桶狭間への出陣前に,信長は本当に湯漬けを食べたのか? | todou455のブログ 火縄銃ときどき山登り

todou455のブログ 火縄銃ときどき山登り

火縄銃を切り口として
日本人を考えるブログ
です。

        

桶狭間への出陣前に,信長は本当に湯漬けを食べたのか?

玄米おにぎり作りに失敗したので,今日は機嫌がとても悪い。

先々月辺りから,塩おにぎりに凝っている。なぜかと言えば,鉄砲のことを調べているうちに,戦国時代の武者たちは何を食べていたのだろうという疑問が湧き上がってきたからだ。鉄砲のことを考えるためには,当時の人たちの生活ぶりも考えてみる必要があろう。合戦の時に何を食べたかと考えた時,最初に思い当たったのはおにぎりだった。そういえば亡くなった田中の角さんも「選挙は戦だ!戦の時は昔から握り飯と決まっている」と語っていたではないか。

おにぎりと短筒と刀装銃

しかし,調べてみると,当時の記録でおにぎりを食べたと明確に書いてある資料は少ないのだ。当時の第一級資料とされる太田和泉守が書いた『信長公記』には全く出てこない。ネットで調べてみると,合戦の時にはおにぎりを食べていたとか持って行ったと,誰しもが書いている。しかし,明確な根拠として挙げていたのは,鎌倉時代の記録だけだった。

おにぎりとは関係ないが,織田信長は「桶狭間の戦い」に出陣する直前、湯漬けを食べて出陣したと書いている人が多いことにもびっくりした。湯漬けを食べて出陣したということは一つの説であり,明確な根拠はない。太田和泉守の『信長公記』はもちろんのこと,娯楽本の小瀬甫庵の『信長記』にさえそんなことは書かれていないのである。

                            ご飯にお湯をかけただけの 湯漬け

 

世の中には,ひどい人がいるもので,犬HKの大河ドラマの時代考証を手掛けた大学教授などは,『信長公記によれば『敦盛』舞った後,「立ったままで湯漬けを取ると甲の緒をしめて出陣した」とある』」と堂々とその著作に書いてあったのには驚いた。『信長公記』には,そんなことは,全く書かかれていない。書かれてないことまで書いてあると言い切る大学教授も大したものである。

信長公記の原文は次の通りだ。

『具足よこせと、仰せられ、御物具めされ、たちながら御食を参り、御甲をめし侯て、御出陣なさる』としか書かれていないのである。御食を,神様への供物を召し上がったとか,貴人が食事したとかとは解釈できるが,どう逆立ちしても「湯漬けを食べた」とは解釈できるはずがない。

世の中の人は根拠を調べなかったり,勝手に根拠を作ったりする人が多いのであろう。そこへ行くと私は,当時の人たちが食べていたと思われる玄米でおにぎりを作ろうとした。さすがである。何事も実験である。早速,玄米を買ってきて,炊飯器で炊いたのだが,どうもうまく炊けなかった。だから今日はとても機嫌が悪い。