うーん、ちょっと謎でした。
こんにちは、渋谷です。
角田光代さんの「対岸の彼女」を読みましたよ。直木賞受賞作。NHKでドラマ化もされたそうで、結構期待を持って読み始めたのですが。
結論から言うとイマイチ面白みがわからなかった。いわゆる「so what?」ていうね。だから何?という感想しかなかった。私の中にはこのお話に共感できる要素がなかったみたいです。そういうのはきっと誰にでもあるものだろうし、まあそれがいわゆる苦手な分野に繋がるのかもしれませんが。
うん、苦手って言うか、もう「だから?」だな。「それが?」とも言えるな。テーマが女同士の友情、とか女の集団の中で委縮する自分を乗り越える、みたいなやつだから私にとってはもう外界の世界の話なんですよ。こういうことに悩む人も、世の中にはおるんですねえ……。
主人公の小夜子ちゃんは専業主婦ですが、子供連れてどこの公園に行っても馴染むことができません。子供であるあかりちゃんは2歳。他のお友達と上手に遊べない我が子にやきもきしつつ、ママグループにもうまく入れず、でもだからって家に引きこもってるのも子育てを放棄してるような気がして居心地が悪いんだそうです。「お友達と遊ばせないと情緒が育たないんじゃないかしら」
行き詰った小夜子ちゃんはあかりちゃんを保育園に預けて働くことを決意します。そこで採用してくれたのが同い年の女社長、葵ちゃんが営む旅行代理店。そこのハウスクリーニング部門で働くうち、小夜子ちゃんと葵ちゃんはどんどん打ち解けていきます。一種図々しいほどにさばさばした女社長、葵ちゃん。小夜子ちゃんは葵ちゃんの下で誇りをもって働くことで、自分という人間を取り戻すことができたような気がしていたのです。ですが。
葵ちゃんはその昔いじめられっ子だった過去を持ち、「女の集団」というやつに翻弄された過去を持っていたんですね。ナナコちゃんというカースト欄外の子と学校外でだけこっそり付き合うという、小狡い方法で友情を温めていました。ナナコちゃんは変わり者なのでいつ校内でハブられるかわかりませんから。仲間だと思われるとまずいぞ、ということですね。だったら友達として付き合っちゃいかん。例え本人も傷ついて、よりどころを欲していたとしても。
家庭環境にもいろいろ問題があったナナコちゃんは、葵ちゃんに家出をけしかけます。二人でペンションの夏バイトに行って、そのまま行方をくらませちゃった。バイト代でラブホに泊まり歩いて、お金が尽きてくると疲れちゃって手をつないだままマンションの屋上から飛び降りるふたり。打撲程度で済みましたがそれは新聞沙汰となり、大人になった葵ちゃんにも醜聞としてつきまとうことになるのです。「同性愛の女子高生、倒錯愛の末の心中!」みたいにして。
さて奔放かつだらしない葵ちゃんの本性が垣間見てくるにつれ、小夜子ちゃんは「私が信じてたものは何だったのかしら」みたいな気分になってきます。「責任を伴った仕事をして、旦那に飼殺される生活を脱したはずだったのに。結局私何を成し遂げたのかしら」みたいな。そんなときに葵ちゃんの過去を同僚に聞かされる。するとその事件を当時ニュースで見て知っていた小夜子ちゃんは、自身の過去と重ねるのです。ハブられた自分と仲良くしてくれた予備校の友達。でも別々の大学に行ったら全然連絡をくれなくなった。電話したら「まさか、まだ大学で友達出来てないの?」って。要は間に合わせの友達だったんでしょう。それに深くショックを受けていた自分。そして葵ちゃんに、ともに飛び降り自殺をしたナナコちゃんともう付き合いがないと聞いて「やっぱり人間ってそういうもんなんだわー!」
……と言ったかどうかは知りませんが、まあ自分の心の傷みたいなのをいつまでたっても引っ張ってるんですよ。それで仕事も辞めちゃう。なんのこっちゃ。けどとある筋から葵ちゃんがひとりで細々と会社を続けてると聞いて、「もう一度雇ってくれ」と言いに行く小夜子ちゃん。葵ちゃんとナナコちゃんが事件以来会っていないのは、お互いの変化を目の当たりにすることを恐れたからではないか、と結論付けたようです。女同士にだって心からの友情は成立する、人を信用することはできる、って感じ?……なんなんだろう。共感できんなあ。
何を期待してるんだろう、と私は思いました。このお話の登場人物たち、みんな他人になんか期待してるんですよね。でもその期待が勝手に裏切られて拗ねてるだけの話みたいに感じました。誰かと一緒じゃなきゃなんにも出来んの?ひとりでするわけにはいかないの?ひとりでできないから誰かに頼りたいにしても、精神的におんぶにだっこにならんといかんの?相手に何を求めてるの?そういう過剰な期待が重くて嫌われるんじゃない?他人は他人、自分は自分でいいんじゃないの?なんか、面倒だなあ。
そんなわけで、私にはなんかあんまり響かなかった「対岸の彼女」。まさに「対岸のお話」だったな。「対岸の彼女」っていうから主人公の女性ふたりは全然別のキャラなのかと思ったら根っこは一緒という。女性の人生ドラマ、とみれば面白い部分もありましたが、イマイチ理解できなかった。鈍いのかな。まあ人付き合いを極力避けて生きてきた人間なので、理解の範疇を越えているのかも。
そんなわけで角田光代さんでした。元号は令和ですってね。れいわ。馴染むのにちょっと時間がかかりそうだわ。
ではでは、またっ!