アウトレンジ戦法が作り出した阿波の鉄砲 | todou455のブログ 火縄銃ときどき山登り

todou455のブログ 火縄銃ときどき山登り

火縄銃を切り口として
日本人を考えるブログ
です。

        

 阿波徳島藩の鉄砲は,銃身が異様に太く重い。しかも,頑丈な巻張作りのものが多い。士筒と呼ばれる口径19ミリの10匁筒にいたっては、重さが7キロもある。同じサイズの仙台鉄砲は5キロ以下なのだ。下の写真は阿波の一匁五分(11mm)の鉄砲と10匁筒の比較写真だが,阿波の10匁筒は,まるで大筒のように見える。

 

下の鉄砲が10匁筒 全長105.3センチ,銃身長73.4センチ

銘 阿州 山田民右衛門 惣巻張

 

 徳島藩は,火薬を通常量の何倍も装填できるよう銃身の厚さを太くしたのだろう。火薬量を増加させれば,射程距離も長くなるし,破壊力も大きなる。10匁筒は約37.5グラムの弾丸を射出できる鉄砲である。人を撃ち倒すためなら,火薬の量を増加する必要はない。

 徳島藩は、その領国に淡路島を有し,大規模な水軍を擁していた。徳島藩は,この太くて重い10匁筒を船に積み込み大砲のように運用し,敵船を破壊しようと考えたと私は推測している。敵の射程外から一方的に攻撃を加えるために10匁筒の銃身を太く厚く張り立てさせたのに違いない。つまりアウトレンジ戦法の要請により作りだされたのが,阿波の鉄砲なのだ。

 現在,シカゴレジメンタルスという業者さんが,写真の鉄砲と全く同じものを88万円で売りに出している。阿波の10匁筒は数が極端に少ないから,早々に売れるに違いない。| シカゴレジメンタルス | 商品詳細「銃」 | (regimentals.jp)