水田の水取り入れ口に蜘蛛が巣を張った。
蜘蛛は、めずらしくはないが、久しぶりにみる。
獲物は、まだいない。
私の子供の頃は、5cmくらいのは、ざらにいた。
よく捕まえて、糸を引き出しては遊んだ。
小さい時は、昆虫は最高の獲物であった。
朝4時に起きて、近くの栗やクヌギの窪みを探った。
昭和26年ごろで、昆虫網なんてなかった。すべて素手である。
目当ては、かぶと虫とクワガタで、メスはなぜか対象外であった。
日頃から、集まっていそうな所を掴んでいるので、夜明けの薄明かりのなかでも迷うことはない。
樹の洞に樹液が溜まっているところが、彼らの食卓である。
まず、かぶと虫を探す。
こいつは、角を摘まめば、比較的容易にとれる。
中には、樹の皮を掴んで離さないやつもいるが、問題ない。
かぶと虫のメスは、角がないから身体の両側を親指と小指で挟むようにして取る。
彼らの足には、ちいさいトゲトゲがあって、強く手で握ったりするとかなり痛い。
次は、クワガタを捕獲する。
これも、雄のクワガタがよい。メスは、かぶと虫どうよう一杯いるが手をつけない。
その餌場に後居るものは、かなぶん、はち、かみきり虫、蝶もいたように思う。
容れ物は、アルミの弁当箱。
小学校は、給食があったから、親父かだれかの不用品だったのだろう。
小一時間もすると、夜が明けてその昆虫たちも急にいなくなる。
弁当箱にいっぱい、かぶと虫とクワガタ虫を入れて家に戻る。
ようやく起き出した母親に、どこへ行ってたか聞かれた。
私は、“うん、ちょっと”といってごましていた。
何しろ、そのときは私の宝物がある所だったからだ。
あとで、ずいぶん家のなかで噂になった。
でも、早起きの子供を叱る親はいない。
夏休みは、ほぼ毎日そうして過ごしたものだ。
獲ったかぶと虫は、どうしたか覚えていない。
たぶん、母が逃がしてやっていたのだ。
その母もこの八月、13回忌である。



8月3日に投稿した時より、随分大人っぽくなった。
もう立派な成虫だ。背中の羽根が茶褐色に変化している。
前、見た時、全身緑色だった。
小さくて、通り掛かると、急いで稲の葉の裏に隠れた。
それが、なんだか微笑ましかった。
今日のは、たくましく葉の裏へ移動しない。
葉の裏へ隠れようか、飛び立とうか迷っている。
微動だにせず、確かに私を見ている。