読書感想文36 林真理子 みんなの秘密 | 恥辱とカタルシス

恥辱とカタルシス

作家志望、渋谷東子と申します。
よろしくお願いします。

あー楽しかった!

 

こんばんは、渋谷です。

 

 

 

はい、林真理子さんの「みんなの秘密」を読みましたよー。吉川英治文学賞受賞作。

 

真理子節炸裂で面白かった!あー私にとってのエンタメって、こういうのなんだなー。

 

 

 

以前読んだ真理子さんの「秘密」という短編集の中に収められていたお話も2篇入っていました。1話目の脇役が2話目の主役になり、2話目の脇役が3話目の主役になり……というリレー方式の短編集。ラインナップは

 

爪を塗る女

悔いる男

花を枯らす

母の曲

赫い雨

従姉殺し

夜歩く女

祈り

小指

夢の女

帰宅

ふたりの秘密

 

となっています。

 

この中の「夢の女」と「ふたりの秘密」が別の短編集で読んだ作品ですね。もう、本当に面白いったら。

 

ひとつの話の主役が次の話では脇役に回るので、1話目の主役が見ているものが2話目には全然違う視点で語られたりするんですよね。この話では「正しい母」であったはずの主人公が、次の話で「高慢ちきで子供を抑圧する母」という正体を暴かれたりする。そして真理子さんの真骨頂である「嫌な女」、「ずるい男」のぞくぞくするようなせめぎ合い!

 

あああー面白いっ!人間が多面体であることをまざまざと見せてくれる短編集です。それで大体が、主人公が40代の男女なんですよね。もしくはその子供だったり。この年代を切り取ったのがまた面白いんだ。

 

この短編集は1作目の初出が1996年なので、もう20年以上前ですね。ちょうど真理子さんが40代に差し掛かった頃です。今の私ぐらいの頃。昔だから子供はもう高校生だったり大学生だったりする。もう子供の手が離れて、女なら主婦としても落ち着いてくるし男は仕事人として脂がのってくる。裕福な家庭ばかりがとりあげられているので、子供たちも美しく恵まれている子ばかりです。豊かで幸せなはずの男と女。でも、一枚めくるとみんなに「秘密」があるんだよなあ。

 

共通して横たわるテーマが、「親の死」「中年の鬱」「セックス」「虚栄心」。赤裸々真理子さんは臆することなくみんなの秘密を暴いていきます。

 

美人の娘を持った中年男は、母親の死に打ちのめされてなぜか性欲復活。娼婦を買った挙句に娘の尻をジロジロ見つめてしまいには死に至る病気が発覚してしまう。

 

その娘は今で言うパパ活に精を出して、父親と同じぐらいの年齢の男に逆に惚れちゃって熱を上げてしまう。でもポイッとされちゃうけどね。

 

そのポイッとした男は昔ふしだらな従姉に欲情の挙句、夜中の神社で首を絞めて死姦しちゃおうとするような男だったんですね。首は絞めたけど怖くなって途中で逃げた。でもその従姉は翌日道端で凍死しているのが発見されちゃう。ああ、恐ろしい青春の思い出。

 

で次にその妻は……。

 

……というぐあいに話は連鎖していきます。どれもこれも「あーあーもうなにやりよん!」とつっこみたくなるような愚かしい行いばかりです。そう、社会的に考えると恐ろしい、でもみんなほんとは心の奥に持っている本当の欲望。

 

それこそが「秘密」なんですよね。「みんなの秘密」。だってほら、思い出したら人に言えないことってたんまりありますよね?過去のこともそうだけど、現在進行形でとてもじゃないけど人様に明かせないことって、誰にでも絶対ある。

 

 

 

最近の世の中ってなんかもう妙にクリーンじゃないですか。浮気は害悪でちょっとした言葉のはしっこがセクハラとかパワハラとか。そりゃ誰かを傷つけるようなことはしちゃいけません。「自分がされたら嫌なことはしない」。それは鉄則ですよね。

 

でもどんだけ清廉潔白に生きていこうとしてるんだ今の人たち。私は息苦しくって仕方ないです。立場上「いい母」を演じることを強要される場面が多くてすごいめんどい。まあ演じませんけど。ゴイゴイのロン毛パーマとキラキラの爪で参観日行きますけど。もちろん子供の幸せは一番に考えますが、だからって急に清楚系母になんてなれるわけない。

 

欲望があって当然なんだ。だって、人間だもの。でもおおっぴらにせずこっそりそれを叶える真理子さんの登場人物たち。秘密って言葉が淫靡で良いですね。いーなー秘密。それは余裕と知性がある獣たちの共有する罪、って感じですかね。やっぱり真理子さん好きだなあ。

 

そうそう、連鎖する短編は最後、「ふたりの秘密」というお話で締められます。前のお話の主人公が脇役になって、最終話の主人公は前のお話の主人公の夫です。

 

夫は妻の秘密を自分の秘密にします。それで「ふたりの秘密」。もう秘密は連鎖することがなくなります。このラストも、かっこいいし素敵だなあ。うーん、やっぱり好き。私、林真理子さんほんとに好きだなって思います。

 

けど読書メーターとか見るとあんまり評価高くないのよね。なんで?私は好き。まあそれが人の好みってやつなのかな。

 

いろんな人がいるから世の中は面白い。私は真理子さんがいる時代に生まれて良かった。もっといっぱい真理子さんの本読もっと。

 

では寝ます!

 

おやすみなさいー!