものを見てるんだろうなあ。まさかあの受賞作を書いた人が10年後、こんな素晴らしい作家さんになっていようとは。
それが分かる人が審査員をなさっているんでしょうね。シロートには分かんないもんなんだわ。この「星々の船」とっても素敵なお話でした。
この「星々の舟」は短編連作で、
雪虫
子供の神様
ひとりしずか
青葉闇
雲の澪
名の木散る
で構成されています。とは言え、すべてつながったお話。それぞれのお話の主人公は違うんですが、とある家族の歴史みたいなものを、それぞれ別の人間の視点で描いているんですね。主人公は話の順番に、
三男 暁
次女 美希
長女 沙恵
次男 貢
孫(貢の娘) 聡美
父 重之
が主人公となっています。
最終話を締めてるこのお父さんは戦争に行ってる世代の頑固親父で、長男は早くに亡くなっているんですが、次男と三男が先妻の子、次女は後添い(元家政婦さん)の産んだ子ということになっています。元家政婦さんだったお母さんは志津子さんというんですが、その時長女の沙恵を連れてこのおうちに入った設定です。要するに沙恵は連れ子、貢や暁とは血が繋がっていなかったはずなんですね。
志津子さんが急死したところから話は始まります。父親である重之と対立して家を出た暁が、久方ぶりに実家に帰ってくる。暁は離婚したばっかりです。長く実家と連絡を取っていなかった暁。兄弟たちは知っています。暁が家を出た原因が、血のつながりがないと聞かされていたからこそ愛してしまった沙恵が、実は重之が当時お手伝いに入っていた志津子に手を付けて産ませた子供だったということを……。
これがもう、切ないっ!この事実がすべてのお話の中に貫かれていて、それと共に各登場人物たちの目から見た家族、それぞれの人生が描かれています。みんな色々悩んでんだよねえ。でもそれぞれの主人公の波乱は、次の話の主人公が紐解いてくれるのでこれもすっきりポイントでした。一つの短編が、「ええー……これこの後どうなんねん」みたいにして終わるんですが、次の話の人が「誰それはついこないだああいうことがあったらしいけど、今は元気。こうこうこうなったらしい」ってちゃんと説明してくれるのね。もやもやせずに済む。
そして最後にお出ましになるのが、すべての家族に強烈な影響を与えてきた父、重之。ラスボスの登場です。ラスボスはそれぞれの家族にあれこれわだかまられているんですが、本人はそんなものどこ吹く風。だって頑固親父だもん。でも、重之がこうまで頑固に凝り固まってしまった理由が最終話で語られて、読者は一気に納得、そして重之という人間に引きこ込まれてしまう。
なんと、なんという熱量なのでしょう。そして、最後の最後にちゃんと暁と沙恵の対話のシーンを据えてくれる村上さん。なんだもうこの構成!これ書いてる今思い出してまた鳥肌が立っちゃったわよ!面白かった。ほんと、素晴らしい作品を読んだな、と思います。
あーいーね。こんなん自分でも書けるようになりたいね。
こうやっていいなと思う作品に会うとほんとに幸せだなと思うね。自分がこんなの生み出せたら最高だろうね。とりあえずエキスを吸収。
さあ週末ですが、今日はとりあえず白玉団子を作りますよ。夫がぜんざいに入れて昼ごはんにするんだって。ていうか昼ご飯ぜんざい?私、あんこダメな人間やからちょっとビミョーやわ。
私はミックスフルーツ缶にのっけるんだー。というわけで子供とクッキングしてきます。
ではまた!