はい、さくっと読了!
こんばんは、渋谷です。
今日は家中に掃除機かけたり、キャンプ中の汚れ物洗濯したりアイロンがけしたりして、昼から読書タイムにしました。平成最後の一日、通常運転が一番いいかなって。
多分私、明日世界が滅亡しますよと言われても掃除して洗濯してご飯作ってっていう一日を過ごすと思う。平常心が一番だ。なんか世の中年越しそば食べてる人もいるんだってね。これは面白い。確かに大きな意味で年越しだもんね。うん、うちも晩御飯天ぷらそばにでもしようかな?
そんなわけで道尾秀介さんの「片眼の猿」を読みましたよ。軽い文体で書かれているのであっという間に読めちゃいましたが、とてもしっかりしていて中身のある、面白い探偵ものでした。
主人公三梨は盗聴専門の探偵。どうやら人とは違う形状の耳をもっているらしく、となりのビルの話し声まで聞こえちゃうんだって。だからでっかい耳してるのかな?と思いますよね。それを隠そうとしているのか、おっきなイヤホンをつけてる。そんな三梨は探偵事務所ファントムの代表です。
彼がとある楽器会社に雇われ、ライバル会社に調査に入るところから話が始まります。楽器のデザインがパクられてみるみたいだから証拠を掴んでくれ、と依頼される三梨。得意の盗聴で証拠を得ようとしますが、聞いてしまったのはライバル会社のオフィスで起きた殺人事件の一部始終でした。
時を同じくして三梨はサングラスをかけた女探偵と出会います。「同じ人種」であることを察知し、女探偵冬絵をファントムに誘う三梨。冬絵と三梨は早々に男と女の関係になってしまいますが、この冬絵がなんか怪しい。
四菱エージェンシーという悪徳探偵事務所に所属していたんですが、ここは依頼人に浮気調査などの結果を伝えず、調査対象を脅しちゃったりする会社なんですね。「この証拠、いくらで買います?」みたいな。そこから来た冬絵は、もしかしたら三梨が巻き込まれた殺人事件の犯人なのかも知れないのです……!
うん、面白かったねえ。
この作品、事件自体はすごく読者に優しい伏線を張ってくれてるんですね。だから気安く読み進めることができる。でもびっくりは事件が解決してから。
三梨や冬絵、そして探偵事務所が入るビルの多彩な住人たちの秘密が一気に明らかになるのですが、これが爽快だった。ずっと「すごく大きな耳」なのかと思わされていた三梨は凍傷で耳自体を失っていて、冬絵は一重の小さな目を気にしていただけ。
盗聴も超人間的な能力ではなく、盗聴器を仕掛けてイヤホンで聞いていただけでした。ほかの仲間たちも、少しずつ不思議な特徴を持っているんですが、みんな鼻がなかったり、目が見えなかったり、腕がなかったりする。これは叙述トリック的な形で最後まで隠されていたんです。
「片眼の猿」とは、周りがみんな片眼の集団の中に産まれた両眼の猿が、自分についた両眼を恥じ、自ら片眼を潰してしまったという逸話に基づいています。両眼の猿は眼と共に自尊心も潰してしまった。耳がなかったり目が小さかったり腕がなくても、自尊心をなくす必要はない。いい話。そしていい仲間。ミステリーとしてもだけど、人間ドラマとしても素敵なお話でした。
しかし、この作品は小説だから成り立つのね。映像化は不可能。映像にしちゃったらなんも謎がなくなっちゃうもん。
続編もない造りだよね。この流れが「カラスの親指」に繋がったのかななんて思います。面白かった。私、こういうお話好きです。
さて、次も道尾秀介さん読もうかなあ。それとも短編集かな。……短編集がいいかな。明日も一日家でのんびりする予定だから、またすぐ更新するかも知れません。
あー、平成終わる。次は令和第一回ですね。昭和生まれは過去の産物やな。まあ強く生きていこう。とりあえず天ぷらそば。晩ごはんつくろっ。
ではではまたっ!