第5章 『家族の在り方』 13 | オリジナル小説 『嵐の中の小鳥たち』

オリジナル小説 『嵐の中の小鳥たち』

誰もが考えたことのある永遠のテーマに、私なりの考えを盛り込んで物語にしていきます!!

この物語を読んで、皆さんも色々考えてくださると光栄です\(^-^)/




13.



先程まで外にいたからだろうか、旅館に入るとその明るさで目がぼんやりとした。
もう12時を過ぎていて、フロントには誰もいなかった。
旅館の中は静寂に包まれていて、物音ひとつ聞こえてこなかった。
他のお客も寝静まっているだろうと、俺と美波は忍び足で部屋に向かった。
俺と英雄の部屋は二人部屋で狭いため、語りは女子の部屋ですることになっていた。
その女子の部屋の扉を開けると、「遅いよー」とみんな待ちくたびれた様子だった。
「ごめんごめん、ちょっと展望台に行っててさ」
俺はそう言ってみんなに詫びを入れた。
「展望台行くならみんな誘ってよ」
理沙と梓が不満そうな顔をしていたが、展望台から旅館に戻ってくる間に近くのコンビニで買ったお酒とおつまみやらを「これ買ってきたから許して」と差し出すと、二人はとても喜んでいた。
ただそこで、真佑が一人不満そうな顔をしていたことが気にかかったがその理由はわからなかった。

「もう早く始めようぜ」
英雄は本当に待ちくたびれていたようで、一人缶ビールのプルタブを開けていた。
俺はみんなに適当に酎ハイを配り、とりあえず乾杯することにした。
「じゃあ、敦一言どうぞ」
真佑が俺にそう乾杯の音頭を取るように振ってきた。
「え、俺?」
「うん」
「うーん……じゃあ、みんな今回はそれぞれ忙しい中集まってくれてありがとう。これからも俺たちはこうやって集まって、時には家族みたいにお互い支えあっていこう。これからも宜しくな。乾杯!!」
「乾杯!!」
みんなそう言って缶を合わせ、それぞれに飲んだ。
美波の方を見てみると目こそ赤く充血し腫れていたが、先程まで泣いていたとは思えないほど笑顔で理沙と話していた。
その様子を見て、俺は安心した。


「なんかさ」
美波はみんなに聞こえるように大きな声を出してそう言った。
みんなそれぞれに話していたが、話すのをやめて美波の方を見た。
「こうやってみんなで集まれるの、温かくていいね」
「なんだよ美波、いきなりどうした」
英雄はそう言いつつも、俺と何かあったのかもしれないと勘付いたのか、こちらをちらっと見た。
きっと俺と美波が二人でいる間に何かあったのだろうとみんなが勘付くのも時間の問題だろうと思い、わざとごまかすように「そうだよ。いきなりどうしたんだよ」と声をかけた。
美波は俺の意図がわかったのか、俺のその言葉を聞いてくすっと一つ笑った。
「何もないよ。ただ、私こうやって友達と旅行行くの初めてでさ。いいなって思ったんだ」
「私も初めてだよ。いいよね」と梓。
「私も、合宿とかなら散々したけどこういう旅行は初めてだなあ」と真佑。
俺や真佑、理沙は部活の合宿などを何回もこなしてきたため友達と泊りがけで何処かへ行くことは慣れていたが、それでもこうしてレジャー目的で旅行に行くことは俺たちも初めてだった。
「確かに、なんかこのメンバーはただの友達じゃないって気がする」
英雄までもそうしんみりと呟くように言った。
「俺たちは、きっと2番目の家族みたいなもんなんだよ」
俺は、さっき美波に言ったことをもう一度ここで言うことにした。
「家族ってさ、ただ血が繋がっていることだけが家族じゃないと思うんだ。たとえ血が繋がっていなくても、お互いを思いやる気持ちがあって、本当に辛いとき苦しい時に傍にいて支えあえる。それが家族なんじゃないかって思うんだよね」
「確かに、それよくわかる」
真佑はそう言いだし、畳を見つめながら話を続けた。
「私一人暮らしだから、家にいて結構寂しいこととかあってさ。大会とかあれば親も来るけど、基本的にそれ以外は会わないわけだし、本当に一人なんだなって思ってた。でも私が事故にあったと時、一人じゃないんだって思った。みんな翌日にはすぐお見舞い来てくれたし、敦は何回も、英雄も手術を怖がる私にお説教してくれたしね」
「お、おう。当たり前じゃねえか」
英雄は偉そうにしていながらも、頬を赤らめ明らかに照れていて威厳なんてものはなかった。
その様子を見て俺たちは笑った。
「それに、私がまた頑張れるように、みんなそれぞれ頑張ってくれた。私、それが本当に嬉しかった。その温かさが、ただの友達ではなくて家族みたいだなって、内心ずっと思ってたんだ」
事故にあって指を切断し、今ではバレーを続けているがそれでも本来なら選手としては致命傷である怪我を負ったのだから、思い出すことはとても辛いだろう。
しかしその話をする真佑の表情には雲一つない青空のように澄んでいて、辛そうにする様子は見られなかった。
その様子を見た俺は、もう大丈夫なんだなと安心することができた。
「私、みんなが居てくれるから色々頑張れそうだよ」
美波はそう笑って言い、「なんかあったら、助けてね」と一言添えた。
「当たり前だー!!俺はみんなのためならどこまでも助けにいくぜー!!」
英雄は立ち上がってそう叫んだ。
英雄の足元には空になった缶ビールが4本倒れていて、英雄の顔は赤くなっている。

――いつの間にそんな飲んだんだよ……

そう思ったが、この雰囲気もまた好きだった。
真面目な話もできるがこうして馬鹿なことをするやつがいてもみんなそれを笑って温かく見守っている。
そんな環境を作ってくれるこのメンバーが、俺は大好きだった。

――この関係がいつまでも続けばいい
  血は繋がっていなくたって俺たちは家族だ