家の犬はホルモン大好き,ニンニクも平気
ホルモンは大好物である。そして家の犬もホルモンが大好きである。
ホルモンの煮込みの名店を知っている。中途半端な時間に,その店を訪ねると売り切れていることが多い。そんな時,店主は,とても意地悪そうな笑みを浮かべ「ホルモン売り切れいただいちゃて~ねぇー」などと,とても意地悪そうな笑みを浮かべたりするのである。
悔しいので,ホルモンを買ってきて,自分で作ったことがあった。よく水洗いしたホルモンを鍋で湯で始めたら,とてつもない匂いが台所に充満してしまった。これではならじと,ニンニクを大量投入したら,もっと凄いことになった。困ったことになった。家の同居人たちは,異常なまでのきれい好きだ。こんなことがバレたら,磔の刑くらいではすまぬだろう。
調理中,私の足元にくっついていた愛犬のラブが,物欲しそうな顔をして私を見あげていから,犬なら食うか?と思いニ三切れ与えてみた。そうしたら,もっと欲しそうな眼をして,私を見上げてくる。家の犬は,飼い主に似て頭がよいから,アイコンタクトができるし人間の言葉が話せるのだ。面白いから,同居人の丼にホルモンを山盛りにして与えたら,ものの10秒で食べてしまった。その喰いっぷりが面白かったし,ホルモンを全部食べてくれたら証拠隠滅になると閃いたから,鍋ごと全部与えてみた。そうしたらあっという間に完食し,なべ底まで舐めていた。どうも犬の味覚は人間と違うらしい。
鍋をきれいに洗い,家中にシュッシュを大量散布して完全犯罪を目論んだが,ホルモンとニンニクの臭いは強烈だった。帰ってきた同居人に気づかれてしまい,全てを白状させられることになった。これを聞いた同居人たちは激怒した。犬にニンニクは,毒なのだそうだ。中毒死する犬もいるという。その晩,犬は同居人の布団で寝たらしいが,翌朝早く私の布団に潜り込んできて,散歩を要求した。とても元気だ。どうも家の犬は,ニンニクが大好物のようだ。
それから二日間,誰も私には口をきいてくれなかったが,犬は時折,ニンニク風味のステーキの切れ端を貰えるようになった。人生はとても不合理である。