どこかで ないて いる
こどもが ひとり ふたり
はなを あかく した
こどもが すねて いらないと
なげ すてた あいすくりいむ
いびつな しろの ほうぶつせん
みらいの はしで すこしずつ
とけて ゆく つちのうえ
みどりの すなくずが
ひざで ねをはり
ゆびが はいりそうな
くもの すきまへ
こどもが ひとり
はしり だしていく
ふたり めの
こどもは めをつぶり
くびれた しゃつのしわが
つきに たどりつく
(2002年ごろ作成)
どこかで ないて いる
こどもが ひとり ふたり
はなを あかく した
こどもが すねて いらないと
なげ すてた あいすくりいむ
いびつな しろの ほうぶつせん
みらいの はしで すこしずつ
とけて ゆく つちのうえ
みどりの すなくずが
ひざで ねをはり
ゆびが はいりそうな
くもの すきまへ
こどもが ひとり
はしり だしていく
ふたり めの
こどもは めをつぶり
くびれた しゃつのしわが
つきに たどりつく
(2002年ごろ作成)
届かない声を
ビンに詰めるひとがいます
届かない指先を
そっと暖めるひとがいます
「きっとお前たちは
きっとあんたらは
知ったかばかりで
本当の声も
本当の指先も
何も知らないんだ」
そういってうつむく木々
そういってうつむく雲々
と、老人は思い浮かべます
世界に散らばる寂しさを想像し
争いの音から耳を塞ぎ
赤い指先から逃れようとする
老人
あなたこそ
ビンに詰めるひとでいられたのに
そっと暖めるひとでいられたのに
悲鳴はあちこちから
ただ静かに聞こえてくるのです
ただただ静かに
その怖さに耐えられず
老人は閉じこもってしまいました
木々を彩る花や葉にも気づかずに
雲々を彩る遠く離れた太陽にも気づかずに
老人は死ぬ間際になって
一言つぶやきました
「私はもうちょっと泣けばよかった」
その乾いた眼には
真っ白な画用紙が一枚
焼きついています
世界では
泣きつかれてしまったひとびとが
悲しみにつかれてしまったひとびとが
絶えることなくお互いの血を浴びています
一本の木は問いかけます
一掴みの雲は問いかけます
「あなたは何のために泣きたかったのですか」
「あなたは泣きつかれたあとに何をしますか」
けれど
世界はとても静かなものです
近づいてみれば
こんなにも悲鳴や歓声、怒号に満ちているのに
この青き星は決して叫びだしません
静かな星の涙を
知っているのは誰か
死んでしまった老人
あなたは
この星の涙に気づけたか
あなたは
あなた自身の悲しみに気づけたか
地球
ただ静かに
ただ静かに
回り続ける星
その想いは深い
すべての生き物の足音に耳を澄まし
すべての生き物の下に平然といる
老人よ
あなたもまた、この星のもとで生まれ
そして死んでいった
それだけは知っておくれ
(2010年ごろ作成)
ふと気がつけば
一日は過ぎ
ふと気がつけば
変わる世界
そんなこのホシのどこかで
小さな埃が
ひらりひらりと
舞い
くるりくるりと
まわり
落ちていく
そんな彼は言う
「わたしはあのホシになりたいんだ
ほら
あんなに小さなホシなのに
きらきらと
奇麗だろう
だから空を泳いでみたけれど
わたしはあのホシにはなれないようだ
でも
見て御覧
こんな大きな空よりも
ちっぽけなこの水たまり
ばかみたいな無限の世界が
広がっているだろう
このなかなら
わたしもホシに
なれるだろうか」
音もなく、ついと夕闇は
野良猫のあくびをそっと隠しては去っていく
小さなホシボシは
けたけたと音を立てて笑った
「ほら
あいつはまた
俺たちの真似を
しようとする
気づけばいいのに
無理なんだから
俺たちのすがたを知ることのない
あいつには無理なんだから
馬鹿なやつだ」
野良猫は
そんな彼らを見て
また、あくびをする
名もなき一日が
過ぎていく
そんなものさ
(2010年ごろ作成)