今回は、第14回東京フィルメックスで上映される、中村登監督『古都』を紹介したいと思います!
1963年公開の、川端康成が原作の作品です。
捨て子だったものの、京都の呉服問屋に拾われ一人娘として大事に育てられてきた千重子。彼女は、祇園祭の夜に自分そっくりの村娘・苗子と偶然出会い、自分たちが生き別れになっていた双子の姉妹だと判明します。
この双子の姉妹とそれを取り巻く人たちの人間模様が、京都の四季を通してつづられます。
この『古都』ですが、なんと!第36回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされているのです!
世界的にも評価の高い作品なんですね。
実際に観て、その評価に納得しました。
もう、ひたすら美しいです・・・!
何がって、もうすべてが。笑
まず主演の岩下志麻さんですが、なんとこの双子の姉妹役を一人二役で演じていらっしゃるんですね。
その演じ分け、半端ないです。顔は同じなのに、同じ人とは思えません。
もちろん化粧などの違いもあるのですが、それ以前に雰囲気、しゃべり方、立ち振る舞いなど、まったくの別人に見えるのです。
一人は老舗の呉服問屋で育ったお嬢様、そしてもう一人は北山杉の加工の仕事をする貧しい村娘。育ちの違いから生まれる差を完璧に演じ分けています。
双子である以上根本はそっくりでありながら対照的である二人。この難しい役どころを見事に演じきっていました。
千重子と苗子、それぞれの葛藤と複雑な心境の表現力も素晴らしいです!
そして、とにかく美しい。笑
圧倒的な存在感です。
それから、やはり目を奪われるのは京都の情景ですね。
原作は川端康成の小説ですが、川端康成は日本の美を繊細で美しい筆致で表現することを得意としていました。
私は原作も既読なのですが、『古都』には川端康成の日本の美への愛が詰まっています。
この映画では、そんな川端康成の日本の美、京都の美の描写がそのまま映像で表現されています。
京都の四季とともに物語が進んでいくのですが、昔ながらの街並みや北山杉の情景ももちろんのこと、それぞれの季節の移ろいゆく景色や伝統行事を観て楽しむことができます。
平安神宮の桜に始まり、祇園祭や時代祭などの行事を経て、最後は淡雪の舞う冬に終わる、京都ならではの美しさは必見です!
役者や景色など視覚的な美にばかり目が行きそうですが、物語自体も、切ない美しさに彩られています。
対照的な育ち方をした双子の再開とすれ違い、そして双子を取り巻く複雑な恋模様。
さまざまな思いが絡まりあいながらも、静かに、淡々と、物語は進みます。
詳しいストーリーに言及することはあえて避けますが、繊細で美しく、切ないお話です。
役者、情景、物語、すべてが美しい作品でした。 この美しさはぜひスクリーンで観ていただきたいです!
『古都』は、第14回東京フィルメックスにて、
◎2013年11月23日(土) 10:20~ @ヒューマントラストシネマ有楽町
◎2013年12月 3日(火) 21:00~(レイトショー) @ヒューマントラストシネマ有楽町
での上映となります。 お見逃しなく!
詳しくは東京フィルメックスのHP
(http://filmex.net/2013/)
をご覧ください!
では、次回の更新もお楽しみに!