猫が死にそうです……。
こんばんは、渋谷です。
去年の年末に死にかけた18歳の黒猫が、何とか持ち直し年を越したんですが、もういい加減ダメそうです。今日病院に連れてったんだけどね。
爪切ってもらっただけで「もうできることありません」って。
年末に連れて行った時も、注射は打ってもらったんだけど「もう寿命ですね」的なことは言われてたんです。そこから丸2か月以上持ったんだから、まあすごい頑張ったと言えば頑張った。
もうトイレをまたぐことができないので、段ボールで作った薄い箱に砂を敷いてます。ご飯はちゃおちゅーる一択。それでもまだ多少は食べれるのでね、欲しがるだけあげるんですが、でも長年猫飼いを続けてきた身からすると、持ってあと1週間って感じかなあ。
この子はうちで産まれて18年間暮らしてきた子なので、もう色々整理はついてるんですね。だからあとは安らかに逝ってもらうだけなんですが。
やっぱり命が消えていくのって悲しいですねえ。イエモンの「人生の終わり」を聴いている。あの子はここに生まれていい人生だったかな?幸せに死んでいけるかな?
命はいずれ消えるものなので。必要以上の感傷を抱く気はないのですが、とにかくいい最期を迎えられるようお世話をしてあげたいと思います。あんまり湿っぽくならないようにね。
さてそんなわけで今日の読書は村田沙耶香さんの「コンビニ人間」です。芥川賞受賞作ですね。
この村田沙耶香さんは私と同い年なんですね。1979年生まれ。芥川賞受賞のときに、「いまだにコンビニでバイトしてます」っていうのが話題になった人ですね。だから私、「コンビニ人間」執筆時には村田さんはまだ新人さんだと思っていたんですよ。今回調べてみて、大間違い。
2003年に群像新人文学賞の優秀賞を受賞してデビューされたんだそうです。そして野間文芸新人賞、三島由紀夫賞受賞されてたんだって。
それでも芥川賞受賞してもコンビニでバイトしていた村田さん。生活のためではなく、「執筆のリズムを作るため」なんだって。
深夜2時から執筆をはじめ、朝の8時から昼の1時まではコンビニでバイトしてたんだって。執筆のリズムを作り、そして人間観察をするために。
面白い人ですねー。そして「コンビニ人間」も本当に面白い作品でした。私の大好きな、「痛い子」が主人公のやつ。でもこの作品の主人公である恵子ちゃんは、私は全然知らないタイプの「痛い子」でした。おもろっ。村田さんの頭の中って、本当にどうなってるんだろう。
主人公の恵子ちゃんは36歳、大卒、処女でコンビニバイト歴18年です。人生の半分コンビニバイトをしています。
まあ変わった子で。子供のころ可愛い小鳥が死んじゃってみんな泣いてるのに、「お父さん焼き鳥好きだよね。これ食べよう」とかいいだしたり、ケンカしてるクラスの男児を止めようとして、二人の頭をスコップで強打しちゃったり。
いわゆるサイコパスってやつなんでしょうかね。私の周りにはこういう子っていなかったので、未知の人種です。もっと「悪意を持ってる悪人」ならいっぱいいましたが、「悪意のない悪人」(悪人って表現が正しいのかわかりませんが)って見たことない。恵子ちゃんはコンビニ店員としてコンビニの歯車の一部になって生きていくことで、やっとこの世に馴染んで生きていくことができるようになります。「コンビニ店員」というラベリングを経て、やっと自分に人格ができたと考えているんですね。
私も接客業を色々とやってきたので、その歯車になっていきいき振舞うことがいかに楽であるか、ということはよくわかります。妙に知恵をつけたり疑問を抱いたりせずに、マニュアル通りに振舞う。それで店はうまく回る。そういう風にマニュアルって出来てますからね。
恵子ちゃんはマニュアルに従い同僚から「人間っぽさ」を盗んで、なんとなく周りから浮かないように生きています。それで同じコンビニに18年。独身処女一人暮らし。周りからの「結婚しないの?」「なんでバイトなの?」と言われ続けて、自分はやっぱり不良品なのかと悩む。
怖いですよねー、社会的な「常識」を超えた時に周囲から投げかけられる異物を見るような目。大多数の人がしてるからって、それをしないと異端扱い。マイノリティに対する理解、なんて結局はうわべだけなのかもしれません。
その視線から逃れ社会に溶け込もうと、恵子ちゃんはこれっぽっちも好きじゃない自分によく似た、でももっとひどいこじらせ男を家に置いてしまいます。一番駄目なやつです。何かから逃げたくて選択したものって、結局自分をもっと何かから逃げたい状態に追いやるものです。恵子ちゃんも微妙におかしいとは思ってるんだ。その男はわかりやすい社会的落伍者。いい女はみんな狩猟能力の高い男が射止めてしまう。僕にはそんな能力ないのにずるいじゃん!なんだよもうわーんわーん!
その男は恵子ちゃんに乗っかってヒモになる気満々なんですね。目を覚ませ恵子ちゃん!でも説教されることの意味が理解できない恵子ちゃん!そうだね、誰も恵子ちゃんの人生をコントロールすることなんかできない!なんて、なんてロックな生き方なんだ恵子ちゃん!
ラストはぞっとするような清々しさが待っています。いいのか……?まあいいのか。恵子ちゃんはこれを望んでいるのか。ならまあいいか。人生なんて子供産みさえしなきゃ結局は自分のもんだ。誰に汚されるものでもない。やりたいようにやればよいではないか。
そんな恵子ちゃんの生き方、きっと村田さん自身の生き方を投影しているのでしょうね。面白いなあ。THE「変わり者」。世の中にはいろんな人がいる。もっとこの人の本が読みたい。
この村田さんが「コンビニ人間」の中で書かれている文体、私が今書いている話で「こう書きたい」と思っている文体そのものなんですよね。私も今一人称で冷静な女の子を書いているので、こういうシンプルで波のない文体で書きたい。かっこいいなと思いました。
村田沙耶香さん、これだけでなく色々読んでみたいと思った作家さんでした。
あ、もう12時過ぎちゃった。
ではまたっ!