耳を澄ましてごらん おばぁちゃんの声

私は泣いた 怖いんですもの

優しいおばぁちゃんのしわから零れ落ちるものが

 

外で遊びなさい お母さんの声

私は祈った 雨降りな日々で

いつか世界がみずたまりになればと

 

誰か友達はいないのか お父さんの声

私は笑った いないんですもの

涙を拭いてくれる友達なんて

 

傷つかないように走る姿

靴なんて捨ててしまえばいいのに

みんなそのままじゃない

無理して着飾るお人形じゃないのよ

 

私は誰より知っている この世界を

 

そうガラス瓶の中で呟いたのは いつの日か

 

 

(2002年ごろ作成)

朝にパンをかじることのように

何もかもがごく当然の流れのこと

 

世紀末を騒ぐ人々が新世紀の夜明けに

自信満々の顔をするのもごく当然の流れのこと

 

バターを塗りすぎたトーストによだれがたれて

不安と歓喜を感じている人々が

汚れた頬に泥をぬったくり

かすれた声で人生最大の告白をした

愛想で生きるのもごく当然の流れのこと

 

噂で殺されたことになっている奴が老後を満喫すれば

暗い世の中みな笑えてくる

死ぬより怖い世界で生きているのもごく当然の流れのこと

 

安産祈願のお守り片手に神様にお祈りしてみよう

「どうか僕のためにお金を生んでください」

もちろんベッドには靴下さげて

それもごく当然の流れのこと

 

蛙の死体を見たらもうその道は通れないのも

許せない奴に消しゴムを貸してやるのも

知らない人たちを毎日侮辱し続けているのも

諦めきれぬごく当然の流れのこと

 

丸い球体の真ん中に誰だっているんだよ

エゴなぞ知らぬごく当然の流れのこと

 

 

(2002年ごろ作成)

目の前に落ちてきた

名もなきその塊を

僕は何と思ったのだろう

それは言葉かもしれない

それは夢かもしれない

それは空かもしれない

はたまた時間かもしれず

しかし

拾いそびれた僕には

ただ思い描くことしかできなかった

僕はそれを何と思ったのだろう

 

人はそれを過去と呼ぶのだろうか

 

口から湧き出る残像は

形を変えて消えていく

 

人はそれを過去と呼ぶのだろうか

 

 

(2002年ごろ作成)