ある野良の犬が

電灯を見上げて言いました

「あなたのように

 わたしは輝くことはできない

 あなたのように

 わたしは立ちどまり続けてはいられない

 でも

 あなたがわたしにやさしくしてくれるから

 こんなわたしも夜の寂しさに気付く

 もう慣れてしまったはずなんだ

 気がつけば仲間はとんと見かけない

 いるのは首輪のついた連中だけだ」

ある野良の猫が

電灯を見上げて言いました

「あんたなんかいなくたって

 あたしは生きていける

 あんたなんかいなくたって

 あたしは寂しくなんかない

 でも

 あんたがわたしを見ていたいなら

 たまにはこうやって

 顔を出してあげてもいいわ

 そうやって生きてきたんだもの

 そういう生き方しか知らないんだもの」

ある白髪の男が

電灯を見上げて言いました

「お前はいつだって平等で

 俺が若かったころもそうだった

 お前はいつだって平等で

 俺がこんな年になってもそうなんだ
 
 でも

 俺はお前に気付くのに何年も何十年も

 かかってしまったわけだから

 なんだかそれだけで涙がでてくる

 誰かがお前に傷をつけ、小便たらし

 それでもお前は平等なんだ」

 

彼らが歌う、小さきうたに

電灯は今日も明りをてらす

 

 

(2010年付近に作ったもの)