あいたたたたたた……。
こんばんは、渋谷です。
綿矢りささんの「蹴りたい背中」を読みました。又吉先生の「火花」に続く芥川賞受賞作です。
私最近、P+DMAGAZINEというサイトの中の、小説の書き方というコラムを繰り返し読んでるんですね。芥川賞作家の三田誠広さんという、武蔵野大学で小説の書き方の講義もしている方が連載されているコラムなんです。この方自身が芥川賞作家なので、コラムの中には芥川賞受賞作が多数とりあげられます。
その作品の簡単なあらすじと鑑賞ポイント、そこから学ぶべき技術や概念などを解説してくださっています。とても面白いコラムです。おすすめです。だもんだから、何となく芥川賞受賞作が読みたくなるのね。で、こないだ読んだ「勝手にふるえてろ」も面白かった綿矢りささん。
「蹴りたい背中」。痛かったあ。どう痛いって、私の悲しい悲しい高校時代とドンピシャ重なるんですよ。もう途中から半泣きで読んでしまいました。綿矢りささん、ものすごい可愛らしいお顔をされた女性なんですが、こんなん書いちゃうところを見ると、エキセントリックな女子高生だったんでしょうねえ……。
主人公は高校一年生の女の子、ハツです。彼女は高校デビューに失敗しちゃったタイプの人です。というか、中学時代は無理して周囲と合わせてたんですね。高校を一緒に受験した絹代がべったりしてくれなくて、リア充グループ(とは言え3番手ぐらいの寄せ集めグループ)に馴染もうとするもんだからすねちゃいます。なによもう!あんなとこに馴染もうと卑屈になるとかちょーダサい!私は一人でも生きていけるんだからね!
クラスにはにな川(おそらく漢字表記では蜷川)というハツ以上のポツン男がいます。にな川は「オリチャン」というモデルさんの偏執的な大ファンです。それ以外は空虚な真っ黒い目をして時間をやり過ごす男子高校生です。この表現、私もつたないながら使ったことがあるんですよね。何にもない人間の目って真っ黒いんです。あああ、そうそう、絶望超えると人間の目って黒くなるよね!わかるわかる!そんな具合にいきなり盛り上がってしまう私。
そのあともハツのやることなすこと分かりすぎて痛いんですよ。ひとりでいることを誇ろうとするけれどし切れない。つるむ人間を見下そうとするんだけど見下し切れない、妙な憧れと軽蔑。もうここに来たくない。来たくないけど行かなきゃならない。ポツンを恥じる自分の心こそを恥じたいのにうまくいかない。募るのはただ、焦燥感。
ああ、なんなんだこの既視感!それでとがっていくハツの心情も手に取るようによくわかります。辛いね。辛いけれどちゃんと毎日学校に向かうハツ。陸上部で「走る」という行為に自分のくすぶった情熱をぶつけようとする。けれど何もかもうまくいかない。
そんな時ににな川が学校を4日も休みます。ハブられっ子のにな川は「登校拒否か?」なんて揶揄される。
大衆の鈍った悪意は純粋な弱者を嬲るんですね。大人になってもこういう光景って途切れることなく再生されます。最近で言えば、ベッキー結婚に対するディスりとかね。
「お前は当事者じゃないだろう」みたいな人が一生懸命ベッキーをいじめる。おかしい世の中だ。でも、高校のあの狭い教室の中には確かにその縮図があった。そしてそれは大人になっても当然のように繰り返される。私の心に巣くう傷が、びっくりするぐらい綺麗にほじりだされました。
私が行った高校のクラスは全県一区でね。県内の各市町村から一人ずつ行くようなとこだったんです。県庁所在地はいっぱい来てたんですが、他は田舎からぱらぱらと集まったようなクラスだった。3年間クラス替えなし。集まった田舎者が牽制しあった3年間。私はその空気が嫌で嫌で、まったくクラスに馴染まないまま3年間を終えました。
おんなじ感覚の子とつるんだりはしましたが。やっぱり心底は分かり合えない。仲良くなったふりの「偽友達」とカラオケに行って夜遊びをした。むなしい時間です。そこにもし異性が混ざってたら、私も思ったかもしれないな。
似てるのに違うものを見ている卑屈な背中。もしその背中に恋心をほんのりとでも感じていたら。
うん。蹴るな。思いっきし蹴るな。それぐらい切羽詰まらせるものが「学校」というあの閉塞空間にはある。分かる気がする。だからいろいろえぐられました。綿矢りささん、面白い作家さんですね。とても印象に残る、繊細なお話でした。
ああ、こんな面白い話が書きたいな。あの言葉では表しようのない絶望の3年間は、作家を志してみると無駄ではなかったのかなと思います。痛々しい思い出も、まあ振り返ればいい勉強だったのかもしれません。
さーそろそろ桜庭和樹さんよもっかな。林真理子さんもいい。あっ、そうそう、菅浩江さんは図書館で予約したよ!
姉さんに対する伝言です笑 借りれたら楽しみに読みます。さあ、そろそろ寝よう。
ではまたっ!