極東のどん詰まりの日本は,国土が狭く資源が乏しいという大きなハンディキャップを抱えてきた。たとえば,大砲を作りたくとも鉄鉱石の産出量はわずかしかない。鋼鉄を作るに欠かせないコークスも,日本にはなかった。砂鉄を用いた鍛鉄でも大砲は作れたが,莫大な製作費が必要だった。
これには,戦後武将も江戸時代の砲術家も大分頭を悩ませたようだ。真田幸村は,大坂の陣ではニカワで貼り固めた「練革」と呼ばれる牛革を、銃身に貼りつけた張り抜き筒という大砲を作ったという。
張り抜き筒
銅パイプに練革を何十層にも巻き付けて製作された。
写真引用 澤田平著 武道藝術傳圖會注解P14
また江戸時代,南部藩を脱藩した相馬大作は,津軽候の襲撃のために和紙1000枚を貼り合わせて紙筒という大砲作った。この紙筒の砲弾は木製だったらしい。これの実物は現存するようだが,私はまだ実際に見たことがない。
相馬大作の製作した紙筒
写真引用 岩手をネチネチと有名にする会 on Twitter:
17世紀のヨーロッパでも,鉄パイプを革で巻いたレーザキヤノンという軽量な大砲が使用され事実がある。ただ西洋の場合は,重い青銅砲のかわりに,最前線で戦う兵士に軽いレーザキヤノを携帯させたという点で,日本とは大きく異なる。資源に乏しい国土の中で,本来は鉄で作られるべき砲身を張り子で作ったのとは,その考え方がまるで違うのである。
レザーキャノン
物の溢れる現代日本では,そういうことはあり得ないという人がいるかもしれない。しかし,海外からの輸入が止まれば,またぞろ,同じような事が起きないと断言できるのだろうか。現在,尖閣をはじめとする周辺海域における緊張は,一時の油断も許されない状況だ。今の生活を守るためには,防衛費を惜しむべきではないし,防衛論議から逃げてはいられない。あなたがライオンを食べないから,ライオンもあなたを食べないと誰が保証してくれるのだろうか。